オーバーナイト透析(ICNHD)とは

夜

はじめに

血液透析の方法は月水金または火木土の週3回4時間透析化が一般的でした。現在では、QOL改善や透析効率改善のために、多様な方法が試みられています。週に4回透析をする隔日透析、6時間以上の透析をする長時間透析、自宅で透析をする在宅透析(HHD)などなど、透析方法は多様化しています。

そのなかでも、夜間の寝ている間に透析をする方法(オーバーナイト透析)は、生命予後改善やQOL向上に特に有用な治療法だと考えられます。今回は、オーバーナイト透析について紹介します。

オーバーナイト透析について

オーバーナイト透析とは

オーバーナイト透析とは、深夜の睡眠中に血液透析を実施する方法です。ICNHD(in-center nocturnal hemodialysis)と略して、日本語では「施設オーバーナイト透析」と呼びます。

日本国内で実施している施設は24施設程度と非常に限られています。長所は、寝ている間に透析をするので「体感時間が少なく感じる、日中仕事をすることができる、長時間透析をすることができる。」など、患者のQOL向上に効果がある他、長時間透析を実施しやすいため患者の生命予後改善にもつながります。

オーバーナイト透析の効果

オーバーナイト透析の臨床効果は、長時間透析と同様です。死亡率の低下、入院率の低下、血中BUN・リンの低下、血圧・心機能の改善などです。特に、QOLの向上は大きいと思われます。

オーバーナイト透析の実際

オーバーナイト透析を実施するにあたり、特別な条件はありませんが施設ごとにルールをつくているようです。

対象患者

対象患者としては、「高齢者を除く、重度の合併症がない、透析中のバイタルが安定している」など、透析中のリスクが少ない患者に限られます。高齢者は、トラブルが起こりやすくリスクが高いので注意が必要です。さらに、事前に、エコーや心電図検査で心機能に問題がないことなどを確認して、透析中にリスクの少ない患者に限られます。

透析条件

オーバーナイト透析では、深夜から明け方までの睡眠時間を利用するためできるだけ長時間透析をするように条件設定をしています。(6~8時間など。)

ただし、長時間の透析により、必要な物質まで抜けすぎてしまうことに注意が必要です。低カリウム血症、低リン血症の他、アルカローシスなどにも注意が必要であり、場合によってはQBを下げたり膜を小さくして透析効率を下げなければならない場合もあります。

透析中の実際

オーバーナイト透析では、患者さんの良質な睡眠を確保しながら透析を行わなければなりません。その為、「血圧測定頻度を減らす、部屋を薄暗くする、隣の患者と仕切り板を設置する。警報音を小さくする。」など睡眠しやすい環境を作る必要があります。

それにより、スタッフによる監視の目が行き届きにくくなり、患者の容体の急変や事故を見逃してしまうリスクが増えます。少しでもリスクを減らすために、一定時間ごとの巡回の他に、ブラッドボリューム系で過除水を監視したり、漏血センサーで抜針を監視したりなどの工夫をしているそうです。

装置の消毒について

深夜から早朝まで透析をすることにより、透析配管の消毒が十分にできないという問題も発生します。「消毒設備を2系統に分離する、消毒方法を簡略する、個人用透析装置を使用する」など各施設で様々な工夫をしているようです。

オーバーナイト透析の問題点・課題

オーバーナイト透析は、透析患者のQOLを考えた場合最もよい治療方法だと思えます。しかし、全国的に浸透していない理由は、スタッフの負担および、経済的負担が上昇する為です。

深夜勤務であれば、深夜手当を支給しなくてわならなくなったり、スタッフ数を増やさなければならなくなったりなど、週3回のICNHDを実施するとなると年間で数千万円単位で負担が増えます。ICHDに対して特別な診療報酬を認めない限りは、今後も浸透しないと考えられます。

東京ネクスト内科・透析クリニックでは、週2回の通常透析に加え、週1回のオーバーナイト透析を実施しています。週3回の、オーバーナイト透析をするにはコストや人材の都合で難しかったため、月水に通常透析をして、金曜日の深夜にオーバーナイトを実施しているそうです。

この方法では、週末の透析間隔の2日空きをなくすことができます。通常透析では、週末の透析間隔が2日空きの時に最も死亡リスクが高いと報告されています。

透析量も増やせて、少しでも患者さんの自由時間を増やせるということで週1回のオーバーナイト透析も素晴らしい方法だと思います。

 

(参考文献・引用)

臨床透析2017.VOL.33 No.6