CHDFの基礎知識とトラブル対応方法を紹介します。

CHDFの基本とトラブル対処

CHDFは、24時間長時間施行します。その間には、様々な警報、トラブルが発生すると思います。

それらを、適切に対処するには、『各警報の意味を理解すること』および『各圧力計の値から回路内の状態を把握する知識』が必要です。今回は、CHDF中のトラブルを一人で解決できるようにCHDFの基礎知識と、警報・トラブル対処方法について紹介します。CHDFの条件設定については、「こちら」にまとめていますので参照ください。

▼目次

  1. まずCHDFとは何なのか?
  2. CHDFの回路図
  3. CHDFのポンプと圧力の説明
  4. CHDF装置の安全機能
  5. CHDF中の観察項目
  6. CHDF中の警報対処方法
  7. CHDF中のトラブル対処方法
  8. まとめ

まずCHDFとは何なのか?

CHDFとは、HDF(血液透析ろ過)の長時間マイルドバージョンです。CHDFのCは「continuous(連続)」という意味があります。

透析室で行っているような通常の透析では、4~5時間に効率よく毒素・水分を除去します。その為、急激に体内の電解質濃度が変化するため体に大きな負担がかかります。

その為、全身麻酔のOP後や、心不全、重篤な感染症などで体が弱っているときには、通常のHDやHDFでは、体がもちません。そこで、そのような患者さんにはCHDFを施行します。CHDFでは、できるだけ体に負担がかかりにくいように毒素の除去速度、除水量などをゆっくりと行います。ただゆっくりすると毒素の除去量は効率が悪くなります。その為、連続的に継続します。

他にも、CHDFでは、体の負担を減らすために、透析条件(血流、透析液流量、除水速度)を緩やかにするだけでなく、血液ろ過器も小さく、回路内のプライミングボリュームも少なくして、循環器に与える負担をできるだけ小さくなるように考慮されています。

CHDFの回路図

基本的には、CHDFの回路は、HDFの回路の流れとおなじです。透析液が配管から流れているのではなく、置換液をポンプを使って流しているだけの違いです。
CHDFの回路は簡略化すると下のようになります。
CHDF回路
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それでは、以下より詳細を説明しますね。

CHDFのポンプと圧力の説明

ポンプ

ポンプは血液ポンプ、透析液ポンプ、補液ポンプ、濾液ポンプの4つが使われます。それぞれの働きを説明します。

血液ポンプ

血液ポンプは、患者さんからの血液を採り出して透析回路内に血液を採りこむ仕事をします。ここで血流量を決めます。通常は、50~100ml/min程度に設定します。

透析液ポンプ

透析液ポンプは、血液濾過器に透析液を流す働きがあります。ここで透析液流量を設定します。通常は、200~600ml/h程度に設定します。CHDFでは、透析液流量に小分子物質の除去量が大きく影響します。

補液ポンプ

補液ポンプは、置換液を血液回路内に入れる働きをします。ここで補液流量を設定します。CHDFでは、後希釈と言って、フィルターより後の回路から補液を入れます。入れた分の補液は、濾液ポンプによりすべて除水(限外濾過)して廃棄されます。補液量を増やすほど、限外濾過の量が増え中分子量サイズの毒素除去量が増えます。通常は、300~600ml/h程度に設定します。

敗血症患者や感染症患者に、抗生剤を点滴している場合は、透析しすぎるとそれらも除去されてしまうという心配もあります。

濾液ポンプ

濾液ポンプは、フィルターから水分を除去する働きをします。ここで、除水量の設定をします。透析回路には、透析液ポンプと補液ポンプから液が入ります。したがって、濾液量から置換液と透析液の量を引いた値が除水量となります。除水=濾液-(補液+透析液)となります。

圧力

圧力は回路の、それぞれのチャンバーの上にある圧力ラインで測定しています。CHDFでは、基本的に『動脈圧、静脈圧、濾過圧、TMP』を監視しています。毎時のチェックで圧力を記録していると思いますが、それぞれの圧力の意味を分かっているでしょうか?

これらの圧力が経時的にどう変化しているかを観察することが非常に大切です。

動脈圧

動脈圧は、血液を患者さんから取り出して一番初めに通る動脈チャンバーの動脈圧ラインで測定しています。この圧力は、血液ポンプ出口から血液濾過器入口までの圧力を反映します。

動脈圧からは、血液濾過器の中空糸の血液側が詰まっていないかを判定したり、血液が患者さんから十分に取れているかを判断する指標になります。

CHDFを長時間行っていて、血液濾過器の血液側の通り道が血液で固まって詰まってくると、血液が流れにくくなり、フィルターの入り口の抵抗が増えて動脈圧は徐々に上昇します。完全に、フィルターが詰まると血液を患者さんに返すことができなくなり、血液を回路ごと破棄する羽目になります。動脈圧が上昇してきて、回路内の凝固が考えられる場合は早めに返血をする必要があります。目安としては、QB100ml/minで、180~200mmHgを超えるようでしたら、返血します。

ただ、血液濾過器が詰まっていなくても、動脈圧が上昇することがあります。静脈圧が上昇してもそれに影響して動脈圧が上昇する場合です。見分け方としては、動脈圧と静脈圧が両方とも上昇している場合は、静脈側に原因がある場合が多いです。

動脈圧だけが極端に上昇した場合は、血液濾過器が凝固している可能性が高いです。確実な確認方法としては、脱血側をクランプして回路内に生食を100ml程度流してみると、中空糸の凝固の様子を確認することができます。確認する場合はもちろん医師に確認して行います。
動脈圧が下がる場合は、脱血不良で血液が採れなくなった場合です。脱血不良では、動脈圧・静脈圧の両方が低下します。

静脈圧

静脈圧は、静脈チャンバーの静脈圧ラインで測定しています。この圧力は、血液濾過器の出口から患者の返結部分(穿刺部位もしくはダブルルーメン)までの圧力を反映します。静脈圧は、脱血不良やカテーテルが患者さんの血管にきちんと入っていることを判断する基準となります。

具体的には、脱血不良になり血液が血液濾過器の出口から流れてくる量が少なくなると、静脈圧は下がります。また、抜針や回路外れなどにより、返血側の回路が患者さんから外れたりするとフィルター出口の抵抗が下がるので静脈圧が下がります。

逆に、静脈圧が上がるのは、返血側のカテーテルに血液の塊が詰まったり、カテーテルの返血側先端が奇麗に血管に入っていない場合(血管壁に当たっている場合など)、静脈チャンバー内が血栓などで固まってきた場合などです。

濾過圧

濾過圧は、血液濾過器の透析液側の圧力を反映します。これは、血液濾過器の中空糸の側孔の目詰まりを判断する指標となります。

透析では、中空糸の半透膜を通して水分やイオンなどを除去します。そして、水分の除去は、半透膜を介して透析液側に陰圧をかけることによる圧力差で行っています。これが、透析時間が長くなると、半透膜や側孔に血液中のたんぱく質の付着物などがついて側孔が塞がってきます。こうなると装置は除水するのにさらに大きな陰圧をかけないとならなくなります。

まあ、この説明はちょっとわかりにくいと思いますので、『濾過圧の低下はフィルターの目詰まり・劣化』と認識していただければ構いません。

TMP(膜間圧力差)

TMPとは、日本語で膜間圧力差といいます。具体的には、血液側と透析液側の圧力の差を言います。簡単な式で表すと『TMP=血液側の圧力-透析液側の圧力』となります。TMPから、何が分かるかといいますと、血液濾過器の総合的な劣化状態が分かります。

上記しましたが、CHDFを長時間施行していくと、血液濾過器の血液側が詰まってきたり、静脈チャンバー内に血栓の塊ができたりして、血液側の圧力(動脈圧・静脈圧)が上昇します。逆に、CHDFを長くすると、透析液側の圧力(濾過圧)は低下します。

よって、CHDFを長時間行っていると、TMP=血液側の圧力(大↑)-透析液側の圧力(小↓)となり、TMPは上昇します。TMPが上昇すると、血液側と透析液側の圧力差が大きくなるということなので、圧力の高い血液側から圧力の低い透析液側に、物質が移動しやすくなります。そうなると、血液中のアルブミンなどの大切な物質も除去されるおそれがあります。TMPの上昇も透析回路交換を判断する指標として使用します。

透析装置の安全機能

CHDFの装置には、透析中の異変や異常を検知すると警報を発して通知してくれる機能があります。

気泡検知器

気泡などの空気が血管内に入ると空気塞栓といって、空気により血管が詰まり命にかかわります。一般的に20ccの空気を血管内に送るとほぼ死亡すると言われています。また、1cc程でも、肺の血管に入って咳込んだりなどの症状が出ます。
よって、患者さんに血液を返す最終ラインには、気泡を検知すると回路を遮断して警報音を鳴らす機能があります。

漏血センサー

中空糸のリークや、血液の溶血などによりフィルターから、透析液側に血液が混じった場合は漏血警報が鳴ります。

内蔵バッテリー

CHDFを行う装置には、停電時の為に内蔵バッテリーが入っています。ただ、バッテリーは寿命があるので古い機械では、バッテリーが弱ってバッテリーでは稼働しなかったりすることがあるので定期的にメンテナンスすることが大切です。

CHDF中の観察項目

ここまでに、CHDFについての基礎知識を紹介しました。ここからは、実際のCHDF中の具体的な観察項目やトラブル時の具体的な対処方法について紹介します。

CHDF中の患者側の観察項目

血圧

CHDF中に患者観察で注意するポイントは、血圧低下です。CHDFでは、除水スピードが緩やかであり、回路内のボリュームも少ない為、通常の透析と比較すると循環動態に与える影響は少ないです。

ただし、CHDFが適応される患者の場合、重症患者が多い為、血圧の変動をこまめに確認することが必要です。CHDF施行中では、Aラインをとって動脈圧を連続的にモニタリングすると思います。原疾患や患者により異なりますが、収縮期血圧が60~80mmHg以下になると、CHDFの継続は厳しくなります。昇圧剤の投与や除水速度をうまくコントロールして、血圧を最低限以上に保つ必要があります。急な血圧低下や、血圧が一定に保てない場合は早めにDrに報告して指示を求めます。

抜針・回路離脱

CHDFでは、高血流で血液を循環させています。もし、血液回路が外れると数分間で大量出血で患者さんを死亡させてしまいます。特に、外れやすい部位としてはCVCカテーテルと透析回路の接続部です。ここが、しっかり接続されていることや、患者さんが不穏などにより自分で外してしまったりしないように注意しましょう。

 

血液データ

CHDFの目的は、血液中の電解質の訂正、アシドーシスの訂正、除水が主になります。CHDFによって血液中の電解質が訂正されているかも採血により確認する必要があります。

CHDF中の装置側の観察項目

透析装置側で一番注意しなければならないのは、『血液濾過器が目詰まりを起こしたり、凝固して詰まってきていないか』を注意深く確認することです。特に、多臓器不全やDICなどを合併した場合は、体内での凝固が亢進して透析回路がすぐに凝固してCHDF回路をたびたび交換しなければならないことがあります。

回路の凝固に気付かなかったり、対応が遅れると、回路内や血液濾過器が詰まって、返血ができなくなり回路ごと血液を破棄しなければならくなってしまいます。回路内が凝固していないかを観察するポイントとしては、『目視』と『装置の各圧力の確認』です。

まず、目視についてですが透析回路内で凝固を起こしやすい部分は、血液が滞留しやすい、動脈チャンバ・静脈チャンバ・血液濾過器になります。この部分を定期的に目視で確認します。透析時間とともにチャンバ内に塊ができたり、するとチャンバがどす黒くなったり、チャンバの液面を下げると塊が目視でも見え確認することができます。血液濾過器については、凝固してくると、凝固した中空糸に血液が流れなくなり、白い線やが見えたりします。

圧力によっても凝固を確認することができます。凝固している部位によって圧力が上がったり、下がったりしますが、基本的には凝固してくると、動脈圧・静脈圧がじわじわと上昇します。そして、濾過圧については低下していきます。

同じ透析条件なのに、圧力が急激または、継続的に変化している場合は注意が必要です。

CHDF中の警報対処方法

動脈圧警報の対処

動脈圧は、患者から血液を取り出してすぐの動脈チャンバで測定しています。動脈圧が上昇する原因としては、動脈圧測定部以降の凝固や閉塞(血液濾過器の凝固、静脈ラインの閉塞など)、動脈圧が低下する原因は脱血不良です。それぞれの原因を確認して対処したのち、治療を再開します。血液濾過器の凝固が考えられる場合は、動脈圧が200mmhgに近くなったら速やかに返血する必要があります。

静脈圧警報の対処

静脈圧は、血液濾過器の出口にある静脈圧チャンバで測定しています。静脈圧が上昇する原因としては、静脈圧ライン以降の閉塞(静脈チャンバ内の凝固、ダブルルーメンの閉塞、患者の体動による一過性の上昇)です。静脈圧の低下は、脱血不良や回路離脱が原因となります。

脱血不良警報の対処

脱血不良の原因は、カテーテルの先端が血管に張り付いたりして血液が取れなかったり、患者の血管内脱水により循環血液量が減少している場合が考えられます。内頸にカテーテルが挿入されている場合は、患者の頭の向きを変えてみて、脱血が改善されるかシリンジで確認します。鼠径にダブルルーメンが入っている場合は、バブルルーメンの位置を調整して、シリンジで確認して脱血ができる位置に調整します。ダブルルーメンが糸で縫い付けて固定されて調整できない場合は、Drに連絡して調整してもらいます。

脱血不良のまま、血液ポンプを止めておくと回路内が凝固するので、Drが来るまでは、患者から回路を外して、動脈ラインと静脈ラインをつなげて、空回しさせておく必要があります。

TMP警報の対処

TMPとは、日本語で膜間圧力差のことをいいます。具体的には、血液濾過器の血液側と透析液側の圧力の差を表します。

TMP=血液側の圧力-透析液側の圧力

血液濾過器の凝固が進んでくると血液側の圧力が上がり、透析液側の圧力が下がります。すなわち、TMPは血液濾過器が凝固してくると上昇します。TMPからは、血液濾過器の凝固や膜の劣化状態がわかります。

濾過圧警報の対処

濾過圧は、血液濾過器の透析液出口で測定されています。これは、透析濾過機の透析液側の圧力を表します。血液濾過器が凝固してくると血液側からの圧力が透析液側に伝わりにくくなり、濾過圧は下がります。

漏血警報

漏血警報は、透析液側に血液が漏れ出たときに発生します。通常は、透析液の戻り口で監視しています。原因としては、中空糸のリークにより血液が透析液側に漏れ出た場合や、血球の溶血により透析液側に血液が漏れた場合、漏血センサの汚れにより発生することなどあります。
濾液側が目視で確認できるほど漏血している場合は、中空糸がリークしているので直ちに治療を中止して、医師に報告して返血・回路交換します。

目視では分からない場合は、濾液を潜血試験紙などで調べて実際に血液が漏れているか確認します。潜血反応がない場合は、誤警報の可能性があります。漏血センサーを掃除して、漏血センサの校正をして治療再開します。

CHDF中のトラブル対処方法

脱血できなくなったら

ダブルルーメンからの脱血ができなくなった場合は、回路をから回しにさせて、ダブルルーメンを調整して、シリンジで確認して脱血できる状態に調整します。

静脈圧・動脈圧が徐々に上昇

静脈圧・動脈圧が徐々に上昇してきた場合は、回路内の凝固が考えられます。凝固がひどくなると返血もできなくなるので早めに返血する必要があります。ただ、カテーテルの位置の位置が悪い為、圧力が上昇する場合があるのでそちらの確認を先にする必要があります。

患者の血圧が下がったら

患者の血圧が急変したら、Drに連絡して支持を仰ぎます。

まとめ

CHDF中の看護で、看護師がよく遭遇するのは、脱血不良と静脈圧・動脈圧の上昇だと思います。施設によって対処方法や医師の指示も異なるとおもうので、それぞれの施設の臨床工学技士やDrに確認して疑問点や対処方法について確認することが大切です。