オンラインHDFの補液量と治療効果(掻痒感、関節痛、痺れを改善するための条件)

オンラインHDFの現状

2012年の診療報酬改定で、オンラインHDFが認められたことにより、オンラインHDFを実施している施設が急激に増加しています。オフラインHDFでは、実施条件に『透析困難症、透析アミロイドーシス』などの理由が必要でしたが、on-lineでは誰にでも使用することができる為です。

透析医学会の統計によると、2014年末でオフラインHDFを施行している患者さんの数は36090人、オンラインHDFの人数は6315人です。透析患者の約7人に1人は、HDFをしていることになります。

そして、オンラインHDFの補液方法は、前希釈補液が91.8%、後希釈が8.2%の割合でした。補液量の平均値は、前希釈で39.6L、後希釈8.0L。オンラインHDFにより大量の補液が使えるメリットを活かした前希釈での補液方法を選択している施設が多いようです。

今回は、HDFの効果と、個々の患者さんに合ったオンラインHDFの条件の設定方法について紹介します。

HDFの効果

HDからHDFに変更するときに、患者さんからよく「HDFって何がいいのか?」と聞かれます。HDFの利点は、実は非常にたくさんあります。以下に順番に紹介します。

生命予後の改善

HDとオンラインHDFでの生存率を比較したところ、オンラインHDFでの生存率のほうが高いことが証明されています。特に、前希釈で高置換群(補液量40L以上)において予後改善効果が認められています。これは、去年の透析医学会でも公演されていました。

合併症の改善

一般的に、HDFの効果としては「透析アミロイドーシスなどの合併症の予防、透析低血圧など透析困難症の改善」が認められていました。さらに、最近の研究では、α1Mg領域までの毒素を積極的に除去することにより、「掻痒感・イライラ感の改善」「骨関節痛・しびり感改善」「RLS改善」「ESA使用量の軽減効果」などの効果が現れることが報告されています。

そして、各合併症に対する治療効果が表れる為にはどの程度の、α-1MGやアルブミンを除去すればいいかは、おおよその値は分かってきています。以下の表に簡単にまとめました。

それぞれの患者に適したHDF方法を処方することが重要です。
HDFの除去率と臨床効果

合併症治療時の除去目標値(※1より)

各合併症治療に対するHDF方法

もう少し具体的に、各合併症に対する治療条件の設定について説明します。

透析困難症の改善

透析困難症(血圧低下)の予防では、物質の除去量をそれほど増やす必要はありません。なぜなら、透析困難症にHDFが有効な理由は補液による効果だからです。

・オンラインHDFの大量補液による効果
血漿浸透圧の維持
血漿の冷却による交感神経機能の維持・亢進
電解質補充によるによる心機能維持・安定化
小分子量物質の除去効率低下による血漿浸透圧の急激な低下の防止(前希釈の場合)

(Clinical Engineering2016 Vol.27 No8より改変して引用)

透析困難症の治療に対しては、アルブミン漏出量の少ない膜(アルブミンのふるい係数が少ない膜)を選択します。α1Mgをがんがん抜いたりしてアルブミン値が低下すると血漿浸透圧が低下してかえって血圧低下しやすくなる可能性があるためです。アルブミン漏出量の少ないマイルドなHDFフィルタを選択します。

合併症の予防(アミロイドーシス、貧血)

HDから、HDFに変更するとヘモグロビン値が上昇したりなどしてエリスロポエチン製剤の使用量が軽減できることがあります。これは、HDFにより造血を阻害する何らかの物質が除去できるためでないかと言われています。

ESA低反応性腎性貧血改善、アミロイドーシスの予防、掻痒感・イライラ感改善の効果が表れる為の条件としては、α-1MGの除去率20~40%,アルブミン量出量1.5g~4g程度と言われています。

ちなみに除去率を求める場合、除水による濃縮を考慮しないといけない為、Htも測定して補正する必要があります。アルブミンの漏出量は、排液を採取して測定します。

・参照:アルブミン漏出量評価の排液採取法(部分貯留・全量貯留)について)
・参照:透析での除去率の求め方

骨関節痛・しびれ感改善・RLSの改善

骨関節痛・痺れは、長期透析患者さんに多い合併症です。透析中後半に、痛みが出現すると訴えられる患者が多く、痛みがひどくなると、透析の継続が困難になるほど大変つらい症状です。

骨関節痛・しびれの原因は、上記アミロイドーシスや合併症の原因物質よりさらに大きな物質が原因であることが考えられています。これらの症状を除去するためには、α-MG30~40%、アルブミン漏出量4~6g程度の条件に設定することにより治療効果が表れるようです。

RLS(レストレスレッグス)症候群とは、別名むずむず症候群などと呼ばれます。寝ているときなどに、足の深部に不快感やむずむずとして、じっとしていられなくなる疾患です。透析患者以外にも若い女性に発症することがあります。骨関節痛・しびれ改善の原因物質と同様に大きめの毒素が原因と考えられています。

合併症治療目的別治療条件まとめ

・Online-HDF(前希釈)における合併症治療目的別治療条件

対象疾患 除去率・除去量 補液量
α1-Mg Alb
透析困難症 10~20 1~3 MFX-21eco
TDF20M
MFX-25eco
ABH-21F
40~70
合併症予防 20~40 1.5~4 TDF-20H
MFX-21-Seco
ABH-21P
40~70
骨関節痛・痺れ 30~50 3.5~6 MFX-21Ueco 40~70
RLS 35~50 5~6.5 GDF-21
MFX-21Ueco
40~70

α1-Mg、アルブミンなどの除去量は、中空糸膜の側孔のサイズ(膜の種類)と補液量に依存します。ただ、GDF-21の場合は、前希釈で補液60Lでもアルブミン量出量が10gを超えるという文献も見たことがあります。積極的にアルブミンを抜くことによりアルブミン代謝が良くなり合併症治療に効果があると言われたりもしますがアルブミン値と生命予後にも大きな相関があるため、アルブミン値が著しく低下してしまう場合は、アルブミン漏出量を下げるような条件設定に変えなければなりません。

私の施設では、3.5g/dlの血中アルブミン値は維持できるように調整していますが、川島病院の道脇先生によりますと3.2g以下で死亡リスクの増加が顕著であったので3.2g/dlを最低ラインで調整されているそうです。

オンラインHDF前希釈での注意点

ここからは、オンラインHDFを安全に施行するための注意点について紹介します。

血液流量の設定値

オンラインHDFにおいて、前希釈で補液する場合は、HDFフィルタの手前で補液します。したがって、補液で薄まった血液がフィルタに流れるので透析液と血液との濃度差が少なくなり、拡散量が低下する恐れがあります。

拡散量が下がると、小分子の除去量が低下します。特に低下して困るのが、リンなどです。それを予防する方法としては、血液流量を多めにする。透析時間を延長する。というのがもっとも簡単な対策です。

TMPの監視

HDFのフィルタにより異なりますが、補液量を増やせば増やすほど透析中にTMPが上昇しやすくなります。HDFでのアルブミン量出量の大半は、透析開始から30分以内と言われていますが、TMPが上がりすぎると透析後半でもアルブミン量出量が増大する恐れがあります。オンラインHDF中は、定期的にTMPをチェックしてTMPが上がりすぎた場合は、補液量を落としたり、次回からフィルタを変えてみたり(フィルタサイズを大きくする)などの検討が必要です。

血中アルブミン値に注意

種々の症状を抑えるには、α1Mg領域までの毒素を大量に除去する必要があります。ただし、α1Mgとアルブミンの大きさは近似しておりα1Mgのみを除去することは不可能です。α1Mg領域までの毒素を大量に除去しようとするとアルブミンも大量に除去されてしまいます。

患者さんの血中アルブミン濃度を考慮してHDF膜の選択が必要なのと、HDFによりアルブミン値が著しく低下してしまった場合は治療条件を緩和してやる必要があるかもしれません。患者さんに対しての食事指導も大切です。

まとめ

HDFの膜選択や補液量の変更で劇的に症状が改善する症例を目にしてきました。患者の血液データや患者の訴えをよく聞いて、それぞれの患者さんにあった、HDF方法を選択することが大切です。。

 

(参考文献・引用)
1)Clinical Engineering2016 Vol.27 No8

2)桜井健治種:々の患者に対する詩的条件の設定法,Clinical EnineeringVol.27 P655

3)日本透析医学会:図説わが国の慢性透析療法の現状