透析中の血圧低下時の対処方法を説明します

透析中に注意して観察しなければならない項目に血圧があります。血液透析では、透析間に増えた水分を除水します。除水により血液中から水分が除去されて一時的に血管内の血液量が少なくなりますが、その少なくなった血液を補うために、プラズマリフィリングといって、血管の周りの組織間液が血管内に移動します。プラズマリフィリングによって、透析で除水されても血液量を一定に保って血圧が低下するのを体は防いでいます。

ただし、透析での除水量が多い場合は、プラズマリフィリングが除水速度に追いつかず、血液量が低下して急激な血圧低下を起こすことがあります。今回は、透析中に血圧が低下したときに、看護師、臨床工学技士ができる処置の方法について紹介します。

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<血圧低下時の処置>

透析液温度を下げる

透析液液の温度を下げることにより、患者さんの体温を下げます。低温透析とか呼ばれていますが、体温を下げることにより、抹消の血管を収縮させて血圧を上げます。透析液の温度は、35℃~35.5℃にします。効果は、弱いように感じます。

下肢の挙上

下肢の挙上とは、透析ベッドの足側を上げて頭より、足を高い位置にする方法です。頭に血液が流れやすくなり血圧低下による意識消失(脳虚血)を防げるとのことです。透析の現場では、頻繁に行われていますが、下肢血流が低下するという弊害もあるようです。

10%NaClを注射

NaClとは、食塩のことです。血液の濃度は0.9%のNaClと同等の濃度です。10%NaClでは、血液の濃度の11倍の濃さがあります。この濃いNaClを透析回路の静脈チャンバーから、5~10mlを注入します。すると、患者さんの血液が濃くなって、その濃くなった血液を薄めようと、プラズマリフィリングの速度が加速します。

10mlのNaClを10ml注射すると、血管内に組織液が100ml程入る計算になります。だだ、プラズマリフィリングは、効果が出るまで時差があるので10%NaClを注射してから、その効果が出るまでに10分程度かかります。
効果がない場合は、さらに10%NaClを5~10ml注射します。

ただし、注射によって体内に入ったNaは、体内に蓄積されます。透析液と血液中のNa濃度は、ほぼ同等であるため、Naの除去は除水時に除去される程度です。透析中にNaClを注射すると、Naが体内に蓄積されて、透析後に口渇になり、水分を多量に飲んでしまいます。弊害も多い為最近では、血圧低下時に、10%NaClの注射をしている施設は少ないと思います。

50%ブドウ糖液の注射

50%ブドウ糖液の注射も、10%NaClと同じような方法で使用されます。以前は、糖尿病患者では、血糖の上昇が促進されるという恐れがあり使用されていませんでしたが、最近では糖尿病患者に使用しても問題ないと言った文献がたくさん出ており、糖尿病患者にも使用されます。ちなみに、血液の濃度は5%のブドウ糖と同等の濃度です。

50%ブドウ糖液では、血液の濃度の10倍の濃さがあります。これを静脈チャンバーから5~10ml注射して、プラズマリフィリングを加速させるということです。10%NaClと異なり、透析後の口渇にはなりにくいですが糖尿病患者には使えません。

除水速度を下げる

血圧の低下は、そもそも除水による血管からの水分の除去にプラズマリフィリングが追いつかなくなり、血液量が低下することにより起こります。よって、除水速度を落とすことにより、血圧の低下を抑えれます。ただし、除水速度をさげると透析時間を延長しなければならなくなるのでなるべくやりたくない方法です。ただ、急激な血圧低下があった場合は、除水速度を直ちに止めます。

生理食塩水の急速補液

これが、血圧の回復に1番効果のある方法です。急激に血圧が低下して意識消失した場合は、この方法をとります。透析回路に血液ポンプで返血に使用する生理食塩水を100~200mlをQB100~200ml/minの速度で補液します。

まとめ

以上が、透析中に血圧が低下した場合の処置方法です。一応医師の指示がそれぞれ必要なので、こうなったらこうすると言った、マニュアルを医師に出しておいてもらう必要があります。そうすれば、急変があった場合に直ちに処置をすることができます。

また、除水速度がそれほど大きくないにもかかわらず血圧低下がおこる場合は、ドライウェイトの設定が誤っている場合があるのでそれらを、設定しなおす必要性があるかもしれません。

他には、糖尿病患者では自律神経障害を合併している患者さんが多く、常に低血圧で透析困難な場合があります。そういった方は、透析中にエホチールなどの昇圧剤を持続的に投与したり、透析前に血圧を上げる薬を内服して血圧を上げるように調整します。血圧の薬については、また別の機会に説明しますね。


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4 件のコメント

  • はじめまして。
    いつも読ませていただいて勉強させてもらってます。
    透析者の家族です。

    今回、透析中の血圧低下。意識消失で、生食200mlで生還できました。

    次回のDWで600g加算されました。

    今回のような怖い目には二度と合いたくありませんが、医師からのリアクションもなしです。
    医療者さんから見れば、ありがちなことで、とるに足らないことなのでしょうか?
    今回、危機的状況を救ってくれたのは、臨床工学技士さんでした。
    彼に気付いてもらえなかったらと思うと、ぞっとします。

    TAKAさんの病院での危機管理は、どうされているのでしょうか?
    お世話になっている病院でも導入できることなら助かります。
    教えてください。
    よろしくお願いをいたします。

    • はじめまして

      透析中に血圧が下がって、意識消失・・・透析室ではたまに見かける光景です。
      ただ、血圧が低下してショックを起こすことにより、脳に酸素が届かなくなり脳梗塞や痴呆などを助長してしまいます。また、発見が遅れると最悪なくなってしまう可能性もあります。
      取るに足らないことではありません。

      透析中の血圧低下は、除水(水分を抜く)ことが一番の原因です。特に、透析間の体重増加が多いと透析中に水を抜くスピードを速くしなければならない為、血圧が下がりやすくなります。ご自分でできる予防法としては、透析間の体重増加を増やしすぎないようにすること。他には、透析中の血圧低下はいきなりでなく徐々に進行してきます。透析中にしんどくなったり、脂汗が出たり、などショックになる前に何らかの前兆があると思います。そのようなときは、遠慮せず早めにスタッフに言いましょう。そうすることで、注意深く観察してもらえたり、血圧が下がらないように点滴したりなど何らかの処置をしてもらえると思います。

      当院では、患者がいるフロアを常に誰かが巡回しています。また、血圧の低下の兆候が見られた患者は、血圧測定間隔を短くしたり、点滴したりなどの対処をしています。

  • はじめまして。

    透析に従事して3年目の技士です
    いつも本当に、現場で役立つ知識として参考にさせていただき、勉強させていただいています。
    ありがとうございます。

    すみませんが、ご指導ください。

    10%NaClの投与に関してですが、
    投与したNaが抜けるのに最低30分はかかるということの根拠は何でしょうか?

    浅学で申し訳ありませんが、Naは拡散では抜けず、除水でしか抜けないものと理解しています。

    平均的な透析中の除水速度が1時間あたり、500~600mlと考えて、
    10%NaCl 20mlに含まれるNa2g分に相当する水分約200mlを除水するのに、30分かかるといったことなのでしょうか?

    当院では1時間前までとルール化されていますが、その根拠をはっきりと教えていただける方がおりません。

    もしくは、私の理解が間違っていて、30分で投与したNaが拡散で抜けるのでしょうか?

    すみませんが、ご教授のほどよろしくお願いいたします。

    • Naは分子量が小さいので、拡散で抜けます。

      30分の根拠ですが、特にありません。ただ、注射することにより血管内に組織中から水分が移動して希釈されるので、それほど血中のNa濃度は上昇しないのではないかと考えています。

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