血液透析でのECUMの血圧低下抑制効果について具体的に考えてみました

公開日: : 最終更新日:2015/10/17 血液透析

ECUMの効果

ECUMとは

ECUMとは、extracorporeal ultrafiltration methodの略称です。ECUMは、透析液を流さないで、限外濾過により除水のみを行う血液浄化療法です。

拡散による溶質の除去がない為、『血圧の低下を抑える作用がある』などといわれて、体重の増加が多いときに透析時間の延長を行うようなときに使用されていました。

ただ、近年ではECUMでもそれほど血圧低下予防の効果がないことや、長時間透析の有効性が認められており、ECUMはあまり使用されなくなりました。今回は、改めてECUMは効果があるのか?いつ使うのが良いのかについて考えてみました。

血管内の水分を保つには

血管内の水分を保つには、膠質浸透圧血漿浸透圧が関係します。膠質浸透圧とは、アルブミンやグロミンなど大きな粒子による浸透圧です。アルブミンやグロブリン値が高いほど、膠質浸透圧は上昇します。

血漿浸透圧は、Na、Cl、Kなど小さな粒子による浸透圧です。血漿浸透圧も電解質の濃度が高いほど大きくなります。

血液透析では、アルブミンはほとんど除去されないので透析経過による除水に伴い血液が濃縮されて、血液中のアルブミン濃度は少し上昇します。そのため、膠漆浸透圧はやや上昇します。

血漿浸透圧に関係する、BUN、Kなどの電解質は、拡散により大幅に除去されるので、透析経過に伴い血漿浸透圧は低下します。

このように、透析後半になると、BUN、Kが低下して、血漿浸透圧が低下することも透析後半の、血圧低下に関係する因子だと思います。

ECUMでは、拡散による電解質の除去がないため、血漿浸透圧の低下が少ないので血圧低下の予防になるということです。

血漿浸透圧を求めるには

さて、透析前と透析後ではどの程度、血漿浸透圧が変わるか考えたことはありますか?これは、計算することで求めることができます。

以下の式で大まかな、血漿浸透圧を求めることができます。

血漿浸透圧=2(Na+K)+血糖/18+BUN/2.8

血液中の電解質は、他にもPやCaなどもありますが、それらは無視できるほど少ない為、電解質は、NaとKのみが計算式に含まれています。

(Na+K)が2でかけられているのは、NaやKは、陽イオンといって、+のイオンです。+のイオンがあるということは、その数と同じだけ-の陰イオン(Clなど)があると過程できます。その為、2がかけられています。その他は、説明していたら長くなるので今回は省略します。

それではさっそく、血漿浸透圧を求めてみましょう。

一般的に透析前の患者の血液データは

Na:140mEq/L
K:5mEq/L
BUN:80mEq/L
血糖:90mg/dL
上記のように、BUNが大幅に上がり、Kは少し上がる程度です。これらを式に当てはめると

血漿浸透圧=2(140+4) + 90/18 + 80/2.8=290+5+28=325[mOm/L]となります。通常の人の血漿浸透圧は280なので少し上昇しているのが分かります。

次は、透析後の血漿浸透圧を求めます。

透析後の患者の血液データは
BUNとKが低下して以下のような値になります。

Na:140mEq/L
K:3mEq/L
BUN:20mEq/L
血糖:90mg/dL

これを血漿浸透圧を求める公式に当てはめると

血漿浸透圧=2(140+3) + 90/18 + 20/2.8=286+5+7=298[mOm/L]
となります。

透析前と比較すると、325-298=27[mOm/L]血漿浸透圧が低下したことになります。
また、BUNの減少が血漿浸透圧に与える影響が大きいことが分かります。

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ECUMは血圧低下予防効果があるのか?

上記で説明したように、血漿浸透圧は組織液を血管内に引き込む力があるから、ECUMをすることは、血漿浸透圧を下げないので血圧低下を抑制する効果があることになります。

ただし、ECUMは透析の前にやらないと意味がありません。透析4時時間して、最後に1時間ECUMというような条件ですと、ECUMが始まるときには既に、BUNが限界まで除去されているので、すでに血漿浸透圧が下がっています。

ECUMを効果的に使うには、HDの前にすることです。後からするのなら、全部血液透析(HD)をするのとほぼ変わらないと思います。

他には、ECUMでは透析液が流れないので、血液が回路内で冷やされて患者の体温が低くなり、血管が収縮することによる血圧を上げる効果があるという意見もあります。

ECUM時の血液流量は?

ECUM中の血液流量も施設により異なります。個人的な意見は、除水速度が血液流量の30%以下になるのであれば、いくらでもいいと思います。除水速度に対してあまりにも血液流量が少なすぎると、溶血の危険がありますが。

ECUMから血液透析時に血液流量を変更する手間がいるので、初めからHDと同じ速度にしておけばいいと思います。血液ポンプ速度と、血圧や循環動態に与える影響は、因果関係がないと、論文でも発表されているし、ガイドラインにも書かれています。

『より多いQBでアクセス血流量の増加、心機能や血圧の急性の変化は認められない』
(日本透析医学会 血液透析処方ガイドライン2013年版(案)より引用)

ECUMのまとめ

今回は、血漿浸透圧を求める計算を紹介したりなど少し、面倒な説明が多くなりました。しかし、透析について深く理解するには、こういった『水電解質』の勉強をする必要があります。このような学習は、中井洋先生の『ケアに生かす透析学入門』という書籍がお勧めなのですが、平成13年に出版された本なので既に売り切れ状態です

ネットを探したり、書店に問い合わせても現時点では手に入らない状態です。ただ、中井洋先生の書籍を探していたら、少し前に腎臓・透析療法・透析患者の体のすべてが発売されていました。

中井先生の書籍は、難しいことも噛み砕いて誰にでもわかるように説明してくれているのでとてもお勧めです。
ついでに目次も紹介します。

■第1章 腎臓のはたらき
●01 腎臓の構造とはたらき
●02 糸球体濾過の仕組み
●03 尿細管での再吸収・分泌の仕組み
●04 体の水分を調節する
●05 老廃物を尿として体外に出す
●06 電解質バランスを一定に保つ
●07 血液の酸塩基平衡を保つ
●08 造血ホルモンを分泌する
●09 骨を強くする活性型ビタミンDをつくる
●10 血圧を適切に調整する
●11 慢性腎臓病
●12 慢性腎不全

■第2章 透析療法の仕組み
●01 ダイアライザの構造
●02 血液透析のシステム
●03 バスキュラーアクセスの構造
●04 透析液の組成
●05 血液の流れと透析液の流れ
●06 物質移動の原理(拡散)
●07 抗凝固薬
●08 エンドトキシンと水質管理
●09 腹膜透析の仕組み
●10 血液を取り出し老廃物を取り除く
●11 透析液から体に必要なものを入れる
●12 水分を除去する
●13 透析液を用いず老廃物を除去する(血液濾過)
●14 透析アミロイドーシス・透析困難症患者に対する透析(血液透析濾過)
●15 特定の物質を除去する(血液吸着法)
●16 血漿成分を除去する(血漿交換療法)

■第3章 透析患者の体のヒミツ
●01 尿が出なくなる
●02 老廃物が溜まる
●03 水が溜まる
●04 食塩の過剰摂取で体重が増加する
●05 ぼーっとする
●06 眠れなくなる(睡眠障害)
●07 喉が渇く
●08 徐脈・心停止をひき起こす
●09 食事摂取によりカリウムが溜まる
●10 食事摂取によりリンが溜まる
●11 低栄養になる
●12 貧血になる
●13 骨がもろくなる
●14 血液が酸性になる
●15 血圧が上がる
●16 透析中に血圧が下がる
●17 体がかゆくなる
●18 排便コントロールが不良になる
●19 下肢がつる
●20 血管が詰まる・細くなる
●21 シャントに異常が起こる
●22 目の病気になる
●23 アミロイドが沈着する
●24 がんになる
●25 心臓が弱くなる
●26 足の病気になる
●27 感染症を起こす
●28 頭痛を起こす
●29 脳梗塞を発症する
●30 末梢神経障害を発症する

<腎臓・透析療法・透析患者の体のすべて>の目次を引用>

透析業務では、勉強することにより、患者に対してよりよい治療や看護を提供できることだと思います。疑問点や質問がありましたら気軽にコメントください。

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