血液透析での脱血不良の原因と対処法

血液透析では、体内の血液を4時間程度で十分に浄化する為に、体内から、高流量で血液をダイアライザに取り込む必要があります。これがなんらかの原因で血液が取り出せなくなったり、血流が弱くなると十分な透析量を確保することができなくなります。

血液透析施行中は、患者の容体および、ブラッドアクセスから、血液が十分に確保されているかを十分確認する必要があります。今回は、透析中に起こるトラブルで比較的頻度が高い、脱血不良の原因とその対処方法について紹介します。

脱血不良の原因

脱血不良の原因は、穿刺ミス、シャント狭窄があります。順番に紹介します。

穿刺ミス

脱血側の穿刺針が、確実に内シャント血管に入っていない場合は、シャントから血液を十分に取り出すことができません。穿刺針がシャント血管の後壁まで貫いていたり、血管に針が先端だけかすって入っている場合でも、穿刺針に脱血が帰ってくる場合があるので、穿刺失敗に気づかずにそのまま透析を開始してしまう場合があります。

確実に穿刺針が入っているか確認する方法は、穿刺針の根元までシャント血管内に挿入できるか、または穿刺針にシリンジを接続して、血液を引いたり挿入しても血管が腫脹しないか又は、シリンジで脱血がスムーズに行えるかで確認します。

穿刺針の位置不良

穿刺針が血管の狭窄している部位に留置されていたり、静脈弁に針の先端が引っ掛かっている場合は十分に脱血が採れない場合があります。

穿刺針の先端の位置を変えて血管が狭窄しいない位置に針先を調整したり、穿刺針を、静脈弁を通過するように挿入することで血流が確保できるようになることがあります。

シャント狭窄

患者の内シャントが狭窄していたり、シャント閉塞していた場合は、穿刺が確実にできていたとしても血流を確保することができません。血流が少しでも採れているなら、シャント肢を軽く駆血して血流を確保する場合もあります。ただし、シャント狭窄や閉塞が疑われる場合は、できるだけ早くシャントPTAを行うことが必要です。

 

脱血不良の見分け方

透析施行中に、今まで脱血が採れていたのに、急に脱血が弱くなる場合があります。脱血が弱くなると静脈圧警報の発生により、脱血不良に気づくことができますが、少々の脱血不良では、静脈圧警報が発生しない場合があります。警報以外で、脱血不良を気づけるポイントを紹介します。

ピローがへこむ

回路内にピローがあれば、ここを見るのが一番確実に脱血不良を確認することができます。ただ、最近ではピローがない血液回路を使っている施設も多くあります。

血液ポンプの手前に、ピローといって血流がとれているか確認する部分があります。ここが、十分に膨らんでいる場合は設定血流が患者から取り出せています。逆にここが十分に張っていなかったり、しゃげている場合は脱血不良になっています。

 

静脈圧が下がる

基本的透析時間が経過するほど、除水により血液が濃縮され血液の粘度が上がる為、静脈圧が上昇します。それなのに、静脈圧が低下している場合は脱血不良により血液が十分設定値通り、採れていないかもしれません。経過記録で静脈圧の変化を確認するか、透析装置で折れ線グラフで表示することができます。

抗凝固剤に血液が逆流

脱血不良になると回路内が陰圧になり、抗凝固剤のシリンジ内の薬剤が引っ張られます。その後、脱血不良が改善すると逆に回路内の血液がシリンジ内に押し戻せられます。よって、脱血不良が頻発すると、抗凝固剤の注入ラインや、抗凝固剤のシリンジ内に血液が逆流してくる場合があります。

動脈回路に気泡が発生

脱血不良になると、血液ポンプや動脈チャンバーなど、脱血側の回路に気泡が発生します。

回路がしゃくっている

脱血不良時は、血液ポンプ出口から、動脈側チャンバーまでの回路が、ビクビクと大きくしゃくります。

 

静脈側チャンバーの流れが断続的になっている

静脈チャンバーは、液面を下げているので、血液の流れを確認することができます。設定血流を採れている場合は、ここでの血液がスムーズに断続的に流れます。脱血不良になると、血液が流れたり止まったりして断続的な流れになります。

 

脱血不良時の対処のながれ

脱血不良に気づいたとき場合の対応の一例を紹介します。

ほとんど脱血できない場合

  1. まずは、血液ポンプを停止させます。
  2. 回路内の圧力(静脈圧)を確認します。
  3. 回路内の圧力が陰圧(マイナス)になっている場合は、生食ラインを開放して透析回路内に生食を少量入れて、回路内の静脈圧をプラスにします。
  4. 脱血不良の原因を探します。
  5. 脱血不良の原因を直ぐに解決できる場合は、解決して透析再開します。
  6. 直ぐに解決できない場合や、時間がかかると判断した場合は、血液回路を空回し(外回し)させます。
    (空回しとは、患者の穿刺針から静脈側と動脈側の回路を取り外して、透析回路の動脈側脱血部と静脈側返血部を三方活栓などで接続して、患者を通さずに透析回路内だけで血液を循環させる)

血流が50ml/min程度なら取れる場合

  1. 血流が50ml/min程度とれて、血液が循環できるのであれば血液ポンプを回しながら対応を行います。
  2. 脱血側の穿刺針の挿入具合を調整して、血管内に確実に入っているか確認します。
  3. 血管の静脈弁に針先が引っ掛かっていたり、血管の狭窄部位に針先が留置されている場合は、穿刺針を挿入するか、少し引いて針先の位置を変化させます。
  4. 針先調整後に、血液が採れていることを確認しながら、徐々に血液ポンプの速度を上げて指示値まで上げて透析再開します。

脱血不良時の対処で大切なポイントは

・血液ポンプを止めた状態では、血液が凝固する。
・透析回路内が陰圧になると血液が凝固・溶血する。
・脱血不良の対処に時間がかかりそうな場合は、外回しをする。

上記3つのポイントは絶対頭に入れておいてください。特に、抗凝固剤にメシル酸ナファモスタットを使用している患者や、血液が凝固しやすい患者は注意が必要です。脱血不良時の対応がてきぱきできないと、回路内の血液が凝固して、回路を破棄しなければならなくなります。

以上で脱血不良時の対処方法の紹介は終わります。施設によって対処方法は違うと思うので参考程度にしてください。

2 件のコメント

  • 初めまして、こんにちは。
    急にメールにて失礼致します。
    透析室で働きだし11年過ぎ、大嫌いだった勉強が最近面白くなりかけてきたとこです。
    時々、ブログも拝見させていただき新たな発見が出来ています。
    ちょっとお聞きしたいことがあり、メールさせて頂きました。
    うちはクリニックで、室長が勉強熱心な方であり尊敬もしているので嫌ではないんですが、自信喪失してしまいそうで…

    突然、穿刺について質問されました。内容は、うちのクリニックでは穿刺後に針先確認をしてます。
    看護師は、ほぼAVともに接続後に循環させ始めたら
    『針先、大丈夫ですか?』と。

    いきなり聞かれてしまい当直明けのフラフラな時間帯で答えた内容が納得されなかったんです。
    私が答えたのは、
    ①固定での血管痛がないか?
    ②穿刺漏れなどないか?痛みはないか?
    で声をかけています。
    ②だとタイミングがおかしいと言われました。
    何気なくやっていた行為であり、以前より声かけのタイミングは気にはなっていましたが、自分なりに声かけのタイミングを変えてました。
    うちのクリニックでは、V側穿刺後にヘパ生を通しているので、ヘパ生を通す時、またはV側を接続後にクランプを開放した時落差でのタイミングではないかと思ってます。
    大幅に違いますか?
    それとも確認のポイントがずれてますか?
    お返事頂けたらと思っております。お忙しいのに、申し訳ありません。

    また、誤字脱字も多いかと思いますが、長文にて失礼致します。
    江藤

    • こんにちは。コメントありがとうございます。

      質問内容は、穿刺後に正しく入っているか確認するポイントについてですかね?

      穿刺後に、へパ生食を入れているのであれば、生食を入れるときに抵抗がないか、生食を注入したときに穿刺部位が張れないかなどが確認のポイントとなると思います。また、血液ポンプが回りだすと針先に回路内の生食が入ることになります。その時に、V側の針先が腫脹していないか?、静脈圧が高すぎないか?などが、V側の穿刺が正しく行えているかのポイントになると思います。

      ①固定での血管痛がないか?
      ②穿刺漏れなどないか?痛みはないか?

      これらも、確認の助けになると思いますが、②については、穿刺時に血管を後壁まで貫いても腫脹しない血管も多くあります。また、血管痛は正しく穿刺できていても、痛いという患者さんもいるので自分はそれほど考慮していません。

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