透析患者のC型肝炎治療(genotype1型について)

肝臓

はじめに

C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)による感染症です。感染経路は、血液であり、感染すると肝臓が慢性的な炎症を起こし、長期的には肝臓が線維化を起こし、肝硬変・肝臓がんに移行します。HCV陽性患者は日本全国に、150~200万人いると言われています。

透析患者では、C型肝炎の感染率が一般人と比較して非常に高く全透析患者の7~10%程度がHCV陽性といわれています。HCV陽性の透析患者は非肝炎患者と比較して生命予後が良くありません。透析医学会のガイドラインでも、生命予後が期待できるHCV感染透析患者に対しては、積極的に抗ウイルス療法をおこなうことを推奨しています。

ちなみにC型肝炎は、ウイルスの遺伝子構成により6つの種類があります。日本人に多いのが、genotype1型というものでC肝炎患者の70%を占めます。また、genotype1型がもっともインターフェロン(IFN)が効きにくいです。(IFN単独治療では、SVR10%程度)

このような理由や、IFNと併用することで治療効果を上げていたリバビリンが透析患者には禁忌であり、従来は透析患者に対するHCV治療は困難でした。しかし、2014年より複数の抗ウイルス薬を合わせて飲むDAA療法が開発され、高い治療効果が得られるようになり透析患者でもHCVの治療が可能になりました。今回は、HCVの歴史と、HCV(genotype1型)患者に対するDAA療法について紹介します。

C型肝炎の基礎知識

インターフェロンとは

インターフェロンとは、体内にウイルスが侵入したときに、そのウイルスを攻撃して排除したり、増殖を抑制する働きのタンパク質です。C型肝炎のインターフェロン治療では、人工的に作ったインターフェロンを注射することにより体内に補います。通常のインターフェロン治療では、週に3回注射を行います。

ペグインターフェロンとは

ペグインターフェロンとは、インターフェロンにペグという物質をつけたものです。分子量が大きくなったことにより、体内での半減期が長くなり週に1回の投与で良く、患者の通院の負担を減らすことがでました。

リバビリン(RBV)とは

リバビリンはウイルスのRNAの合成を阻害することでウイルスの増殖を阻害するお薬です。インターフェロンやDAAと併用することでC型肝炎の治療効果を高めます。

DAAとは

DAAとは、direct acting antiviral(直接作用型抗ウイルス薬)の略称です。ウイルスが複製するのに必要なたんぱく質(NS3、NS5b、NS5A)のいずれかの活性を阻害することで、ウイルスの増殖を抑えます。

DAAは、単剤で用いるとウイルスが遺伝子変異を起こし耐性ウイルスができてしまうため、Peg-IFN、RBVもしくは、複数のDAAを組み合わせて使用します。

C型肝炎の歴史

[C型肝炎の歴史]

1989年 C型肝炎ウイルス発見
1992年 インターフェロン療法保険適応
2001年 IFN+リバビリン療法保険適応
2003年 ペグインターフェロン療法保険適応
2004年 Peg-IFN+RBV併用療法保険適応
2011年 Peg-IFN+RBV+DAA併用療法保険適応
2014年 DAA単独療法

HCVが発見されたのは、1989年です。それまでは、輸血でのスクリーニングができていなかったため、輸血をしたり大手術をした患者を中心に感染が広がりました。1992年からは、C型肝炎患者へのインターフェロン療法が保険適応されました。ただし、日本人のC型肝炎患者の7割に当たるgenotype1型の患者に対する効果は低く、HCV RNA持続陰性化(SVR)は10%以下でした。

2001年には、抗ウイルス薬(リバビリン)が保険適応されました。IFNとリバビリンを併用することにより治療効果を上昇させました。2003年には、Peg-IFN療法が保険適応、Peg-IFN+リバビリンの併用により、SVRは50%になりました。

2011年には、DAAが発明され、Peg-IFN+RBV+DAA(シメプレビル)によりSVRは、90%になりました。ただし、これらの治療法に出てくるリバビリンは透析患者には禁忌です。その為、透析患者のHCV治療は困難でした。

2014年には複数のDAAを併用することでIFNやリバビリンを使用しなくても高い治療効果を認める薬剤が発明されました。このころより透析患者もHCV治療を行えるようになりました。

DAA単独療法について

DAA単独療法にも複数の方法があります。genotype1型のHCV治療に以下のDAA治療法が保険適応されました。(2014~2017年)

  • ダクラタスビル+アスナプレビル(24週)
  • ソホスブビル/レジパスビル(12週)
  • パリタプレビル/リトナビル/オムビタスビル(12週)
  • グラゾプレビル+エルバスビル(12週)
  • ダクラタスビル/アスナプレビル/べクラブビル(12週)

IFN療法の副作用により治療を断念した患者や、高齢患者においても、DAA単独療法であれば副作用も少なく治療がしやくなりました。透析患者の場合、ソホスブビルは使用できませんが、他の薬剤は使用できます。

ダクラタビル+アスナプレビル療法により多くの透析施設で高いHCV RNA陰性化(95~100%)が実施できたと報告されています。

終わりに

Genotypei1型の場合、DAA単独療法によりSVRは95~100%と報告されています。ただし、DAAの薬剤は非常に効果であり一回の治療で数百万円の医療費を必要とします。その為、どこの患者まで治療を実施するかという線引きが必要になります。

極端な話、超高齢の肝炎患者の場合、肝硬変や肝臓がんが発症するより先に寿命が尽きる場合もあります。そのような患者の場合は、治療する必要はありません。

透析患者の場合は、新規感染予防の為に、全ての患者を対象に治療する。という方針の病院もあるようです。私個人の意見としても、スタッフのストレス軽減や院内感染予防のために透析施設は積極的に行うべきだと思います。

 

(参考文献)

臨床透析2017.6

https://www.harasanshin.or.jp/medical/shokaki/interferon.html