透析患者の『不眠症と睡眠障害』の原因と対処方法

不眠症

透析患者は不眠症、睡眠障害をかかえていることが多く、安定剤や睡眠導入剤が定期的に処方されている方が多いです。

透析患者に不眠が多い理由は、慢性腎臓病により数多くの疾患を合併しやすい為です。たとえば、『かゆみ、SAS、RLS、SAS、PLM』です。今回は、透析患者の不眠症の原因と影響、そして治療法について順番に紹介します。

※ 合併症は略語で記載するので先にまとめておきますね。

補足

SAS[サス](sleep apnea syndrome):睡眠時無呼吸症候群
RLS(restless legs syndrome):むずむず脚症候群
PLM(periodic limb movement):周期性四肢運動

・透析患者の不眠症の現状

小池による終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)と「ピッツバーグ睡眠質問票」による透析患者330名のデータを解析すると以下の結果になりました。

  • 入眠困難・・・49.1%
  • 睡眠時間短縮(睡眠時間6時間未満)・・・29.7%
  • 睡眠効率不良・・・70.3%
  • 睡眠に不満を持つ患者・・・50.3%
  • 睡眠が悪いと感じている患者・・・15.2%
  • 睡眠問題により日中眠気を感じている患者・・・33.3%

なんと透析患者の約7割に何らかの睡眠障害が発生していることに驚きます。日中にも眠気を感じるのは、仕事や車の運転をする患者さんには大変危険です。

さらに、睡眠障害の原因となる以下の症状を合併していました。

  • SAS(睡眠時無呼吸症候群)・・・約60%
  • PLM(周期性四肢運動)・・・約50%
  • RLS(むずむず脚症候群)・・・約10%

ちなみにSAS、RLMは、睡眠中に無意識に表れるので本人に自覚がない場合が多く、治療がされないまま放置されている患者さんも多くいます。

・透析患者の不眠症による影響

透析患者の睡眠不足自体が、生命予後に影響するという報告は見つかりませんでしたが、睡眠不足の原因となる疾患によって生命予後が悪化するという報告があります。

SASによる心血管合併症

睡眠不足の原因となる疾患の中で、もっとも生命予後を悪くすると報告されているのがSAS(睡眠時無呼吸症候群)です。Marinらの報告によると、重症SASでは致死的心血管イベントが2.87倍、非致死的心血管イベントが3.17倍になると報告されています。

RLS,PLMによる影響

RLS(むずむず脚症候群)、PLM(周期性四肢運動)は、生命予後に関与しないと報告されてます。ただ、患者本人の自覚症状は強いのでQOL低下が問題となります。

・透析患者の不眠症の治療法

薬による治療の注意

不眠を訴える患者に対して、安易に睡眠薬を処方することはよくありません。睡眠不足の原因となっている合併症のなかには、生命予後に影響を与えるものもあります。不眠症を訴える患者に対しては、不眠の原因となるSAS、RLS、PLM、かゆみなどの基礎疾患を調べます。

疾患が見つかった場合は、その疾患に対して治療・対策を施行します。そのうえで、睡眠日誌などに睡眠時間と生活習慣を記録して睡眠を悪化させている習慣がないかを確認します。

睡眠を悪化させる習慣

長時間の昼寝
起床時間がばらばら
食事時間を一定に
運動不足
夕方のカフェイン摂取
睡眠前の入浴
入眠前のパソコン、スマフォ(ブルーライト)
寝床での読書やテレビ
電気、テレビをつけたままの就寝

これらの対処を実施してもなお、不眠の改善がない場合に初めて睡眠薬を処方します。

睡眠薬は、依存症や副作用の少ないメラトニン受容体刺激薬、オレキシン受容体拮抗薬などから始めます。依存症になりやすい、エチゾラムや副作用の多いトリアゾラムは最終手段です。

RLS治療

RLSは、下肢に生じる、不快な異常感覚に伴って、下肢を動かしたくなる衝動を特徴とする症候群です。透析中、睡眠中、安静時に悪化することが多く患者のQOLを低下させます。

原因としては、鉄欠乏、カルニチン欠乏などもありますが、透析患者の場合は末期腎不全に合併して発症する二次性のRLSが多いです。

RLSの診断基準は以下になります。

RLSの診断基準
  1. 脚を動かしたいという強い欲求が存在し、また通常その欲求が、不快な下肢の異常感覚に伴って生じる
  2. 静かに横になったり座ったりしている状態で出現、増悪する
  3. 歩いたり下肢を伸ばすなどの運動によって改善する
  4. 日中より夕方・夜間に増強する

・診断を補助する特徴

  1. 家族歴
  2. ドパミン作動薬による効果
  3. 睡眠時のperiodic leg movementsが睡眠ポリグラフ検査上有意に多く出現

(日本神経治療学会 標準的神経治療:Restless legs症候群より引用)

RLSの診断は、特別な検査は不要です。問診することや、透析中の患者状態を観察していても気づくことがあります。

透析患者に合併する二次性RLSの治療の原因はドパミン機能低下と考えられています。その為、RLS治療にはドパミン薬の投与を行います。

薬の第一選択は、肝代謝のロチゴチン(ニュープロ パッチ)です。第二選択は、腎排泄で透析患者に慎重投与のプラミペキソール(ビ・シフロール)、これらで効果がない場合は、クロナゼパム、精神安定剤などを使います。

RLSの診断と治療は、日本神経治療学会 標準的治療:Resless legs症候群に詳しく紹介されています。

SAS治療

SASは、閉塞型SASと中枢型SASに別けられます。閉塞型SASは、睡眠時に上気道が閉塞することにより呼吸が浅くなったり止まってしまう病態です。中枢型は、閉塞以外の理由で発生するSASです。

透析患者のSASのほとんどは、閉塞型SAS(OSA[オーサ])です。閉塞型SASが起こりやすいのは、肥満、顎が小さい、首が短いなどです。睡眠不足を訴える患者で上記のような特徴を持つ患者に対しては閉塞性SASを疑います。

また、透析中に睡眠している人を直接観察していてもSASを発見することがあります。いびきが大きかったり、いびき(呼吸)が途中で止まったり、呼吸停止により目覚めたりなど、透析中に寝ている患者さんを観察するだけでも何人か見つけることができます。

SASが疑われる場合は、簡易装置、もしくはパルスオキシメータで睡眠中のSpO2を調べます。簡易装置でAHIが20以上の場合、もしくはパルスオキシメータにて、ODI(一時間の3%酸素飽和度低下数)が10以上の場合は、専門病院でさらに詳しい検査PSG(終夜睡眠ポリグラフィー)が必要となります。
(ただし、AHIが40以上では、CPAP治療の対象)

PSGとは、SASの確定診断をする為の検査です。睡眠中に、「口・鼻の気流測定、いびき音、胸部の動き、体位、脳波(EEG)、眼球運動(EOG)、頤筋筋電図(EMG)、パルスオキシメータなど」数多くのモニタリングを実施して、SASを診断します。

透析患者の不眠症まとめ

不眠の症状や、それらの原因となる合併症について、自分から訴えない人も多いです。日頃からよく患者さんを観察して、疑いがあれば確認して積極的に治療していかなければなりません。

 

(参考文献)

・小池茂文:睡眠障害の改善は生命予後を改善する.臨床透析 2017;33:1121-1127
・http://www.sendai-kousei-hospital.jp/hospitalCalendar/admin/data/file/file20110719112433_44aa2.pdf
・http://heart-clinic.jp/index_qhm.php?%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E6%99%82%E7%84%A1%E5%91%BC%E5%90%B8%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4

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