敗血症にも保険適応されたセプザイリスのAN69ST膜の特徴とは!?タンパク吸着特性は?

2014年7月に、バクスターから、新しいCHDFの膜(持続緩徐式血液濾過器)であるセプザイリスが発売されました。その特徴は、AN69膜STという、サイトカインの吸着特性の高い膜素材が使われていることです。通常、CHDFは、腎不全、肝不全が保険適応の範囲ですが、セプザイリスでは、高いサイトカインの吸着特性があることから、敗血症にも保険適応が認められました。

通常、腸穿孔などによる敗血症の血液浄化療法による急性血液浄化療法は、PMXによるエンドトキシン吸着後に、CHDFを行うのが一般的でした。セプザイリスでは、サイトカインの吸着ができることから、PMXによる血液吸着療法を省ける可能性ができました。

添付文章では、敗血症患者に対する治療成績は、PMXによるエンドトキシン吸着と同等以上の救命効果が検証されたことが記載されています。これからの、敗血症治療の血液浄化の新しい治療の選択肢の一つとしてこれからメジャーになるのでしょうか?

とりあえず、セプザイリスについてもう少し詳しくまとめてみました。

AN69ST膜とは

AN69ST膜とは、従来バクスター社が製造していた、AN69膜の内表面にポリエチレンイミンを表面処理した膜です。AN69膜はアクリロニトリルとメタリウスルホン酸ナトリウムを成分とする合成高分子膜です。

膜の物理的な特徴はハイドロゲル構造であることです。ハイドロゲルとは、ゼラチンやゼリーのような状態をイメージです。ハイドロゲル構造のため、セプザイリスには、ポリスルホン膜のように透析膜に側孔(中空糸)の側面に穴が開いていません。K、Pなどの分子は、側孔がないのに膜を通過できるという不思議な膜です。

ハイドロゲル構造のため膜表面だけでなく、膜の内側など全体で吸着ができるため吸着性能を高くすることができます。

吸着原理は、イオン結合(静電結合)です。病因物質だけを選択的に吸着することができて、体に必要なタンパク質などの吸着は少ない設計になります。具体的には、陰性のスルホネート基に陽性のサイトカインが吸着されます。

セプザイリスのプライミング方法

セプザイリスのプライミング方法は、ポリスルホン膜やPMMA膜と、少々異なります。

へパリン添加生理食塩液でプライミングして、膜表面にへパリンがコーティングする必要があります。具体的には、1Lの生理食塩水に5000単位のへパリンを添加した、へパリン化生食でプライミングすることにより、膜全体で600単位程のへパリンが吸着されコーティングされます。

添付文章では、上記のへパリン化生食を血液側に1.5L、透析液側に0.5L流して洗浄するように記載されています。

ポリスルホン膜やPMMA膜と比較

生体適合性

生体適合性とは、体が拒否反応を起こす程度のことです。透析膜を血液が通ると、異物と接触する為、体の中の補体が活性化(アレルギー反応)されたり、ブラジキニン(血圧降下作用を持つ物質)が放出されたりして、サイトカイン(炎症を引き起こしたりする物質)がたくさん作られます。

生体適合性は、ポリスルホン膜が一番いいようです。PMMA膜も生体適合性はいいほうです。AN69ST膜は、PMMAと同等程度の生体適合性です。

限外濾過性能

限外濾過性能とは、膜の水の通りやすさです。限外濾過性能が高いほど、CHDFなどでたくさん補液をすることができます。

限外濾過性能の順番は、エクセルフロー(ポリスルホン膜)>セプザイリス(AN69ST膜)≒ヘモフィールCH(PMMA膜)といった感じです。

蛋白質吸着特性

キャプチャ
<バクスター社 セプザイリスパンフレットより引用>

セプザイリスで使用されている、AN69ST膜はタンパク吸着特性が高いことも証明されています。上の図は、炎症性メディエーターであるHMGB-1(炎症性蛋白質)の吸着特性を比較したグラフです。
今まで、吸着特性が高いと言われていたPMMA膜と比較しても倍以上の吸着性能があります。

セプザイリスの価格

セプザイリスの価格は、26000円程度と、従来の持続緩徐式血液濾過器と比較して8000円も高い価格設定になっています。いまいち、セプザイリスが広まらない背景には、この高い価格が原因とも思えます。

新しい診療報酬

従来の持続緩徐式血液濾過器の償還価格(材料価格)は26500円でしたが、セプザイリスの場合は有用性加算が追加され28500円となっています。

償還価格(材料価格)とは、国から病院に支払ってくれる持続緩徐式血液濾過器の購入代金です。支払ってくれる代金は一定なので、安い持続緩徐式血液濾過器を病院がメーカーから購入するとその差額が病院の収入になります。

たとえば、病院がセプザイリスをバクスター社から2万6000円で購入して、治療に使うとすると病院は、国から材料代として28500円もらえるわけです。28500-26000=2500となり、2500円分は、病院の収入になるということです。

実際は、持続緩徐式血液濾過で国からもらえる材料費は、持続緩徐式血液濾過器と回路を合わせた値段で28500円です。CHDFの回路は、5000円近くするため、材料費的にはマイナスの収支になります。

ただ、持続緩徐式血液濾過(CHDFなど)を行うと材料費とは別に処置料(技術料)として1990点(19900円)を請求することができますので総合的にはプラスになるでしょう。

まとめ

当院でも敗血症患者を中心に、セプザイリスを使用しています。印象としては、とても凝固しやすい(目詰まりしやすい)。というのが第一です。早い場合は、4~5時間程度で回収ということもありました。陰性の膜ということで、ナファモスタットなどの吸着されるのが原因かもしれません。

凝固を防ぐには、血流量を増やしたりなどが多少効果があるかもしれません。とりあえず、夕方や夜間開始すると、深夜に組み替えをする確率が高くなるため、できれば早朝使用してもらいたいと勝手なことを思ってしまいます。

 

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