透析しながら長生きする方法(死亡リスクを減らす)

はじめに

透析患者の生命予後は、あまり良くないという記事を以前搭載しました。(参照:透析患者の寿命について)非透析患者の半分の余命と言われています。ただ、血液透析をしながら長生きをしている患者さんもいます。日本透析医学会の「2015年末の慢性透析患者に関する基礎集計」によると透析歴が40年以上の患者が617人,35~40年の患者が2098人,30~35年の患者が3917人、そして最長の透析歴は、47年です。このように透析をしながら長生きをしている患者さんもたくさんいます。

今回は、慢性腎不全になった場合、どのような治療をすれば、どのような生活をすれば長生きできるか(死亡リスクを減らせるか)についてまとめました。

目次

1.腎移植が最も生命予後がいい

2.血液透析しながら長生きする方法
(1)長生きするための透析条件
・透析効率
・透析時間
・除水速度
・血液流量
・透析方法
(2)長生きするための生活習慣
・運動
・適正な食事

3.まとめ

 

腎移植が最も生命予後が良い

慢性腎不全により腎機能が悪化すると、何らかの腎代替療法(透析など)を行わなければなりません。腎代替療法は、「血液透析、腹膜透析、腎移植」の3つがあります。この中で最も生命予後が良い(長生きできる)治療は、腎移植です。 20年後の生存率を比較すると、生体腎移植患者の生存率は、73.7%、献腎移植患者の生存率は、約62.0%(※1)、血液透析患者の生存率は15.4%です。

ただ、腎移植と血液透析でこんなに生存率に差がある原因は、腎移植時の平均年齢が若いという要因もあります。 生体腎移植患者の移植時の平均年齢が45歳、献腎移植では、平均年齢が49歳です。透析導入患者の平均年齢は、69.2歳なので差があるのは当たり前です。

そこで平等に比較するために、45歳~50歳の透析患者の平均余命を調べました。その結果、45歳~50歳の透析患者の平均余命は15~17年であり、平均余命は20年以下。おおよその20年生存率は、50%以下であるということが分かりました。

<20年生存率(同年代で比較)>
生体腎移植 73.7%
献腎移植 62.0%
血液透析 50%以下

この結果より、やはり血液透析より腎移植のほうが優れていることが分かります。

ただ、移植はしたいからといって簡単にはできません。腎臓の提供者(ドナー)が必要です。生体腎移植では、6親等以内の血族もしくは、配偶者と3親等以内の婚族と法律で定められています。実際には、親や夫婦での提供が多いようです。提供者がない場合は、献腎移植といって、死体から腎臓を提供してもらう方法があります。

これを受けるには、献腎移植希望登録を行う必要があります。(登録費用30000円、年会費5000円)献腎移植登録から移植までは、平均6530日(約17年)とかなり長期間待たなければなりませんが、比較的若い年齢で透析導入になった場合は、生涯に何度かチャンスが訪れる可能性があるので登録しておいたほうがいいと思います。

血液透析をしながら長生きする方法

腎移植が最も長生きする方法ですが、みんながすぐにできるわけではありません。そこで血液透析をしながらできるだけ長生きする方法についてもまとめました。長生きする透析療法と長生きするために患者さん自身ができる生活習慣について順番に紹介します。 長生きするための透析療法 血液透析の方法、条件、時間など、血液透析の方法による死亡リスクを抑える方法について以下紹介します。

長生きするための透析条件

透析効率

透析効率は、KT/Vで表されます。これは、BUN、体重、透析時間などで計算して求める透析効率を表す指標です。海外の文献では、「KT/Vが高いと逆に死亡率が上がる」というデーターもありました。ただ、それは海外の透析方法(短時間、高血流量透析)による見かけ上のKT/Vの上昇が原因だと思います。

日本の透析医学会のデーターでは、KT/Vが高いほど死亡リスクが低いことが証明されておりspKT/Vが1.8までは、有意な死亡リスク低下が認められています。

また、短時間高効率透析ではなく、透析時間を延長して透析量を増やすほうが、死亡リスク低下の可能性が高いということも示唆されています。KDOQIガイドラインでは、spKT/Vは最低でも、1.2,目標値は1.4とし、女性など小柄な患者は多めにするようにと推奨しています。これは、体格が小さいほうが体の大きさに対する臓器の大きさの比重が大きいため不純物などの濃度が上がりやすいということらしいです。

透析時間

透析時間が長い方が、生命予後が良いということは誰もが聞いたことがあると思います。一般的に浸透している、週3回の4時間透析では、実際の腎臓の機能の10%以下だといわれています。透析時間を上げるメリットとしては、透析量(KT/V)の上昇の他、血圧低下予防にもなります。

時間当たりの除水速度が下がることから透析中の血圧管理がしやすくなります。透析中の血圧低下は、脳血流・冠状動脈の血流不足など重篤な影響を与える恐れがあり、死亡リスク上昇の原因となります。それを予防するうえでの、透析時間延長には、複数のメリットがあります。

日本透析医学会 我が国の透析療法の現状(http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2010/p066.pdf)より改変して引用

除水速度

除水速度は、少ないほうが循環動態に与える影響が少ないので体に負担が少なくなります。だからと言って食事を十分にとらないで体重増加を減らそうとすると栄養不足による死亡リスクが増えます。

具体的には、12ml/kg/時間以上では死亡リスクが上がるという報告があります。これは、透析時間が4時間の場合、体重増加量が5%程度を超えた場合の除水速度です。透析医学会の透析調査によると透析での体重減少率が4~5%で最も死亡リスクが少ないとされています。

体重減少率と死亡率

血液流量

血液流量を上げるのを拒む患者さんって非常に多いです。血流量を上げると「しんどい、血管が痛くなる」などと訴える患者さんがいます。ただ、これは思い込みにりそう感じてしまう「ノシーボ効果(プラシーボ効果の逆の意味)」だと思います。こっそり黙って血流量を上げれば絶対に気づかないはずです。血流量と心負荷は因果関係がないことは、鈴木一裕先生の論文でも紹介されており臨床透析の雑誌にも搭載されました。(参照:血流量を上げると心負荷は増えるのか?

さらに、透析医学会の統計では、血流量が多い患者ほど死亡リスクが少ないと報告されています。

血流量と生命予後

血流量を上げることにより、透析効率が上がり、BUN・リンなど除去効果が上がることが良い影響を与えるんだと思います。特に、近年普及している前希釈オンラインHDFでは血液の希釈により小分子量物質の除去量が低下する恐れがあるので、充分な血液流量を確保することは非常に大切だと思います。

透析方法について

HDとHDF患者を比較したデーターでは、死亡リスクについてははっきりしたデータは見つけることができませんでした。オフラインのHDFでは、透析低血圧やアミロイドーシスの患者しか保険適応が認められておらず、単純にHDF患者のほうが状態が悪いから単純に比較できないからです。

アミロイドーシスについては、HDFでのリスクが低いことが証明されています。(参照:透析アミロイドーシスとは

長生きするための生活習慣

ここからは、透析患者さん自身が長生きするために注意してほしいポイントをまとめました。

 

運動

活動量の多い患者のほうが、生命予後がいいことが証明されています。以下のグラフは、歩行が自立している透析患者202例を対象に、加速度計付き歩数計を用いて身体活動量を実測し、身体活動量と死亡リスクを比較したものです。(※2)10年後の生存率は非常に大きな差があることが分かります。

身体活動量と生命予後

 

どのような運動がいいかは、「透析運動療法―健康長寿を実現するために」などが参考になりそうです。

適正な食事

栄養指標としては、血中アルブミン値の値が簡単に確認することができます。アルブミンの値が、3.0g/dlを下回ると顕著に死亡リスクが上がっています。(参照:アルブミン値と生命予後)ちなみにアルブミン値が、CRPの値を下回ることを「死のクロス」と呼び非常に危険な状態です。h

透析間の体重増加量も死亡リスクと大きな関係があります。水分量が増えすぎると心不全・呼吸困難・不整脈など急死する恐れがあります。また、長期的にも心臓に負荷がかかり心拡大により心機能低下も重篤な合併症です。

これらを予防するには透析間の体重増加を抑えることです。具体的には、5%以内に抑えることが望ましいとされます。特に、水分を控えるために塩分を1日5g以下に抑えることが推奨されています。

(参考文献・引用)
※1)日本臨床腎移植学会,日本移植学会,腎移植臨床登録集計報告
※2)Matuzawa R,et al:Habiual physical acticity measured by accelerometer and survival in maintenance hemodialysis patients.Clin J Am Soc Nephrol7:2010-2016,2012
日本透析医学会維持透析ガイドライン:血液透析処方
http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2010/p066.pdf