透析患者の食塩と水分管理方法を説明します


透析患者さんの食事管理の最重要項目は、塩分・水分管理とカリウム制限です。これらは、管理が悪いと、死に直結します。例えば、水分過剰による心不全や、高カリウム血漿による心停止など重症な病態につながります。

年間、数人はこれらの管理が悪く夜間に救急車で集中治療室に搬送されて透析を行うことがあります。私の勤務する病院の透析患者さんは少ないのですが、近隣の透析クリニックの患者さんがちょくちょく運ばれてきます。おそらく、スタッフやDrの指導が悪いのだと思いますが。

今回は、塩分・水分管理について、食事療法と、塩分を過剰摂取するとどのような危険性があるのかをまとめました。

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塩分と水分の関係

水分と塩分(NaCl)の間には、綿密な関係があり、これらの関係は切っても切れない関係にあります。食塩を多く採ると、喉が渇きます。逆に、水分をたくさん飲むと塩辛いものを食べたくなります。

これは、生命活動を維持する為には、血液中のナトリウム(Na)濃度を135~145mEq/Lに保つ必要があるからです。(下に低Na血症と高Na血症の症状を表にまとめました。)その為、食塩を摂取すると血液中のNa濃度が上がるため、Na濃度を下げようと水を飲んで薄めようとしてしまいます。
逆に、水をたくさん飲むと血液中のNa濃度が低下します。そこで、塩辛いものが欲しくなります。これは、体が自然とそうなってしまうようにできているので、我慢することはできません。

よって、水分量を制限する為には食塩を制限することが必要です。通常の人の1日の塩分摂取量の目安は、10~12gとされていますが、透析患者の場合6gと厳しい制限がされます。また、1日の飲水量は500ml程度とされています。

透析患者のNa濃度異常の症状
低Na血症
(130meq/l以下)
高Na血症
(150meq/l以上)
虚脱感、疲労感
精神錯乱、頭痛、悪心
痙攣、昏睡
口渇、頭痛
痙攣、昏睡

透析患者の水分の出入りについて

水分摂取

水分の摂取は、水を飲む以外にも、ご飯や、肉など食物にも含まれています。特に、野菜や果物は、90%が水分です。

水分排出

透析患者さんは、尿による水分の排出がありません。尿以外の水分排泄は、呼気に含まれる水分や、汗による水分排泄(不感排泄)と便に含まれる水分です。不感排泄は、800ml便に含まれる水分は100ml程度なので、透析患者が1日に排泄できる水分量は、900ml程度です。

体内の水分が過剰になる危険

食事によって、摂取された水分は大腸から血管内に吸収されます。吸収された水分は、各組織にも分散しますが、水分が過剰になると血管内(心臓内)の水分量が増加します。心臓は、膨らんで血液を貯めて、縮んで血液を心臓から全身に送り出しています。

心臓や血管内に水分が溜まると、心臓がパンパンに膨れて、心臓が縮むことができにくくなり、全身の血液の流れが悪くなり、手足がむくみます(浮腫)。また、血管内の水分が過剰になると、肺にも水が入ります。肺の肺胞という部分で二酸化炭素と酸素を交換していますが、そこに水が溜まると、呼吸ができなくなり息苦しくなり大変危険です。

他には、水分量が多くなると透析中に沢山水を除去する必要があります。体重増加が多く、たくさんの水を抜くと、透析中に血圧低下を起こして、透析を途中で中止しなければならなくなる場合があります。

それに、急激に血液中から水分を除去すると血液が濃くなります。血液が濃くなると血管内が詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓などの塞栓疾患の発症する危険性が上がります。

また、長期的に体液が過剰な状態が続くと、心肥大といって、心臓の筋肉が伸びきってしまいます。それにより、心臓のポンプ作用による血液の拍出機能が低下してしまいます。こうなると、治療することは困難です。心臓の拍出量が低下すると血圧が低下しやすくなり、これまた透析をすること自体が困難になってしまいます。

食物中に含まれる食塩

各調味料に含まれる食塩量は以下のようになっています。
ちなみに小さじ1杯が5mlです。

食塩1gが含まれる量
しょうゆ 5ml
減塩しょうゆ 10ml
とんかつソース 20ml
ケチャップ 30ml
マヨネーズ 40ml

加工食品には、袋の裏に成分表示があるので確認してください。

食塩・水分量を減らす工夫

減塩醤油・減塩みそなど塩分の少ない調味料を使う
加工食品は塩分が多いので採りすぎない
香辛料(ワサビ、カレー粉)を使う
麺類のスープを飲まない
外食は塩分が多いので控える

まとめ

・透析患者の食塩の摂取量は、1日6g以下。
・水分摂取量は、水で500mlで、水分量の多い食品の摂取を控える。
・透析患者の体重増加量の目安は、透析間隔が中1日で3%以内、中2日空きで5%以内にする。
・減塩の調味料を使用する