ips細胞により自己腎移植ができる日は来るのか?

自己腎移植ができる日はくるのか?

現在の日本国内では、慢性腎不全になった場合の 腎代替療法としては「血液透析、腹膜透析、腎移植」の3つから選択することになります。

腎移植が最も、生活制限がなく生命予後が良いといわれています。ただ、日本国内では提供される腎臓の数が少なく献腎移植と生体腎移植を合わせても年間約1500例程度と非常に少ないです。また、腎臓を移植した場合も、拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を生涯飲み続けなくてわなりませんし、移植した腎臓が持つのも平均10年前後だそうです。

ips細胞により、自分の細胞から腎臓を作り移植することができれば、拒絶反応も起こらないので免疫抑制剤の服用の必要もなく移植腎臓の生着も長いと考えられます。今回は、ips細胞による腎臓作成の研究の現状と、後どのくらいの期間でips細胞による自己腎移植が実現するのかについて紹介します。

 

ips細胞による腎臓の研究の現状

ips細胞による腎臓研究の現状
2006年 京都大学の山中伸弥教授が人工多能性幹細胞(ips細胞)の作製に成功。その功績により、2012年にノーベル賞受賞する。
2013年 京都大学の長船健二准教授らはips細胞から腎臓の細胞を作ることに成功した。糸球体の細胞と尿細管の細胞を作ることに成功。
2013年11月 熊本大学 太口 敦博、西中村 隆一 教授らの研究グループにより、ips細胞から、腎前駆細胞の作製に成功。さらに、糸球体と尿細管を伴った3次元の腎臓組織の作製に成功
2014年11月 岡山大学病院の喜多村真治講師、杏林大学医学部薬理学教室櫻井裕之教授、槇野博史病院長らの研究グループは、ラットの成体腎から取り出した幹細胞を使って、試験管内で腎臓の一部であるネフロンを作成することに成功した。
2015年7月 京都大学の長船健二教授らとアステラス製薬の研究グループは、ips細胞から作製した腎前駆細胞を移植して、急性腎不全のマウスの腎機能障害や腎組織障害を軽減することに成功。
2016年4月 熊本大学発生医学研究所の谷川俊祐 助教、西中村隆一 教授らのグループは、ips細胞から作製した腎臓前駆細胞を試験管内で増やす方法を開発

 

腎前駆細胞とは?

腎前駆細胞という言葉が、何回も出てくているので簡単に説明します・・・

前駆細胞とは、幹細胞から発生して最終的に体を構成する何らかの臓器などに分化する細胞のことです。腎臓の前駆細胞というのは、細胞分裂を繰り返し最終的に腎臓になる細胞のもとのことです。2013年に熊本大学の研究グループが腎臓の前駆細胞の作成に成功しました。さらに詳しくは世界で初めてヒトiPS細胞から3次元腎臓組織作成に成功を参照ください。

腎臓は、体内の臓器の中でも最も複雑でありips細胞から腎臓を作り出すのは他の臓器と比較しても非常に難しいといわれています。網膜、軟骨、心筋など比較的単純な組織については、ips細胞により作成することに成功して、数年後には人体に対して移植を行う臨床試験が行われるなどと言われていますが、腎臓についてはまだまだです。

現在の研究段階では、ips細胞から腎臓の一部の細胞や組織が作れるようになった段階です。2013年に熊本大学で、糸球体と尿細管が繋がった組織の作製に成功したとありますが、この組織のサイズは1~2mmのサイズでありそれにつながる血管、遠位尿細管、集合管、腎盂、尿管など他の組織は、まだまだ作ることができていません。

仮にそれらを作ることができて人のサイズの腎臓の作製に成功しても、人体での作成環境と異なるため完全な機能を持つ腎臓が作れるとは限りません。

 

移植までに時間がかかる

10年後に、ips細胞により腎臓が作れるようになったとしても全ての慢性腎不全患者に自己腎移植を行うには非常に時間がかかるといわれています。現在日本国内での年間の腎移植の件数は1500件です。これは、提供される腎臓の数が少ないことも理由ですが、腎臓の移植医の数もそれほど多くないという理由があります。

健心会湘南東部総合病院腎臓・透析センター長の斎藤明先生も以下のように言われています。

現在、年間の腎臓移植件数は1500例であり、腎臓移植医の養成を急いで10年がかかりで5000例に増やしたとしても、自己腎臓移植を受けられる患者さんは10年で5万人です。30万人いる透析患者さんが自己腎臓移植を受けるためには、60年の年月がかかることになります。

透析ケア2015Vol.21No4P74-75より引用

まとめ

ips細胞による自己腎移植ができるようになるひが訪れるのは、まだまだ先が長いように感じます。また、仮に腎臓が作れるようになっても、移植医の数の関係で移植の順番が回ってくるのに長い年月がかかりそうです。