ドライウェイト(DW)設定方法

ドライウェイトの設定について

今回は、透析患者さんのドライウェイトの設定方法を説明します。ドライウェイトの設定は透析治療において非常に重要です。透析患者と長い時間を接する看護師、臨床工学技士だからこそ、医師が気づかない変化に気づけることもあります。

今回は、最低限知ってもらいたい知識をまとめました。しっかり覚えてDrに助言できるようにしたいですね。

SPONSORED LINK

ドライウェイト(DW)とは

ドライウェイトとは、透析患者さんの適正な水分量の時の体重のことです。透析医学会のガイドラインでは、「体液量が適正で、透析中に過度の血圧低下を生ずることなく、かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」と記されています。

人間の体は55%~60%は水分でできています。末期腎不全の患者さんの場合、尿が排出されない為、飲んだ水分がそのまま体に溜まります。口から飲んだ水分は、大腸の毛細血管から吸収され、肝臓を通って、心臓に運ばれ全身の組織に水分が分散します。

その為、体に含まれる水分の割合が多くなりすぎてしまいまい体中がむくみます。これを、透析により水を抜いて適正な体の水分量にします。

ドライウェイト(DW)の重要性

それぞれの患者のドライウェイトを適正に設定することは非常に大切です。なぜなら、ドライウェイトの設定方法は生命予後に関与するからです。

透析中に、除水すると血管内の水分が減少します。このままでは、血液循環量が低下して血圧低下してしまう為、体内では血圧を上げるために2つの反応がおこります。

ひとつは、心血管系の代償であり脈拍数を増大させたり、末梢動脈を収縮させて血圧、心拍出量を維持します。もう一つは、プラズマリフィリングといって、除水によって減少した血液を補うために血管内に細胞外液が移動します。これらの2つの作用により透析による除水から血圧を維持しています。

ただし、ドライウェイトが適切でない場合はこれらの代償が上手くいきにくくなります。例えば、ドライウェイトがきつすぎる(低すぎる)場合は、透析中に血圧低下がしやすくなります。

この理由は、プラズマリフィリングのスピードが下がるからです。ドライウェイトがきつすぎる場合というのは、すなわち細胞外液が少ない(不足している)状態です。その為、除水によるスピードにプラズマリフィリングが追い付かない為、透析時間の経過とともに循環血液量の低下に体が対処できなくなると急激な血圧低下を引き起こします。

透析中に、血圧が下がると引きつり、嘔吐、失神など急性の反応が出現することがあります。長期的にも、透析中に頻繁に血圧低下を引き起こす患者は、それ以外の患者と比べて予後が悪い(死亡リスクが高い)といわれています。

逆に、ドライウェイトが甘すぎる(高すぎる)のもよくありません。高いと、循環血液量が増えることにより高血圧、心不全、肺水腫などの症状が現れます。特に透析患者の高血圧の原因の80%は、ドライウェイトの過剰によるものと言われたりもします。長期的にも、心肥大や脳血管障害、動脈硬化のリスクが増大などなど、DWは高すぎても、低すぎてもだめであり非常に難しいのです。

ドライウェイト(DW)の決め方

DWの決定は、以下の検査項目や、臨床症状を見て決定します。

心胸比とドライウェイトの関係

心胸比は、心臓の大きさを表す指標です。正確には、心胸比ではなく、心胸郭比と言います。心胸比とは、胸郭の横幅のうち、心臓の横幅が占める割合が何パーセントかを表したものです。

維持透析患者さんでは、月に1回、胸部エックス線により、心胸比を測定します。心胸比の正常値は個人差(疾患などによっても増減する)がありますが、透析後の心胸比で、男性で50%以下、女性で55%以下が目安です。

体に水分が過剰になると、心臓に水が溜まり心臓が大きくなり、胸郭に占める心臓の割合が大きくなり心胸比が大きくなります。逆に体の水分が少なくなりすぎると、心臓が小さくなり心胸比が低くなります。心胸比が小さくなりすぎた場合は、ドライウェイトをあげる、心胸比が大きくなりすぎたら下げる必要があります。

心胸比

胸部エックス線検査によるドライウェイトの設定

胸部エックス線検査では、心胸比の測定の他に、胸に異常がないかも確認します。肺がんになれば、影が映るなど良く耳にしますよね。

他にも、体に水分が過剰になると、血管から肺に水が入ることがあります。これを肺水腫といいます。肺に水が入ると、胸部エックス線写真で、肺門部を中心に、チョウが羽を広げたような白い影が映ります。これをバタフライシャドウといいます。

他にも、肺水腫では、葉間胸水、肺紋理増強、Kerley’s B line、などの画像。もしくは、肋骨横隔膜角の鈍化などを注意して観察する必要があります。

浮腫・むくみ

透析患者さんは、水分の除去ができない為、顔(まぶた)や足が水分でむくむことがあります。ドライウェイトが適正に設定されていれば、透析後などはむくみはとれます。

透析後にも関わらず、顔や足がむくむようであれば、体にまだまだ余分な水分が溜まっている可能性がありますので、体重を下げる必要があります。

足のむくみの確認は、足首の4~5cm上を指で押さえて確認します。通常この部分はほとんど肉がないので抑えてもへこまず、骨が確認できますが、指で押さえたときに弾力がありへこむ場合は、水が溜まっています。

血圧とドライウェイトの関係

血圧は、さまざまな要因で上がったり、下がったりするので、一概に言えませんが、体に水分が過剰になっている状態では、心臓がパンパンになり血圧が上昇する傾向になり、体の水分が少なすぎると血圧が低くなります。

収縮期の血圧(最高血圧)が200mmHg近い場合は、水分の過剰も疑う必要があります。その他に、透析中の血圧の変化も注意してもらいたいところです。

通常は、血液透析では水分を血管から抜くので、透析時間が経過するに従って、血圧が徐々に低下するのが一般的です。それなのに、透析中にほとんど血圧が変化なかったり、逆に、血圧が上昇してきたりする患者さんは、まだまだ体に水分が溜まっている疑いがあるので、ドライウェイトを下げることが必要かもしれません。

他には、透析中にそれほど多く除水をしていないのに血圧が下がる場合は、体の水分が少なすぎるかもしれませんので、ドライウェイトを上げる必要があります。体の、水分量の変化は、クリットラインモニターなどのBV計などで測定するとよくわかります。ちなみに収縮期血圧120~160mmHgで管理すると最も生命予後がいいそうです。

HANP(ハンプ)とドライウェイトの関係

HANPとは、正式名称は、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドと言います。HANPは、心臓から分泌されるホルモンで、腎臓に働きかけて尿を出すのを促進する働きがあります。

透析患者さんでも、心臓から分泌されるホルモンなので正常に分泌されます。これは、体に水分が過剰になり、心臓が膨らむと分泌が多くなりますのでドライウェイトを決める(体液過剰の)指標になります。

HANPは、月1回まで保険適応せれています。正常値は、50pg/ml前後です。100pg/mlを超える場合は、体に水分が過剰と判断できます。HANPは、体液過剰時に増大するのみなので、低すぎるかと言って、脱水状態であるという判断には使えません。

下大静脈(IVC)径とドライウェイトの関係

IVCは、透析後に測定します。呼気時の測定値(IVCe)及び、吸気(IVCi)と呼気時の変化率(CI)により判定します。IVCeの基準値は、8~11mm/m2、CIの基準値は0.4~0.75です。

CI=(IVCe-IVCi)/IVCe
IVCi:吸気時最小径
IVCe:呼気時最大径
CI:虚脱係数

吸気時は、胸腔内圧が低下してIVC径は低下します。呼気時は、胸腔内圧が上昇するのでIVC径は増大します。この変化率(CI)は、ドライウェイトがきつい場合は、変化率が増大して、ドライウェイトが甘い場合は変化率は小さくなります。

PWIとドライウェイトの関係

透析前後の血清総蛋白濃度から、除水による循環血液の濃縮度合いを測定する方法。具体的には、除水によって体重1%減少したときの循環血漿量変化が求められる。計算方法は、以下になります。

PWIの式

PWI<2で、DWが甘い、PWI>4で、ドライウェイトがきついという目安になっています。簡単に計算できるので、気になる患者さんがいたら計算してみるといいかもしれません。

ドライウェイトの変動しやすいとき

季節の変わり目

季節によるDWの変動は、結構大きいです。夏バテによる食欲不振による体重減少だったり、過ごしやすくなる秋・冬には食事量の増加による体重増加などが起こりやすいです。

体調不良時

インフルエンザ、肺炎、風邪などの感染症になると、食事量減少や異化亢進などにより体重が減少しやすくなります。他にも、骨折などで長期入院したりなどで生活環境が変化したとこも体重が変動しやすくなるので注意深く観察します。

ドライウェイト設定についてまとめ

心胸比は、以上の検査値や臨床症状などを総合的に見て決定ます。1つの検査値にとらわれず、複数の要因を参考に総合的に判断します。

ドライウェイトは、日々変化します。特に、手術したり、合併症などで入院して、食事量が下がった時は注意です。ドライウェイトが不正確であると、心不全や脳出血、シャント閉塞など重篤な合併症を引き起こすリスクが上昇します。

患者さん一人一人をよく観察して、適正であるかを判断して、変更したほうがいいと考えた場合は、すばやくDrに報告して変更することが大切と思います。

(参考文献)
賀来佳男,田部井薫:透析処方の実際③ドライウエイトの設定法,Clinical Engineering102016Vol No10:824-833

スポンサードリンク