CHDFの条件設定方法(血液・透析液・補液流量の設定)と症例別の治療法

CHDFでは、血液流量(QB)、透析液流量(QD)、補液流量(QP)、濾液流量(QF)など複数の項目を設定しなければなりません。これらの設定により、除去できる物質の種類や透析量が大きく変わります。

今回は、CHDFの『血液流量、透析液流量、補液流量、濾液流量』など条件設定法について紹介します。前半に「各設定値の意味」、後半には「症例別の具体的な条件設定値」について搭載します。

CHDFの注意点や看護についてはこちらにまとめていますので、CHDFについて全然わからないという場合は先に読んでみてください。

 

CHDFの条件設定

まずは要点から搭載します。

項目 詳細
膜素材
  • PS、PES、TA・・・生体適合性・透水性が良い。膜の目詰まりが起こりにくい。
  • PMMA・・・サイトカインなどの吸着特性がある。ポリスルホンと比較すると目詰まりしやすい。
  • AN69ST・・・サイトカインの吸着特性が強い。敗血症に保険適応されている。目詰まりしやすいので注意。
抗凝固剤 [ヘパリン]

初回20~30U/kg,持続量10~20U/kg/h程度

[ナファモスタット]

20~40mg/dL

ポンプ設定
  • 血流(QB)・・・80~100ml/min
  • 透析液流量(QD)・・・600ml/h
  • 補液流量(QP)・・・200ml/h
  • 除水・・・必要量設定する。点滴量・尿量・不感蒸泄なども考慮する。

 

ポイント
  • CHDFの小分子の除去量は、「透析液流量+補液流量」に比例する。血流速度は、除去量に関与しない。
  • サイトカイン除去目的時には、補液流量(限外濾過)を増やす。
  • 血液濃縮、膜劣化を防ぐため、補液流量は、血流量の30%未満に設定。
  • 保険請求できるのは、補液は一日15L~20Lまで

 

それぞれの設定方法についてもう少し詳しく解説していきます。

CHDFの「膜素材の選択」

CHDF用の膜で、透水性・生体適合性が良く、目詰まりが起こりやすい膜は「ポリスルホン」「トリアセテート」です。電解質の調整や除水目的のみであれば、長時間目詰まりの起こりにくいこれらの膜を使用します。

サイトカインなどの吸着特性のある膜としては、PMMA膜、AN69STなどです。特にAN69STは、敗血症治療に一定の効果があるとの報告があり、敗血症治療に保険適応されています。ただし、吸着特性があるとその分膜の目詰まりが起こりやすいので注意が必要です。

特にAN69ST膜は、CHDFを開始してから10時間も持たないことが度々ありました。AN69膜は、陰性電荷でありナファモスタットを吸着してしまうということも原因かもしれません。

参照<<<敗血症に保険適応されたセプザイリスの特徴とは

膜素材一覧(メーカーHP)

ポリスルホン(PS)膜

エクセルフロー(アサヒ)
ヘモフィールSHG(東レ)
レナサポート(川澄)

ポリエーテルスルホン(PES)膜

レナキュート(川澄)
シュアフィルター(ニプロ)
フロースター

PMMA(ポリメチルメタクリレート)

ヘモフィールCH(東レ)

トリアセテート(TA)膜

UFフィルター(ニプロ)
UTフィルターS

AN69ST

セプザイリス(バクスター)

CHDFの「抗凝固剤の設定」

[ヘパリン]

出血病変がない場合は、ヘパリンが用いられます。投与量は、初回20~30U/kg,持続量10~20U/kg/hを目安とします。全血凝固時間、ACT、APTTが治療前の1.5~2倍程度になるように調整します。

  • ACT・・・150~200秒程度
  • APTT・・・50~60秒程度

[ナファモスタットメシル酸塩]

出血病変やリスクがある場合は、ナファモスタットを用います。投与量は、初回なしで、持続20~40㎎/h程度で投与します。ナファモスタットの場合は、凝固時間について通常モニタリングしません。

CHDFの「血液流量の設定」

CHDFでの、血流量は80~100ml/min程度です。CHDFでは、血液流量に対して透析液流量が極端に少ない為、小分子物質のクリアラランスは、透析液流量・補液量に依存する為、血流をたくさん上げても毒素の除去量は変わりません。

血流を上げる一番の効果としては、膜が凝固しにくなる点です。

その他血流を上げなければならないのは、補液量を爆発的に増やす場合です。補液量を2000ml/hなど高くする場合は、血液が濃縮してしまい回路が固まりやすくなる恐れがあるので、血流量を150ml~200mlに上げる場合があります。

後希釈HDFの場合は、濾液量は血流量の30%以内に設定しなければなりません。少ない血液から多量に除水すると、溶血や血液濃縮の恐れがあるためです。

CHDFの「透析液流量の設定」

CHDFの場合、小分子物質のクリアランスは透析液流量と補液量に依存します。それらに比例してクリアランスが増加します。
一般的には、CHDFの透析液流量は、300~600ml/h程度に設定されます。

ただ、高カリウム血症で運ばれてきた患者さんなどの治療では、早急なカリウムの除去が必要なので、透析液流量を1000~2000ml/hと上げる場合もあります。

CHDFの「補液流量の設定」

補液流量は、限外濾過による中分子物質の除去量に反映します。すなわち、補液流量が多いほど中分子の毒素が除去できるということです。敗血症などの炎症性疾患の場合は、サイトカインを積極的に除去する目的で補液量を多くします。

具体的には、通常のCHDFの補液量は200~300ml/h程度ですが、これを1000~2000ml/hに上げまで上げることもあるようです。(当院では、保険に収まらない補液量にはしませんが・・・)また、それに伴い血液の濃縮リスクが高まるので血流もアップさせます。

補液量を増やすと抗生剤が除去されたり、補液量が保険で収まらなくなることがあります。そこで、最近では、限外濾過でサイトカインを除去するのではなくセプザイリスという吸着型のCHDF膜を使用する施設も増加しています。

CHDFの「除水量(濾液量)」の設定

濾液量は、フィルターから水分を除去して破棄する量です。透析回路内には、透析液ポンプと補液ポンプから液が送られるので、このままでは、患者さんの体重が増えてしまいます。そこで、濾液ポンプから、透析液のポンプ+補液ポンプの補液分を濾液ポンプで除去します。

濾液ポンプ流量=透析液流量+補液流量とします。この設定で、インとアウトが0の為、除水0となります。
除水する場合はさらに
補液ポンプ流量=透析液流量+補液流量+除水速度
と設定します。

長くなりましたが、以上がCHDFの血液ポンプ速度、透析液流量、補液流量、濾液流量の設定方法です。

 

症例別CHDF条件設定

ここからは、上記の内容からさらに応用編で、各疾患別のCHDFの条件設定について紹介します。

症例別CHDF条件設定一覧表

以下の内容は、CRRTポケットマニュアルに搭載されていた資料を参考にして作成しています。

ヘモフィルタ 血流(ml/min) 透析液流量(ml/h) 補液量(ml/h) 濾液量(ml/h) 除水(ml/h) 抗凝固剤
症例1
維持透析患者が心不全・呼吸不全を呈してcrttを必要とした場合
ps膜1.0㎡ 80 600 200 900 100 ナファモスタット
30mg/hr
症例2
カリウムなど小分子量物質の早急な除去が必要な場合
ps膜1.0㎡ 80 2000 200 2300 100 ナファモスタット
30mg/hr
症例3
重症敗血症に対してサイトカイ除去を積極的に行う場合
ps膜1.3㎡ 200 200 1900 2200 100 ナファモスタット
30mg/hr
症例4
重症敗血症に対してサイトカイン除去を積極的に行う場合
pmma膜1.0㎡又は
an69st膜1.0㎡
80 700 200 1000 100 ナファモスタット
30mg/hr
症例5
全身状態不良であり、頻回な膜凝固を繰り返す場合
ps膜1.0㎡ 100 750 50 900 100 ナファモスタット40mg/hr+ヘパリン100単位/hr

(出典 野入英世、花房規男 編著CRRTポケットマニュアル(医歯薬出版株式会社)P19より改変)

症例1~症例5までの設定についてそれぞれ詳しく説明しますね。

うっ血性心不全時のCHDF条件設定(症例1)

症例1では、維持透析患者が心不全・呼吸不全を呈してCHDFを施行する場合の条件です。基本的に、2日に1回4時間HDをするのと、同じ透析量(kt/v)を得るには、CHDFの条件で透析液流量(QD)と補液流量(QS)の合計を900ml/h程度で48時間CHDFを施行する必要があります。

一般的には、QD600ml/h、QS200ml/hが設定されます。診療報酬で認められる補液の量も1日15L~20Lまでとされているので、QDとQSの和の800ml/hがぎりぎり収まるからです。

高カリウム血症時のCHDF条件設定(症例2)

症例2は、高カリウム血症による不整脈などの発生などにより、早急にCHDF施行が必要な場合の設定です。このような場合は、可能であればCHDFでなく通常のHDをした方が早くKを除去することができます。なんらかの理由でHDが施行できない場合はこのような設定をします。

CHDFでの小分子量物質のクリアランスは、QDとQSの和になります。QDの量を2000ml/hと高く設定することにより、小分子量分子のクリアランスを高めて小分子物質の除去を多く行います。K除去目的では、補液はそれほど必要ありません。

敗血症時のCHDF条件設定①(症例3)

症例3は、腸穿孔などにより血液中にエンドトキシンや細菌が混入して敗血症を起こした場合の条件設定です。補液量を2000ml/hと大量にすることで、限外濾過による中分子物質の除去量を増やしてサイトカインの除去を促進しています。

補液量を増やすと血液の濃縮の恐れがあるため、血液流量を200ml/minと多めに取っています。また、膜の大きさを1.3㎡と大きくして中分子量物質の除去量を増やしたり、膜の目詰まりを抑える効果があります。最近では1.8㎡のCRRT用の濾過器も発売されています。

敗血症時のCHDF条件設定②(症例4)

症例4も、症例3と同様に敗血症を起こした場合の条件設定です。この場合は、サイトカインの吸着特性のある膜素材である、PMMA膜を使用しています。膜そのものがサイトカインを吸着するので、QDとQSは控えめに設定しています。PMMA膜は1.8㎡まで販売されています。

※サイトカインの吸着は、セプザイリスも有効です。

凝固亢進時のCHDF条件設定(症例5)

症例5は、全身状態が不良(DICなどを合併)で血液の凝固能が亢進していて膜がすぐに詰まってしまう場合の条件設定です。
凝固を防ぐ目的として、「血流アップ、補液量減少、ヘパリン投与」の3つが行われています。

血流を上げることにより、回路内の血液の流れのスピードを早くして血液を固まりにくくしています。補液を少なくすることも、限外濾過の量を減らすことにより膜の負担を抑える効果があります。

海外では、ナファモスタットが高価なので、ヘパリンが使用できない患者に対しては、ACD液を使ったり、血流を上げて凝固を防止する方法が用いられることが多いです。

 

CHDFのクリアランスについて詳しく

ここからは、おまけの説明です。透析条件(QD、QD、QP)を設定するうえで、以下の内容を理解していれば治療条件の設定方法についてイメージしやすくなります。面倒な場合は、読み飛ばしてください。

クリアランス

CHDFについて条件設定を学ぶにはクリアランスについて理解しておく必要があります。ちなみにクリアランスとは、血液濾過器の毒素の除去性能を表す言葉で、『ある溶質に対してダイアライザに流れた血液のうち何mlが除去できたかを表します。

クリアランスは、次の式で表されます。
[(フィルタ入口濃度-フィルタ出口濃度)/フィルタ入口濃度]×血流(ml/分)

簡単に言えば『ダイアライザに通った血液のうち、毒素が除去された血液の量は何mlかということです

例えば、血流を200mlで透析を行っていて、ダイアライザ―の入り口のBUNの濃度が10mg/dl、ダイアライザの出口のBUN濃度が2mg/dl、だったとします。

その場合のクリアランスは、[(8-2)/8]×200=150mlとなります。すなわち、ダイアライザに流れた200mlのうち150mlの血液はBUNが全て除去されて、残りの50mlの血液はBUNが除去されていないことを表します。

ダイアライザ―のクリアランスは?

一般的によくつかわれるA社のⅣ型の膜面積1.1㎡のダイアライザの添付文章を見てみると以下のように記載されています。

ダイアライザのクリアランス
物質 尿素 クレアチニン リン酸 ビタミンb12
クリアランス(ml) 190 184 173 123

条件は、QB200ml/min、QD500ml/min、

上記のように、小分子の物質のクリアランスは、血流量に近い値になります。

そして透析におけるクリアランスは以下の関係があります。とても大切ですので絶対覚えてください。
『血液透析でのクリアランスは、血液流量(QB)、透析液流量(QD)、総括物質移動面積係数(KoA)の3つのうち、もっとも小さな値を超えない』ということです。

これは、以下のクリアランスを求める計算式を見るとわかると思います。

上の式が血液流量を中心とした式、下の式が透析液流量を含めたクリアランスを求める計算式です。それぞれの計算式で、血流もしくは、透析液流量に除去率をかけるため、クリアランスは血流と透析液流量の値を超えることはありません。

クリアランスの計算式

CBI:血液入口側溶質濃度[mg/dl],CBO:血液出口側溶質濃度[mg/dl],CDO:透析液出口側溶質濃度[mg/dl],QBI:血液入口側流量[ml/min],QDO:透析液出口側流量[ml/min]

さらに詳しくは、『血液浄化療法ハンドブック 2014』にクリアランスの式の求め方についての計算式が紹介されているので興味がありましたら購入してみてください。

総括物質移動面積係数(KoA)とは、総括物質移動係数に膜面積を掛け合わせたものです。総括物質移動係数は、拡散のしやすさを表します。小分子物質の場合のKoAは血流や透析液流量に比べるとかなり大きくなります。よって、小分子物質のクリアランスは、血流量と透析液流量のうち小さい値を超えないと覚えておけばオーケーです。

それでは、いままでの説明が理解できているか確認です。

血流量200ml/minで、透析液流量が100ml/minの場合は、BUNの理論上の最高のクリアランスはいくらになるでしょうか?

答えは簡単ですね。クリアランスは、血流量と透析液流量のうち少ない値を超えないので、この場合は、透析液流量のほうが少ないのでこれを超えることはありません。したがってクリアランスは最高でも100を超えることがありません。

透析室で行われる維持透析では、QB200ml、QD500m/minといったふうに、血流に対して、透析液流量が非常におおいです。したがってカリウム、BUN、リンなどの小分子物質のクリアラランスは血液流量に大きく依存します。

それに対して、CHDFでは、透析液流量がHDと比べるとかなり少ないです。CHDFでは、QBが80~100ml/min、QDは時間当たり300~600ml/h程度に設定するのが一般的です。このQDを1分当たりになおすと、5~10ml/分であり血流に対して透析液流量が非常に少ないことが分かります。

先ほども説明しましたが、透析での溶質のクリアランスは、血流と透析液流量のうち少ないほうの値を超えません。

したがって、CHDFでの小分子物質の除去量はQD(QDとQP)に依存することになります。CHDFでの小分子量物質のクリアランスはQDとQPの和に比例すると覚えておきましょう。

CHDFのまとめ

ながながと説明しましたが、最後まで読んでくれてありがとうございます。

CHDFの条件設定方法は、たくさんの項目があります。患者さんの病態によって、治療条件の設定を工夫することにより治療効果をより高めることができます。

 

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