活性炭吸着療法とは?薬物中毒に対する適応について

炭

薬物中毒に対して保険適応のある血液浄化療法は、PE及び活性炭吸着療法などがあります。PEでは、血漿の準備に時間がかかることや、活性炭での適応が広いことから、緊急時の薬物中毒には活性炭による血液吸着療法が実施されることが多いです。

活性炭吸着療法とは?

活性炭吸着の原理は、炭素の微細孔に物質を取り込む物理的吸着。微細孔に入り込んだ物質を分子間引力(ファン・デル・ワールス力)により吸着します。特定のリガンドを持たないので、微細孔のサイズに依存した吸着特性を持ちます。

炭素に直接血液が触れると、血球の損傷、血液凝固、活性炭微粒子の混入が問題となるため、親水性ポリマーのpoly-HEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート系重合体)で覆っています。

ヘモソーバCHS・ヘモソーバ(旭化成HPより転載)

血液浄化療法としては、DHP(直接血液灌流法)であり、脱血した血液をそのまま活性炭吸着器に通して返血します。活性炭吸着器は、旭化成クラレメディカル社のCHS-350、川澄化学工業のDHP-1が販売されています。名前が違うだけで、両方とも同じ製品です。

活性炭吸着療法の適応疾患

活性炭吸着の適応は、薬物中毒および肝性昏睡昏睡です。

薬物中毒とは

活性炭吸着で除去できる物質は、分子量100~5000程度です。これより小さな物質を除去するのであればHD、大きな物質をやタンパクに吸着された物質を除去する場合はPEが適応となります。いかに、活性炭吸着が有効な薬物を搭載します


[各種中毒起因薬物と血液浄化療法の適応](アフェレシスマニュアルより一部改変して転載)

1.医薬品

①睡眠鎮静剤
ブロム尿素製剤→DHP
ベンゾジアゼピン剤→DHP
バルビツール酸剤→DHP
抱水クロラール→DHP
②精神神経用剤
クロプロマジン製剤→DHP
イミプラミン系製剤→DHP
炭酸リチウム→HD
メプロバメート→DHP
塩酸デシプラミン→DHP
塩酸クロミプラミン→DHP
塩酸アミトリプチリン→DHP
③抗てんかん薬
ヒダントイン系製剤→DHP
ニトラゼパム→DHP
カルバマゼピン→DHP
プリミドン→DHP
④解熱鎮痛剤
アセトアミノフェノン→DHP
フェナセチン→HD
サリチル酸系製剤→DHP
ピラゾロン系製剤→DHP
⑤抗ヒスタミン薬
塩酸プロメタジン→DHP
⑥循環器用薬
ジギタリス製剤→DHP
プロカインアミド系製剤→DHP
キニジン製剤→HD
カテコラミン→DHP
⑦糖尿病用薬
グリベンクラミド→HD
⑧腫瘍用薬
シクロホスファミド→HD
メトトレキサート剤→DHP
⑨抗生物質
アミノグリコシド系→DHP
セフェム系→DHP
ペニシリン系→DHP
テトラサイクリン系→HD

2.農薬
①ジクワット製剤
→初期にDHPその後PE,CHF,CHDF
②有機リン製剤,カーバメイト製剤
→早期来院の大量服用例にDHP
③ラウンドアップ
主成分:グリホサート→HD
副成分:界面活性剤→DHP
④バスタ
主成分:グルホシネート→HD
副成分:界面活性剤→DHP
⑤有機塩素系製剤→DHP
⑥黄リン製剤→PE

3.家庭用品
①界面活性剤→DHP

4.工業用品
①エチルアルコール→HD
②メチルアルコール→HD
③エチレングリコール→HD
④エチレンオキシド→DHP
⑤トルエン→HD
⑥四塩化炭素→DHP
⑦トリクロロエタノール→DHP
⑧フェノール→HD
⑨ホルマリン→HD
⑩ヒ素→HD

5.植物毒
①タマゴテングタケ→DHP
(アマニチン,ファロイジン)
肝障害発現時→PE
②トリカブト→DHP

※ HDが有効な薬物はCHDFも有効である。DHPとCHDFの比較については報告がない。
※ 上記の血液浄化療法の選択は文献から調査したものである。


 

肝性昏睡(肝性脳症)とは

肝性昏睡とは、劇症肝炎、術後肝不全、肝硬変などにより肝機能が障害されたことが原因で意識障害や精神神経障害が発生する状態をいいます。

活性炭吸着療法の保険適応(平成28年)

肝性昏睡又は薬物中毒の患者に限り算定できる。

手技料:2000点

材料価格:131000円

活性炭吸着療法の実際

活性炭吸着療法の治療条件

  • 血流:100~200ml/min
  • 抗凝固剤:ヘパリン(透析と同程度)、フサンは吸着されるので使用しない。
  • 時間:3~4時間
  • 回数:効果が十分でないときは、連続あるいは断続的に数回実施する。

活性炭吸着療法のプライミング方法

  1. 吸着器を、流量50~100ml/minで生食1000ml以上流して洗浄する。
  2. 吸着器を反転させて、ヘパリン化生食500ml(生食500mlにヘパリン2500U程度)を流す。

活性炭誕吸着療法の注意事項

  • 慎重適応⇒低体重、重篤な心疾患、出血傾向、アレルギーや過敏症患者
  • 脱血圧が40kPa(300mmHg)超える場合は、凝血の可能性があるので返血する。
  • 分子量が、100以下の物質および5000以上の物質、タンパクに結合した物質は吸着されにくい。
  • 抗凝固剤のメシル酸ナファモスタットは、分子量が540程度で吸着されるので使用は避ける。
  • 吸着器のブドウ糖吸着により低血糖を起こす場合があるので注意。必要時は別回路からブドウ糖液を点滴する。プラミング時にブドウ糖液での置換は行わない。ブドウ糖吸着による浸透圧変化で溶血の恐れがある。

ヘモソーバCHS添付文章