シャントの管理方法(長持ちさせるには・評価の基本・トラブルスコアリング)

はじめに

近年は、透析患者の高齢化や動脈硬化、糖尿病患者の増加によりシャントトラブルの頻度が上昇しています。中でもシャント狭窄による脱血不良が度々発生しています。シャント狭窄については、シャントPTAにより比較的簡便に治療することができますが、患者さんの苦痛や負担はそれなりに大きいと思います。そこで、今回はできるだけ治療の頻度を下げられるように「シャントを長持ちさせる方法」そして、シャントになんらかの問題が生じたときに早期発見しできるよう「シャントの評価方法」について紹介します。

▼目次

1.シャントを長持ちさせるために
・シャントの開存率
・患者さんの注意点
・スタッフの注意点

2.シャント評価の基本
・見る
・聞く
・触る

3.シャントタラブルスコアリングの活用

まとめ

シャントを長持ちさせるために

シャントの開存率

 

内シャント
<日本透析医学会雑誌 44巻9号2011より引用>

まずは内シャントの開存率についてです。開存率とは内シャントが狭窄したり、閉塞したりして使用できなくなった人の割合を表します。数あるバスキュラーアクセスの中で一番開存率が高いのが、内シャントと言われています。

上図をみたところ、高齢者や糖尿病患者では、間存率がやや低いですが、一番開存率が低い透析患者でも、5年間の開存率が50%以上あります。

人工血管では、3年間の開存率が50%と言われていますのでそれに比べれば高いように思えます。ただ、これらの開存率は、患者の生活習慣や、私たちスタッフの穿刺の仕方によっても左右されます。どうすれば、開存率を上げることができるか紹介します。

日常生活での注意点

重い荷物を持たない。

重い荷物を持ったり、シャント肢側にバックをぶら下げて持ったりすると、シャント血流が遮断され閉塞する恐れがあります。

手枕をしない

シャント肢側では、手枕をしないようにしましょう。シャント血流が、遮断されて血栓ができやすくなりシャント閉塞するリスクが上昇します。

腕時計をしない

腕時計もシャント血流を妨害する恐れがあるのでシャント肢側に腕時計は装着しないようにします。

ぶつけないようにする

シャント肢をぶつけないように気をつけましょう。特に、透析患者の場合は、ヘパリンなどの抗凝固剤を透析で使用している為、内出血や出血がしやすい状態になっています。

血圧測定に使用しない

シャント肢側で血圧測定も、してわいけません。シャント血流が妨げられる恐れがある為です。シャント肢の反対または、足で血圧を測定します。

透析間の体重増加量を増やしすぎない

透析間の体重増加量が多いと、透析中に急速に除水する必要があります。急激な除水は、プラズマリフィリングが追いつかない為、血液中の水分量が減り血液の粘度が濃くなります。血液の粘度が上がると、血管が詰まりシャント閉塞するリスクが上昇します。透析間の体重増加量が多くなりすぎないように注意しましょう。

毎朝、シャントの音を聞く

異常があった場合は、主治医にすぐに受診する。

 

スタッフの注意点

穿刺部位をずらす

内シャント(AVF)または、人工血管(AVG)を長持ちさせるには、同一部位ばかり穿刺しないことです。特に、人工血管では、血管が人工物なので穿刺で傷んだ素材は、回復しません。同一部位ばかり穿刺すると、人工血管が、潰れたり、細くなったりして、すぐに使えなくなります。

内シャントにしても、同一部位ばかり穿刺していると、刺している部位の血管壁が薄くなり、瘤ができたり、皮膚が薄くなりシャント感染を起こしやすくなります。

瘤ができると、瘤と瘤の間が狭窄したり、瘤が大きくなると破裂して出血する恐れもあります。刺し慣れていない部位を、穿刺すると患者は嫌がりますが、患者にしっかりと説明をして、納得してもらったうえで、穿刺部位をずらして刺すことが大切です。

黙ってずらして穿刺すると、新しい場所は、痛みが強いので、穿刺が下手くそと思われたり、○○さんが刺すと痛いなど言われて、トラブルのもとになります。

シャントの吻合部付近は穿刺しない

教科書的には、内シャントの吻合部から5cm以内は穿刺をしない。と記されています。これは、吻合部付近は、血管の分枝がないことや、血管内の圧力が高い為、穿刺が失敗して腫脹すると血液の流れが停滞して、シャント閉塞につながりやすい為です。また、吻合部付近を穿刺失敗して腫脹刺すと、再穿刺する場所を確保するのが難しくなります。

脱水にならない

脱水によりシャント閉塞することもあります。特に、夏場などに大量に汗をかいた場合は、透析患者の場合も、出た汗の分は水分補給をする必要があります。脱水により、血液が濃くなり、さらに血圧低下を起こすとシャント閉塞するリスクが高くなります。

穿刺の失敗をできるだけしないように

穿刺の失敗を繰り返すことでも、シャントが潰れることがあります。穿刺の失敗が続くようでしたら、熟練者が穿刺したり、ボタンホールを作成してペインレスニードルで穿刺したりなど、工夫をして穿刺を失敗しないようにする工夫が必要です。

また、患者側はできるだけスタッフにプレッシャーを与えないでください。「絶対失敗するな」「失敗したら帰る」など無茶苦茶言う患者がいますが、プレッシャーを与えると、緊張して肩に力が入り、失敗率が上がるように思えます。私たち、スタッフ自身も穿刺を失敗すると、ものすごく後味が悪いし、罪悪感を感じます。何も言わなくても全力で穿刺しています。

シャントを長持ちさせるためにまとめ

以上が、シャントを長持ちさせる方法です。私たち臨床工学技士、看護師などの透析スタッフは、しっかり患者に指導してシャントが長持ちできるように指導する必要があります。

シャントが狭窄すると、シャントPTAを行ったり、シャントの再建術を行う必要があります。シャントPTAはとても痛みが強いようでとても辛いと聞きます。このようなつらい思いをできるだけ少なくしてやるためにも、穿刺技術を向上させ、それぞれの患者の内シャントの構造を理解して、同一箇所ばかり穿刺しないようにすることが大切です。

シャントの評価の基本

初めに

シャントは透析患者さんの命綱と言われています。シャントの状態が常に良好でないと十分な透析を行うことができません。
一般的に、シャントの状態をしっかりと確認するには、超音波エコーやシャント造影など手間がかかります。

そこで、スタッフや患者さんが簡単にできる内シャントの評価方法を簡単に説明したいと思います。

内シャントの評価のポイントは、『見る、聞く、触る』+『静脈圧or脱血の確認』です。
順番に説明していきます。

シャントを見る

まずは、シャント血管を見てみ見ましょう。

腫れてないか

シャント肢全体が、むくんでいる場合はソアサム症候群の可能性があります。ソアサム症候群とは、シャントを流れる血液の途中が狭窄したり、閉塞することで、抹消部の血液が滞留してしまい、腕全体が腫れてしまう状態です。

炎症はないか

内シャントが赤くなっていないか。赤く炎症を起こしていたらシャント感染の恐れがあります。

狭窄はないか

上腕を駆血して、目視で血管が細くなっている部分がないか確認します。

シャント音を聞く

聴診器を使って、シャントの吻合部から中枢までの音を聞いてみましょう。正常な場合のシャント音は、ゴーゴーと、低い音がします。ヒューヒューと、高い音がする場合は、その部位の血管が細くなっている恐れがあります。駆血してその部位を触って確認してみましょう。

シャントを触る

触るのが一番わかりやすいと思います。

スリルはあるか

シャント血流は、乱流といて不規則な流れで血液が流れているため、血流が十分ある場合は、ザー、ザーという振動が感じられます。狭窄している場合は、狭窄部位の抹消側では、動脈血管のような拍動を感じることが多いです。

駆血していないのに血管が張っていないか

駆血していないのに、血管が張っている場合は、内シャントが狭窄したり、詰まったりして内シャント内の圧力が上昇していると考えられます。硬くなっている部分は、抹消から中枢に向かってどこまで血管が張っているか確認してください。張っている部分の一番最後が狭窄部位と考えられます。

駆血したときに十分に血管が張っているか

穿刺する前に駆血して、血管が十分に張っているか確認しましょう。駆血しても血管が張っていない場合は、内シャントの抹消側での血管が狭窄または、閉塞して血液が流れてきていないことが考えられます。

拍動はないか

内シャントが狭窄している場合は、狭窄部位の抹消側では、動脈血管のような拍動を感じます。

細くなっている部分はないか

駆血して、内シャントを指の腹で触って極端に血管が細くなっているところはないかを確認します。

静脈圧、脱血を確認する

静脈圧は高くないか

静脈圧は、血液流量や、穿刺する針の太さにより異なりますが、普段と比べて静脈圧が高くなっていないかを確認します。静脈圧が高い場合は、針が血管壁や静脈の弁に引っ掛かっていないか調整して確認します。それらの問題がないのに静脈圧が普段よりも上がっている場合は、内シャントの返血側の中枢側以降に、狭窄がある可能性があります。特に、静脈圧が200mmHgを超える場合は、内シャントが狭窄している可能性がかなり高いです。

脱血は十分に取れているか

脱血が十分に採れない場合は、脱血側の穿刺部位の中枢側の血管が狭窄している可能性があります。

シャント評価のまとめ

以上でシャントの評価方法は終わりです。普段から皆さんが行ってりる事でしょうか?施設によっては、聴診器による音の確認しかしなかったりなどさまざまです。日頃から患者さんと接する機会が多いスタッフが注意してシャントの状態を観察することにより、シャントの異常を早期発見して、早期治療することで、シャント閉塞のリスクを減らせると思います。

シャントトラブルスコアリングの活用

内シャントを長持ちさせるには、患者自身の生活習慣の注意が必要ですが、透析室のスタッフによる管理も重要です。透析毎に、患者さんの内シャントを、『見て、聴いて、触れて』の3つのポイントに注意しながら観察する必要があります。

シャントに何らかのトラブルがあった場合でも、早期に発見すれば重症化したり、閉塞する前に、治癒させることができ、シャントの開存率も上がります。

シャントにどの程度の異常があったらシャント造影やシャントPTAをすればいいのか迷うことがあると思いますが、透析医学会よりガイドラインが作成されています。

今回はそのガイドラインを紹介します。

それぞれの項目に点数がつけられており、合計点数が3点を超えた場合に、DSA(造影)もしくは、シャントPTAを検討すると記されています。

それではさっそく紹介します。

 

シャントトラブルスコアリング(S.T.S)
第Ⅰ版(Co-medical staffのために)
項目  点数
1 異常なし 0
2 狭窄音を聴取 1
3 狭窄部位を触知 3
4 静脈圧の上昇160mmHg以上 (AVF:1,AVG:3)
5 止血時間の延長 2
6 脱血不良
(開始時に逆行性に穿刺)
5
7 透析後半1時間での血流不全 1
8 シャント音の低下 (AVF:2,AVG:3)
9 ピロー圧の低下 2
10 不整脈 1
※3点以上でDSAorPTAを検討
(バスキュラーアクセスガイドライン改定・ワーキンググループ.慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作成及び修復に関するガイドライン.日本透析医学会雑誌.44(9),2011,855-937より引用)

この表を見る限り、狭窄音については1点と少ないですね。透析室で働いていると、シャントの狭窄音はするけど、十分に血流はとれるという患者さんをよく見かけます。狭窄音はそれほど、重要視しなくていいポイントなのかもしれません。

まとめ

今回は、透析医学会によるシャントトラブルスコアリングについて紹介しました。この表を参考に、シャントトラブルの予兆がある場合は、早めに検査することが大切です。

DSAでなくても、最近では、超音波エコーにより非侵襲で検査できるので是非活用してみてください。