慢性腎不全による『血液透析の導入基準』について紹介します

公開日: : 基礎知識(透析), 血液透析

慢性腎不全での透析導入基準値は、1991年に厚生省科学研究・腎不全医療研究班によって作成された導入基準が一番有名です。1991年に作成されており、かなり古いですがのちの追跡調査でもその有効性が証明されており現在でも広く使用されています。

この導入基準は、『臨床症状・腎機能・日常生活障害度』の3つの項目を評価して、点数化して、60点以上が透析導入の目安となっています。厚生省科学研究・腎不全医療研究班による慢性透析導入基準を下に搭載します。

SPONSORED LINK

慢性腎不全での透析導入基準
透析導入基準
<血液浄化療法ハンドブック[改定版6]P221より引用>

慢性透析導入基準の補足説明

厚生省科学研究・腎不全医療研究班による慢性透析導入基準について臨床症状・腎機能・日常生活障害度について順番に補足説明しますね。

臨床症状

臨床症状は、慢性腎不全により腎臓が働かなくなったことにより出現する症状について、定められています。これらの3つの症状が出る場合を30点、2つで20点、1つで10点とします。

体液貯留(浮腫、肺水腫)

慢性腎不全になり、尿の排出ができなくなると、飲んだ水が体内に溜まります。そうなると、全身に水分が過剰となり全身が浮腫状態になります。また、全身に水が溜まると肺の中にも水か入ってきて呼吸困難になります。

体液異常(電解質異常、酸塩基平衡異常)

腎臓では、体内(血液中)の電解質を調整する働きがあります。電解質とは、カリウム、リン、ナトリウム、クロールなど複数あります。特に、血液中のカリウム濃度が上昇すると、危険な不整脈がおこり、心停止する場合があります。
酸塩基平衡とは、体内の水素イオン濃度を調整する働きのことです。人間の体は、腎臓と肺によって水素イオン濃度を調整して、体内を弱酸性に保っています。腎臓が悪くなると、水素イオンの排出ができなくなり、体が酸性に傾いてしまいます。

消化器症状

慢性腎不全により、体内に尿毒素が溜まると、悪心・嘔吐・食欲不振・下痢などの症状が現れるようです。

循環器症状

循環器症状の原因は、体液貯留と同様で体内に水分が過剰に溜まることにより現れます。体液が溜まることにより、血液量が増え血圧が高くなったり、心臓に水分が溜まり心臓が膨らんで、心拍出量が下がったりします。その他に、心のう炎といって、尿毒素により心臓が炎症を起こす場合があります。これは大変危険な病態ですぐに透析導入しなくてはいけません。

神経症状

尿毒素の上昇により、両側下肢末梢の異常な感覚、近くの低下が起こることがります。下肢が落ち着かなくイライラする症状をrestless legs(レストレス-レグス)症候群、下肢がやけるようにジンジンする症状をburning feet(灼熱足)症候群と呼びます。

血液異常(貧血・出血傾向)

腎臓では、赤血球を造るのを促進するホルモンであるエリスロポエチンが造られています。これは、慢性腎不全になると分泌量が低下して貧血になります。

視力障害(尿毒症性網膜症・糖尿病性網膜症)

眼球の中には見えた景色を脳に伝える網膜と言われる膜があります。糖尿病が進行すると、網膜の血管がつまって、栄養が届かなくなり最悪失明する恐れがあります。

腎機能

腎機能の評価は、血清クレアチニン濃度で評価されます。クレアチニンは、筋肉の代謝により造られる分子量113程度の小さな物質です。腎機能が低下するとクレアチニンの排出量が低下して、徐々に血清クレアチニン濃度が上昇します。
ただ、注意しなければならないのは、クレアチニンは筋肉の代謝で発生されるので、筋肉量や、運動量によりクレアチニンが造られる量が異なります。特に、小児、高齢者、女性、糖尿病患者では、腎機能が悪化しても血清クレアチニン濃度が上昇しにくい場合があるので注意が必要です。

日常生活障害度

日常生活が困難になれば、なるべく早く透析を導入したほうが良いです。透析導入前は、体がしんどく何もできなかったが透析を導入すると体が元気になった。もっと早く透析を導入すればよかった。と言われる患者も多くいます。

以上、透析導入基準についての紹介でした。透析導入は、患者はとても嫌がり延期する場合も多くあります。ただ、延期することにより体の状態がさらに悪くなり、救急車で搬送されてくる場合もあります。
また、尿毒症が体内に過剰に溜まった状態を放置すると不可逆的な疾患を合併してしまうこともあります。自分の施設では、この厚生省の導入基準よりも導入基準は甘いように感じます。臨床症状が現れ始めたら早めに導入しています。そのほうが、患者にとっても体が楽でありいいと思います。

<参考文献>
血液浄化療法ハンドブック
透析患者の生活指導ガイド

SPONSORED LINK


関連記事

温い服

透析中の寒さ対策方法を紹介します!

透析中の寒さ対策に役立つグッツを紹介 最近、透析中の患者さんから『寒い。』と訴えられることが度

記事を読む

なやみ

血液透析事故のABCって知ってますか?

透析事故のABCって聞いたことありますか? これらは、事故の種類を英語の頭文字をとったものでABC

記事を読む

no image

透析患者の寿命について

透析患者の寿命は 透析患者の平均余命について 日本透析医学会の調査によると、『透析患者さんの平均

記事を読む

fdz

『日機装社のダイアライザー』一覧を紹介します。

日機装のダイアライザーを紹介! ダイアライザーは、各社から複数販売されています。それぞれの膜の

記事を読む

no image

透析での『静脈圧警報』発生時の対応手順を紹介します

前回、静脈圧警報が発生する原因について紹介しました。それを理解したうえで今回は、静脈圧警報の原因の見

記事を読む

no image

透析患者に使う降圧薬の特徴と使い方を紹介します

血圧を下げる降圧薬は、5つに分類されます。『アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体

記事を読む

no image

透析中にエアーが患者に入ったらどうなるか!?

透析の事故や、カテーテルの取り扱いのミスによりエアーが血管内に入る事故が報告されています。空気が血管

記事を読む

腎臓

腎臓の4つの働きの説明

腎臓の働きまとめ 今回は、腎臓の働きについて分かりやすくまとめました。患者さんや新人看護師さんにも

記事を読む

食事2

透析患者の蛋白質摂取量とリンの管理方法について

今回は、透析患者の食事で必要な蛋白質の摂取方法についてまとめました。『蛋白質は、どのような働きがある

記事を読む

食事

透析患者に必要な食事のエネルギー量・食事方法について説明します

今回は、透析患者に必要な栄養素とエネルギー量について簡潔に説明します。透析患者さんがどのよう

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

SPONSORED LINK
ジョブスルー
面接
新卒の臨床工学技士の就職・転職の苦労について

はじめに 年を越して、就活をしている臨床工学技士の学生の多くが就職先

さわやか
コメディカル専門の求人紹介会社『ジョブスルー』とは?

ジョブスルーの代表である土屋さんに、ジョブスルーの特徴と、企業理念につ

パソコン
透析業務をするCE・看護師に役立つサイト5選!

透析及び医療機器管理をしているNs・CEに役立つサイトをまとめたので紹

患者さん
透析患者の飲水・食事指導について(EASEプログラムを活用しよう)

食事管理ができない患者指導に 透析患者さんは、透析間の食事や飲水量な

電卓
ポケットを軽くしよう!薄い電卓のススメ

はじめに 最近、ミニマリズムにはまっています。ミニマリズムっていうの

no image
腎友会とは?全腎協の活動と歴史を紹介します!

腎友会とは?活動と歴史を紹介します。 はじめに 透析をしている方は

→もっと見る

  • 広告募集
PAGE TOP ↑