下肢切断後の生命予後は!?糖尿病患者のフットケアの基礎知識

足

はじめに

厚生労働省の統計によると、1997年頃より糖尿病患者は右肩上がりに増加しています。2012年時点での、日本国内の糖尿病患者数は950万人、糖尿病予備軍は1100万人であり日本国民の6人に1人が糖尿病を患っています。

糖尿病による、3大合併症としては「糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、神経障害」が有名ですが、糖尿病による合併症はこれだけではなく、微小血管の循環が悪くなることによりる手足先端の潰瘍や壊死も頻繁に発生します。特に透析患者さんでは、動脈硬化が進行して足病変の進行速度が非常に速いため、日ごろからのフットケアが非常に大切です。

最近では、看護師だけでなく臨床工学技士もフットケアを実施している施設もあるそうです。そこで、臨床工学技士の人にもフットケアの大切さと、フットケアに対する基礎知識を持ってもらいたいと思い、まとめてみました。

以下に「フットケアの重要性、足病変の種類、フットケアの方法」について順番に紹介します。

我が国の重症糖尿病性足病変症例の特徴

最悪下肢切断となる足病変について、どのような特徴があるのかを知っておきましょう。

男性に多い
糖尿病罹病期間が長い
血糖コントロール不良
合併症が進行
誘因は靴ずれ・外傷が多い
部位は足趾が多い
細菌感染を合併していることが多い
発症から受診までが長い
入院日数が長い
切断率が高い(腎不全・透析例は大切断になりやすい)
再発率が高い
虚血性心疾患や脳梗塞を合併しやすい
重症化(切断、PAD症例)すれば高額な医療費を要する

(河野茂雄.糖尿病足壊疽.Diabetes Frontier2009;20:447-51より)

下肢病変から、重症化して切断に陥ってしまう原因としては、「発症してから受診するまでが長い」というものがあります。これは、糖尿病による神経障害により知覚神経が麻痺してしまう。痛みを感じにくくなってしまう。ということが原因です。

また、患者さんに足病変に対する危機意識が低いことも原因かもしれません。これらを防ぐために、透析の現場では、平成28年より「下肢末梢動脈指導管理加算」という新しい診療報酬制度がつくられました。(参照:下肢末梢動脈指導管理加算とは)軽症のうちに足病変に気づき、早期診断・治療により下肢切断を防ぐ目的で作られたものです。

下肢切断後の生命予後

下肢切断後の生命予後は、非常に悪いです。特に透析患者の大切断後の生命予後は末期がんの生存率にちかいです。

<大切断後の1年生存率>
非透析患者・・・75.4%
透析患者・・・51.9%

<大切断後の5年生存率>

非透析患者・・・42.2%
透析患者・・・14.4%

(Aulivola B,et al.Al.Arch Surg2004;139:395-9より)

下肢病変の種類

糖尿病患者の重症な足病変としては、潰瘍、壊疽、壊死性筋膜炎があります。ここまで病変が進行すると足切断のリスクが非常に高くなります。足白癬、陥入爪、胼胝(べんち)、鶏眼など軽症など軽度なうちから、早期診断・治療することが重要です。以下に、糖尿病患者さんの足病変は、どのような疾患があるのかを簡単に紹介します。

皮膚感染症

皮膚感染症の原因は、「細菌、ウイルス、真菌、動物(ダニ)」の4つに分類されます。

水疱性膿痂疹

細菌(黄色ブドウ球菌など)を原因として発生する皮膚表面の感染症。皮膚表面が化膿して、水疱とかさぶたができる。「とびひ」などと呼ばれることもある。

水疱性膿痂疹(日本皮膚科学会[https://www.dermatol.or.jp/qa/qa13/q03.html]より)

蜂窩織炎(ほうかしきえん)・・・真皮から皮下組織までの急性炎症。患部は熱感を持ち腫脹する。原因は、黄色ブドウ球菌が多い。下肢循環不全、白癬、熱傷、外傷、虫刺されなどから合併する。感染すると、発熱やCRP・白血球の上昇を認める。潰瘍や壊死に進行しやすいので早急な治療が必要。

蜂窩織炎

(ネタフルより[http://netafull.net/diary/051720.html])

足底(尋常性)疣贅(読み方:じんじょうせいゆうぜい)

ウイルス性のイボのこと。ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス)を原因とします。

足底疣贅(星の原クリニック[http://www.hoshinohara-clinic.com]より)

足白癬

白癬とは、俗語で水虫のこと。真菌の感染により発症します。足白癬には、趾間型・小水疱型・角質増殖型の3つの種類があります。

・趾間型
(http://tinea-medical.blogspot.jp/2015/11/blog-post_24.htmlより)

・小水疱型
小水疱型(水虫撃退[http://mizumushi-navi.com/archives/212]より)

・角質増殖型
角質増加型(大阪府済生会病院富田林病院[http://www.tonbyo.org/contents/series/2013_06.htmlより])

疥癬(かいせん)

ヒゼンダニが爪や皮膚に感染することにより発症する皮膚感染症。感染するダニの数により通常型と痂皮(角化)型に分類されます。

通常型は、感染したダニが少ない場合です。赤いぶつぶつができたり、疥癬トンネルといってヒゼンダニが真皮を移動した後がトンネルのような跡になります。
通常型疥癬通常型(http://edokomono.com/blog/wp-content/uploads/images%E7%96%A5%E7%99%AC.jpgより)

疥癬トンネル疥癬トンネル(www.scabies.jpより)

痂皮型は、感染したダニが非常に多いのが特徴です。角質が増加して、肥厚、灰白色に見えます。抵抗力が弱くなっているときに感染しやすく、感染力が強いので集団感染に注意が必要です。

角化型疥癬痂皮型(本松すずかけびょういんhttp://wakoukai.or.jp/news/991より)

非感染性の皮膚疾患

皮膚炎

接触性皮膚炎

おむつかぶれ、きんぞくあれるぎーなどにより湿疹ができる症状。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

膿が溜まった膿疱が手のひらや足裏に無数にできる症状。

汗疱(かんぼう)

手の平や足裏に、汗が溜まって小さな水ぶくれが複数できる症状。原因ははっきりと分かっていません。

角化症

表皮サイクルの異常により発症する皮膚疾患です。全身や局所に発生したりします。女性の悩みで多い足のかかとのカサカサなども角化症が原因であることが多いです。進行して、真皮までひび割れがおこると出血や潰瘍形成など重症化することがあるので注意が必要です。

胼胝(べんち)

これは、俗語でいうところのタコのことです。長期間にわたって、幹部が圧迫されることにより角質が増加・硬化・軽度突起します。ペンだこなどよく聞きますよね。

胼胝

(いい足.COM[http://iiashi.com/foot-deformity/corn/]より)

鶏眼(けいがん)

魚の目のこと。医療用語では鶏眼といいます。表皮の角質が真皮に向かって異常増殖することで発症します。足裏に発生することが多く、足に合っていない履物をはいていたりすると発生します。糖尿病患者では特に頻度が高い。

鶏眼(なかみち皮膚科クリニック[http://nijd.dr-clinic.jp/wordpress/?p=199]より)

皮膚腫瘍

日本人に多い皮膚がんとして、有棘(ゆうきょく)細胞がん、悪性黒色腫があります。有棘細胞がんは、高齢の男性に多く表皮の中間から発生します。熱傷後や褥瘡部から発症することがあります。初期は、イボのようなしこりが見られ、進行すると潰瘍をつくったりカリフラワー状に突起したりなど様々な形態が見られます。

悪性黒色腫は、皮膚の色素をつくるメラノサイトががん化することにより発症します。進行が早く皮膚がんの中でも悪性度が高いです。初期は、ほくろと見間違えやすいですが進行すると、非対称構造、不均一、ギザギザの形状などほくろとは異なった特徴を持ちます。

悪性黒色腫(新潟県立がんセンターHP[http://www.niigata-cc.jp/disease/akuseikokusyoku.html]より)

爪の異常

厚硬爪

爪の甲が肥厚する症状。伸長して横に曲がって生えてしまったり、爪甲が灰色、褐色に変色することもある。

厚硬爪([http://makidume.da-te.jp/e959920.html]より)

巻き爪

爪先の端がが内側に彎曲して、巻いた状態。巻いた爪が皮膚に食い込むため痛みを伴う。

巻き爪([http://dr-nail.jp/treatment/makidume/]より)

没入爪

爪先の端が彎曲して皮膚に直接食い込む症状。巻き爪とよく似ている。普段爪を切るときに深爪しているのが原因。

没入爪([http://volume-nail.com/granuloma/]より)

爪白癬

水虫の菌が爪に感染した症状。初期は、爪の先端が白っぽくなり進行していくと黒色化して肥厚した角質が脆弱化して崩れる。

爪白癬([https://www.tsumenet.com/photo/04.html]より)

糖尿病患者のフットケア

患者に対する指導

日常生活で、下肢を守るために「生活の注意点、足を観察すること、どのようにケアをするか」この3点をしっかりと説明する必要があります。患者さんが高齢で、自分だけでは管理が難しい場合は、その家族などにも協力してもらう必要があります。

生活の注意点

糖尿病患者の下肢を守るうえで日常生活で注したいポイントは、「血糖コントロール、喫煙、外傷の予防」です。血糖値コントロールが悪かったり、喫煙をすると末梢循環がますます悪くなり、ケガをしやすくなったり壊疽などの原因となります。外傷を予防するためには、屋内・野外関係なく裸足でいることを避けて靴下を着用することが推奨されます。木綿性の5本趾タイプであり出血などを発見しやすいように白色の靴下を選びましょう。その他、靴づれを予防するために、自分の足に合った靴を選択することも大切です。靴ずれが悪化して潰瘍を形成することはよくあります。

足の観察

糖尿病患者さんの足病変のスピードは、非常に速いです。毎日自分の足を観察する習慣を身につけましょう。視力障害がある患者さんや、身体にハンディがあり自力では難しい場合は、家族に協力してもらいます。

ケア方法

足を清潔に保つために、入浴時には毎回、石鹸を使って洗浄します。足が乾燥する場合は、ひび割れを防ぐために保湿剤により保湿をします。その他、爪の手入れや、胼胝・鶏目・白癬などの症状が現れた場合は、医療機関で早めに治療しましょう。

医療者側のケア

透析室でのフットケアでまず基本となるのは、個々の患者さんの下肢の状態の評価です。チェック表などを用いて、定期的に下肢の状態を確認します。確認の間隔は、1週間~1月に1回など、それぞれの患者さんのリスクに応じて間隔を決める必要があります。必要に応じて、爪切り、洗浄、足浴、マッサージ、保湿などのケアを行ないます。病変が発見された場合は、積極的に治療を行い、透析室での治療が困難な場合は皮膚科や専門医に紹介します。

以下は、泌尿器科いまりクリニック透析室のフットチェック表です。

指名          フットケア
<観察方法> <ケアの方法>
皮膚の色
乾燥の有無
傷の有無
水ぶくれの有無
ひびの有無
痛みの有無
むくみの有無
爪切り
冷感の有無
しびれの有無
水虫の有無
拍動の有無
備考:
NSサイン

 

まとめ

今回は、フットケアの重要性と基本的な知識についてまとめました。透析患者のQOLや生命予後を改善するためにフットケアの大切さがわかったと思います。もっとフットケアについて勉強したい場合は、関連の学会に参加したり、フットケア指導士などの資格取得の勉強をしてみてはどうでしょうか?フットケア指導士の資格は臨床工学技士でも取得できるそうです。(参照:フットケア指導士とは?

 

(参考文献)

中山書店 間違いだらけの褥瘡・フットケア
日本皮膚科学会HP(https://www.dermatol.or.jp/qa/qa13/q03.html)
ネタフル(http://netafull.net/diary/051720.html)
国立感染研究所(http://www.niid.go.jp/niid/ja/kansen/392-encyclopedia/380-itch-intro.html)

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