ダイアライザの構造と種類を分かりやすく紹介します

血液透析に使用されるダイアライザ(人工腎臓)にはたくさんの種類があります。看護師さんなどから『どれも同じに見える』と言われることがありますが、大きさ、膜の素材、毒素の除去量、生体的合成などなど、それぞれ全然違います。

今回は、ダイアライザーにはどのような種類があるか?どのように使い分けるのかについて紹介します。患者さんは自分はどのようなのを使っているのか。スタッフは、どのように患者さんに使い分ければいいのかについて参考になれば幸いです。

ダイアライザとは

ダイアライザの構造と原理


ダイアライザは血液透析において腎臓の役割を行う機器です。プラスチックの筒に、中空糸というストロー状ものが3000~15000本程入っています。透析療法では、それぞれの中空糸の中に血液を流します。そして、中空糸の外側に透析液を流します。

中空糸の膜を介して拡散と限外濾過という原理で、血液中の不要物質(尿素、カリウム、リンなど)は透析液側に除去され、血液に必要な物質(重炭酸など)は透析液から血液側に補充されます。

ダイアライザの値段と償還価格

病院が業者さんから購入するダイアライザの値段は、地域や施設、メーカーにより異なります。だいたい1500円前後くらいでしょうか?償還価格(材料費)というのは、ダイアライザを使うことで病院が取得できる点数(国からもらうお金)です。したがって、償還価格と納入価の差額が病院の収益になります。

償還価格は、ダイアライザの分類により異なり、中空糸タイプだと1530~1740点です。(参照:透析材料の償還価格)これは2年ごとの診療報酬改定で変化しますがどんどん安くなり病院経営を圧迫しているのが現状です。

ダイアライザの種類

ダイアライザの膜面積

まずぱっと見て誰にでもわかるのが、患者さんごとでダイアライザーの大きさが違うことです。ダイアライザが大きい分、中空糸の本数と長さが長くなり、中空糸全体での膜表面積が大きくなります。

膜面積が大きいと、β2ミクログロブリンなど中分子領域の物質の除去量が増えます。膜の面積が増える分、膜の穴が増えるためだと思います。

ちなみに膜の大きさを大きくするとBUN,K,Pなど分子量の小さな毒素の除去量もわずかに増えますがそれほど変化はありません。(ワンサイズアップしても1%か2%くらいしかクリアランスは増えません。添付文章に記載されています。)

けっこう勘違いしているDrも多いですが、小分子の除去量を増やすには、血流を上げるもしくは透析時間を延ばすのが正しい方法です。

あと、大きな膜を使う場合の弊害としてはプライミングボリューム(PV)が増えるという点です。1.1m2のダイアライザのPVは約70ml程度、2.1m2では、130ml程です。小児透析の場合は、血液回路とダイアライザの総PVが体重の10%以内に設定するように推奨されています。(参照:小児透析の方法まとめ

成人の場合は、よほど体格が小さい患者でなければそれほど気にしなくてよいと思います。

ダイアライザの膜素材

膜の素材は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系の合成高分子膜を使用しているダイアライザーが多いと思います。透水性が良く、生体適合性もまあまあで、血液が固まりにくい特徴があります。

ただ、ポリスルホン系の膜は親水化剤(水と馴染みやすくする薬剤)としてPVP(ポリビニルピロリドン)という物質が配合されています。PVPによる影響によりたまに、血圧低下・血小板減少・嘔吐などの症状を訴え透析が困難になる患者さんを見かけることがあります。30人に1人くらいかな?

そのような患者さんの場合は、PVPが含まれていない膜素材のダイアライザーを使用してみると症状が改善することがあります。ニプロのFA-ecoシリーズ(CTA膜)、ファインフラックス(セルローストリアセテート膜[CTA膜])、日機装のPEPA膜(ポリエステル系ポリマーアロイ)の膜など、PVPフリーの膜に変更すると症状が良くなることがあります。

〔参照〕

 

HD用とHDF用の膜

HD(血液透析)とHDF(血液透析ろ過)の膜でもそれぞれ特徴が異なります。また、HDFを施行する場合は専用の膜を使用しないとHDFの診療報酬を得ることができません。

HDF用の膜では、HDと比較してたくさんの限外濾過(除水)が行われるため透水性の良い(水が通りやすい)膜構造をしています。透水性が悪いと膜が詰まってTMPが上昇してしまうからです。

中分子タンパク除去率の違い

これも透析の膜を選ぶ上でとても大切な特徴です。中空糸膜には、ストロー状の膜の側面にも小さな穴がたくさん開いています。この穴の大きさが、膜の種類により異なります。この穴が大きいと、β2‐ミクログロブリンやα1‐ミクログロブリンなどの中分子量タンパクの除去がたくさんできます。

ダイアライザ側穴

逆に、この穴が小さいとそれらの除去量が少なくなってしまいます。できれば、中分子量の毒素もたくさん除去したほうが生命予後が良かったり、痒み・イライラなど不定愁訴の改善に寄与するといわれています。ただ、大きい毒素を抜くと、アルブミンなどの栄養素の除去も増えてくるので患者さんの栄養状態を観察しながら調整する必要があります。

参照:オンラインHDFの補液量と治療効果(掻痒感、関節痛、痺れを改善するための条件)

ダイアライザの形状の違い

一般的に透析室でよく目にするのは、中空糸型ダイアライザです。この形状以外にも、バクスター社の積層型のダイアライザも診療報酬で認められています。

h12(http://www.baxter.co.jp/images/medical/products/hd/h12.jpgより)

この膜は、AN69という膜を使用していて、炎症物質などの吸着効果があるといわれています。注意点は、陰性電荷をを含む膜なのでACE阻害薬と併用すると血中ブラジキニン濃度が上昇してアナフィラキシーショックを起こします。また、抗凝固剤のフサンも吸着しますので併用には注意が必要です。

プライミング方法が特殊で、ちょっと手間がかかりますが償還価格は大きいですね。
ぐうたら臨床工学技士のしがない日々でも紹介されていました。

ダイアライザの選び方

透析導入時のダイアライザの選び方

透析導入時は、小さめのサイズのダイアライザを選びます。これは、不均衡症候群を防ぐ目的です。不均衡症候群は、透析導入時に発生しやすい合併症で、原因は脳とその他の体内の浸透圧差により発生します。脳は、体内と比べて尿素などの毒素が抜けにくい為、その他の部分と浸透圧差が生じます。それにより透析後に脳に水分が移動してしまい、吐気や頭痛など症状が現れます。

予防するためには、透析導入時はゆっくりと毒素を抜くことです。透析時間も2~3時間、膜面積も小さく、血流少なくします。

導入患者以外のダイアライザの選び方

対象の患者さんによってもダイアライザの選択方法が異なります。例えば食事もしっかりとれている比較的若年者であれば、長期透析合併症(アミロイドーシス)予防を意識した治療が必要です。アミロイドの原因といわれる、β2ミクログロブリンなど中分子タンパクの除去量の多いダイアライザを選択します。

逆に、超高齢者などであれば長期合併症にそれほど気を使う必要はありません。他に、食事量が少なく血中のアルブミン値が低い患者さんなどは、アルブミンの漏出量が少なく生体適合性の良いマイルドなダイアライザを使うといいと思います。この辺りは、施設のDrの考え方や方針により決められます。

まとめ

各社から沢山のダイアライザーが開発されています。発売後は、透析関連の学会で臨床での性能評価や使用報告などたくさん出されています。

よさそうだと思ったものが見つかりましたら、メーカーからサンプルなどをいただいて性能評価してどんどん取り入れてみてはどうでしょうか


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6 件のコメント

  • 初めまして。yoshua (ヨシュア)と申します。ダイアライザーの膜面積はどのように決めるのでしょうか?私は体重62.7kgで1.8㎡の膜を使っています。2.1を使いたいのですが、医者に拒否され
    ました。β2mgの透析前の値は26です。5時間QB230です。宜しくお願いします。

    • 初めまして。

      β2ミクログロブリンの透析前基準値は、25~30mg/Lですので、基準値以内に収まっていますね。1.8㎡と2.1の膜サイズの違いでは、それほど性能差がないのでどっちでも良いというのが個人的意見です。医師が拒否した理由はよくわかりませんが、膜が大きいと血液の充填量が少し増えるの血圧が下がると考える医師もいますねー。それほど影響ないと思いますが。

      今の検査データで十分なので変更する必要がないと判断したのでしょうかね。

  • 初めまして。
    透析室勤務になりました。
    いきなりの質問で申し訳ありませんが、ダイアライザのプライミングボリュームはおよそ何mlぐらいでしょうか?
    文献を探しても見つからず困っています。

    • はじめまして

      膜平米によってボリュームは異なりますが、2.1m2 の膜で100mlくらいです。
      ダイアライザーの添付文章に記載されていますよ。
      参照:http://www.info.pmda.go.jp/ygo/pack/530100/22400BZX00195000_A_01_01/

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