透析室での針刺し事故の予防と対処法について

注射

透析室での針刺し事故

血液透析の現場では、日常的に穿刺や採血が行なわれるため、針刺し事故により感染を起こすリスクがあります。さらに、血液透析患者の場合は、一般の人と比較してB型肝炎やC型肝炎の感染率が高く、医療スタッフを介して他の患者を感染させてしまったり(院内感染)、医療従事者自身が感染する危険性があります。

今回は、医療従事者自身が感染を起こさない対策と、針刺し事故を起こしてしまった場合の対処法について紹介します。

一般的な針刺し事故予防対策

・観血的な医療行為を行なう際には、医療従事者は手袋、予防衣、メガネ、マスクなどを使用する。
・針や刃物を破棄するものは、専用の容器に定められた方法に従って行なう。
・穿刺後の針のリキャップをしない。
・針刺し事故防止機能の付いた道具を使用する。

針刺し事故時の共通の対処

針刺し事故時の、共通の対処としては外傷に気づいたら
①速やかに流水で傷口を洗浄して、血液を絞り出す。
②傷口を消毒薬にて消毒する。
③患者がHBV、HCV、HIVなどに感染していないかを確認して、感染者の場合は、以下に述べる個々の対応を行います。

HBVの対処

HBV(B型肝炎)に対しては、ワクチンが発明されており、医療従事者のほとんどは入職時にワクチンを接種してHBs抗体を獲得しています。ただし、獲得HBs抗体は時間経過とともに低下するので注意が必要です。

HBV針刺し事故の対応は、HBワクチン接種者の場合は、HBワクチンの追加摂取1回のみで十分といわれています。HBワクチン未接種者の場合は、事故時、1ヵ月後、3ヵ月後の3回にHBワクチン接種すると共に、事故直後できるだけ速やかにHBIG(高力価HBs抗体含有免疫グロブリン)の筋注が必要となります。

HCVの対処

HCV感染に対しては、ワクチンなどの予防法は確立されていません。ただし、HCVはHBVに比べて感染力は比較的弱いとされています。Mitsuiらの研究によると、透析施設においてC型肝炎患者が関連した針刺し事故で、医療従事者がHCVに感染した症例は、68例中7例(約10%)と報告しています。ただし、針刺し事故は一部しか報告されていないという問題があり、HCV暴露例での発病率、感染率ははっきりわかっていません。

HIVの対処

針刺し事故でのHIVが感染する確率は、0.4%といわれています。HIV患者に関連した針刺し事故を起こした場合は、予防内服を事故後1~2時間以内に開始することにより、感染確立をさらに1/5下げられると報告されています。予防内服には『レトロビル、エピビル、ビラセプト』の3剤を用います。これらを、約4週間継続して服用する必要があります。

まとめ

近年では、針刺し事故防止の為に、針刺し事故防止機能の付いた注射針や、採血キットが使用されるようになりました。たとえば、透析開始時に使用する穿刺針などは、外筒から内針を抜くと針先に自動的にキャップされる構造になった、安全針が発売されています。

これらの、安全機能の付いた備品を使用すると、材料費のコストは上がりますが、透析室スタッフの感染の危険を減らせるとともに、針刺し事故を起こす不安からくるストレスを軽減することができます。

透析室医療の診療報酬は下げられて経営は厳しいですが、安全面に関しては管理者はしっかりコストをかけてほしいと思います。