透析患者の妊娠・出産の現状と管理方法について

出産透析患者は、内分泌異常や栄養障害などで生理不順を呈することが多く妊娠が難しいといわれています。また妊娠しても自然流産などのため、分娩までに至らないことが多くあります。

しかし、透析患者が出産することが全く不可能なわけではありません。確かに、透析患者の出産は、母子共にハイリスクであり合併症のリスクが高いといわれています。

ただし、年々、透析患者の出産数も増えてきて、たくさんの出産の成功の報告がされています。また、それに伴い妊婦の透析患者の管理方法についての方針が報告されています。

今回は、『透析患者の出産の現状と妊婦の透析管理方法』について紹介します。

透析患者の出産数

透析患者の出産に対する統計は透析医学会ではとられていないので正確なデータはわかりません。ただ、1996年に東京女子医大の東間が172例の妊娠例を報告しているそうです。

現在は、その当時から20年以上経過しており、今までに日本国内において透析患者が出産した症例は、数百から数千をこえると予想されます。

特に、2008年の診療報酬では妊婦に対する透析回数の制限がなくなりました。妊婦は、月に何回でも透析をすることができます。これは、胎児に尿毒素による害を与えないためや、除水による妊婦の血圧低下を与えないように頻回透析が進められるためです。

妊婦に対する透析回数の制限がなくなった為、妊婦に対する管理がやりやすくなりました。

 

透析患者の出産リスク

透析患者の出産では、早産が多いようです。透析患者の全出産のうち80%が早産であると報告されています。その為、早産を防ぐために血圧管理・投薬(子宮収縮抑制薬)が必要です。

他にも、BUNを60mg/dL以下に保ったり、塩分制限をしたりなど非常に厳格な管理が必要となります。その為、妊娠20週頃から入院して母体を管理する施設が多いようです。

母体の合併症としては、肝障害、弛緩出血、妊娠中毒などに注意する必要があります。

 

透析を行っている妊婦の管理方法

妊娠中の管理方法に関するガイドラインは現在作られていません。久保和雄らのまとめた管理方法が広く知られています。

<母体の管理>
1.十分に透析を行うこと(妊娠20週より入院)
①BUN<60mg/dL
②血清クレアチニン<6㎎/dL

2.貧血を改善させること
(EPO製剤を用い Ht>30%)

3.血圧・体重のコントロール
[標準体重の増加<300g/週(中期)~500g/週(後期)] 水・ナトリウム制限、降圧薬
第1選択:メチルドパ、β遮断薬、クロニジン
第2選択:ニフェジピン
(ACE阻害薬には催奇形性があり、用いられない)

4.抗凝固剤(低分子ヘパリンやフサンを使用)

5.流早産の予防
①子宮収縮抑制薬(塩酸リトドリン)の投与
②羊水過多(800ml以上)の防止
③子宮内感染の検索(抗菌薬投与による予防)

6.栄養管理
①バランスのとれた十分な栄養
②カリウム・リンのコントロール、活性型ビタミンDの投与
③透析で除去されやすいビタミンや微量元素の補充

7.妊娠中毒の評価

<胎児の管理>
1.在胎週数の延長(32週以上、出生時体重1500g以上)
2.胎児機能の評価
①NST、CTG
②超音波検査
3.胎児発育の評価
超音波検査による胎児計測
4.胎児胎盤機能の評価
エストロン、エストラジオール、エストリオール、ヒト胎盤性ラクトゲン

(久保和夫ら,1994,一部改編)

妊娠中の透析では、血圧低下や、尿毒素の上昇を防ぐために週4~5回の頻回透析が進められています。透析条件も、体液や羊水の急激な電解質の変化を避けるためにQBを落として、緩やかな透析にするように推奨されています。

在胎週数の延長で、32週以上とされている理由は、早産の胎児では肺サーファクタントといって肺胞が表面張力によってしぼむのを防ぐ物質が作られておらず、呼吸窮迫症候群という合併症を引き起こして命の危険にさらされます。

妊娠32週前後で肺サーファクタントが作られるので、32週以降に出産することが大切です。

まとめ

透析患者には、20代~30代の若い女性もいます。中には、出産して子供が欲しいと考えている人もたくさんいます。mixiのコミュニティーでも出産に関する相談をよく目にします。上記の通り、透析患者の出産は相当なリスクがあり、厳格な管理が必要です。ただ、絶対に無理ということはありません。

出産するためには、透析患者自体に妊娠に耐えられる合併症がないことと、精神的に安定していることが必要です。また、家族の支援及び透析患者の出産経験や知識のある腎臓内科医・産婦人科医がそろった施設があることも絶対条件となります。

 

(参考文献)
透析患者の生活指導ガイド