血液透析事故のABCって知ってますか?

公開日: : 血液透析

透析事故のABCって聞いたことありますか?
これらは、事故の種類を英語の頭文字をとったものでABCDEFまであります。

A:air contamination(空気誤入)
B:bleeding(出血)
C:coagulation(血液凝固)
D:dialysate abnormality(透析液異常)
E:equipment breakdown(装置の故障)
F:fluid remova failure(除水関連事故)

これらが、透析において頻度が多く危険な事故です。

透析事故のABCの解説

私自身も透析業務でABCDEFで、Aの空気誤入以外の事故はすべて経験しています。それも、1度でなく数回です。項目によっては二桁の件数を超えるものもあります。それぞれの事故項目についての詳細とその対策について簡単に紹介します。

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A:空気誤入

透析医療事故防止のための標準操作マニュアルにより、エアー返血の禁止と生理食塩水での返血が推奨されたことにより空気誤入事故は、現在ではほとんど聞かなくなりました。私自身も透析室で業務していて、エアー混入の事故は、経験したり周りで起こったことはありません。

ただ、空気を入れそうになって冷や汗をかいたことはあります。それは、透析中に静脈側のチャンバーが詰まって、透析中に静脈側だけ回路を交換しなければならなかったときです。静脈側の回路を交換する前に、静脈回路内の血液を患者に返血する必要があります。

静脈側の血液だけを患者に返すので、落差により患者に返しました。そのとき、思っていたよりも血液が患者に変えるスピードが速く、血液がすべて帰った後エアーも入りそうになりました。このときは、介助してくれていた看護師が回路のチューブを指でつまんで止めてくれたことにより助かりました。

このような、特殊な事をする場合は、気泡検知器のスイッチをきったりして、誤った操作をしてしまった場合は事故を起こす可能性があります。このような場合は、時間がかかりますが返血して、回路を再度プライミングして透析を再開するのが安全なのかもしれません。

返血以外でもエアーが混入することがあります。たとえば、医師が起こした事故ですが内径静脈に留置しているダブルルーメンカテーテルを抜去した際に、誤って空気が体内に入り死亡事故が起きています。

B:出血

透析中の事故で出血は一番頻度の多い患者に重篤な影響を与える恐れのある事故です。出血の原因は、抜針・回路の離脱などになります。

抜針については、痴呆患者やせん妄状態の患者の場合は高頻度で発生します。当院は、透析患者200人程の規模ですが、年間4~5件発生していました。

最近では、自己抜針防止の器具を使用することにより自己抜針はなくなりました。ただ、回路からの出血やその他の出血は発生しています。自己抜針以外の出血は以下のようなものがありました。

・抗凝固剤と抗凝固剤のラインの接続が緩くて、抗凝固剤のラインから少量ずつ出血していた。
・内シャントの穿刺部位からちょろちょろと出血していた。
・穿刺針と透析回路の接続が緩くてちょろちょろと出血していた。
・透析中に看護師が、静脈側チャンバーから点滴を入れようとして、チャンバー上の補液ラインをクランプせずに開放したことにより血液が吹き出た。
・透析終了後に止血を患者に抑えてもらっていると、きちんと押さえていなかったようで、ベッドの上にかなりの量の血液が漏れていた。

出血は抜針以外にも複数の原因があるので注意が必要です。

C:血液凝固

血液凝固は、維持透析においては比較的頻度が少なく、CHDFなどのCRRTで長時間血液浄化療法を継続する場合に発生します。

維持透析の場合、血液凝固を起こすリスクが高いのは、血液透析導入時など抗凝固剤の適正使用量が定まっていない場合や、透析開始時に動脈側と静脈側の接続を逆にしてしまうことにより再循環が起こり血液が濃縮して回路内凝固を起こすこと、脱血不良の頻発により回路内が凝固することがあります。

D:透析液の異常

透析液濃度の異常は、透析液溶解装置の粉末が溶け残ることにより、透析液濃度異常が発生したことがあります。原因は、溶解装置に粉末の投入量を誤ったことだと思います。

E:(装置の故障)

装置の故障は、頻度が多いですが事前に気づくことができ患者に影響を与える事故は当院では今まで起こっていません。

ただ、透析液供給装置、透析液溶解装置、RO装置、透析監視装置全てにおいて、装置が故障することは、度々あります。

透析液供給装置は、基盤の故障により動作の停止、配線に水がかかることにより装置のショートで動作停止などがありました。

透析液供給装置は、基盤の故障やポンプからの液漏れ、電磁弁の故障など装置の使用年数が多くなるにつれてトラブルが増加しています。

RO装置についても、定期交換部品以外の部品が老朽化により壊れて装置が動作しなくなったことがありました。

透析監視装置(コンソール)は、故障の頻度が一番多いです。ただ、装置の自己診断により治療の前に警報が発生する為、事故には至っていません。

このような、装置の故障を修理したり、業者に連絡をとりスムーズに対応して、患者の透析を円滑に行えるようにするのが臨床工学技士の独占業務であり、臨床工学技士のやりがいであると思います。

F:除水関連事故

除水関連事故も比較的多く発生する事故です。ただ、重症に陥っていない為、報告数が少ないだけだと思います。

具体的な除水関連事故は、
・除水計算のミスによる、除水量設定間違い。
・透析液監視装置に除水設定の入力ミスや入れ忘れ。
・患者の体重測定時の測定ミス(患者のポケットに余分なものが入っていたりして重く測定したりする)
・点滴分の除水分の設定忘れ。
・Drの指示の聞き間違い。
・装置のオーバーホール後の除水調整のミスにより、過除水または、除水量が少なすぎる。

などなど、ダブルチェックを行っていてもチェックが漏れて定められたDWまで除水できなかったり、除水しすぎることがあります。

全国での重篤な透析事故の統計

次は、他の施設における事故の統計について紹介します。

平成14年度の古い資料ですが、1556の透析施設を対象とした重篤な透析医療事故の件数は以下になります。
<全国調査における重篤な透析医療事故(平成14年)>

重篤な事故件数 553件
死亡事故 18件
穿刺針の抜針 166件(30%)
除水ミス 50件(11.4%)
血液回路接続部離脱 45件(8.1%)
空気混入 36件(6.5%)

結果は上記のようになります。

やはり、当院と同様で、穿刺針の抜針事故や除水ミスが多いようです。空気混入については、平成27年の現在ではほとんどの施設がエアー返血をしていないのでこの当時と比べて、空気混入の事故は減っていると思われます。ただ、統計上は表に出ていないだけで、小さな事故は数多くあるのが現状です。

まとめ

透析室では、生命維持管理装置である透析監視装置をはじめとして、さまざまな装置を使って治療を行います。装置の操作方法を誤ったり、装置が故障したりした時に適切な対応をとらなければ患者に影響を与えてしまう場合もあります。

また、医療機器は故障が少ないイメージがありますが、透析関連の装置は比較的故障が多いように感じます。また、初期不良や装置の構造の欠陥があることが後から報告されることもあります。

それぞれの事故や故障に対して、対策を事前にとり、もし事故が発生したり、事故が起こりそうになった場合は、全員で共有して確実な対策をつくりマニュアル化することが必要だと思います。

参考文献:血液浄化療法ハンドブック

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