透析は「つらい、しんどい」のか?具体的なつらさについて

つらい

透析室で働いていると患者さんから『つらい、しんどい』という言葉をよく聞きます。人工透析をうける患者さんはいったい何がつらいのか、しんどいのかについてまとめました。

つらさをちょっとでも和らげる方法についても書きましたので参考になれば幸いです。

透析で肉体的につらい事

穿刺の痛みがつらい

最もよく聞く悩みは穿刺の痛みがつらいということです。精神的な悩みより肉体的な悩みのほうが誰にでも言いやすいからかもしれません・・・

透析では、脱血と返血用に2本の針を刺します。多量の血液を取り出さないといけない為、針の太さは、17G~15Gと献血の針(18G)よりもさらに太いです。

私も、後輩の練習などで何回も刺されたことがありますが「けっこう痛いです。」場所によっては、電気の流れるような痛みを感じることもあります。(神経に刺さったのかな?)

これが、週に3回はとてもつらいです。失敗しないような簡単な血管ならいいですが、度々失敗されたり、こねくり回されたりするとさらに不安だし痛いんだと思います。

穿刺時以外にも、透析中に針先が痛いと訴える患者さんも多いです。チクチクする。痛いけど我慢できそうな程度、というものから、痛いから抜いて差し替えてくれ、もう透析終わってほしい、という我慢できない痛みなど様々なようです。

穿刺時の痛み緩和には、ペインレステープやエムラクリームなどの麻酔薬を使用します。透析中の針先の痛みは、針先が血管壁にあたらないように調整したり、加温、シップなどで対応しています。

腰、肩が痛い

透析中は、シャント肢に刺した針にチューブが装着されます。その為、シャント肢の動作や体動が制限されます。長時間同じ姿勢でいると腰や背中が痛くなる、腕をじっとさせていると肩・腕がだるくなります。

10年以上透析をしている患者さんの中には、アミロイド沈着による肩関節症を合併している場合もあります。アミロイドによる肩関節症は、透析時に悪化しやすい傾向があります。

腕がだるくならない為には、透析中に透析チューブにテンションがかからない程度に適度に動くことです。また、湯たんぽなどで温めている患者さんも見かけます。

穿刺者は、患者が多少腕を曲げても警報が発生しないように肘部の血管の穿刺はできるだけ避けましょう。

アミロイド沈着による肩関節症は座ると少しマシになります。ひどい場合は、内視鏡による手術も可能なので専門病院で治療します。

透析中の気分不良、血圧低下

透析中の気分不良は、過除水による血圧低下が原因であることが大半です。除水速度が速いと、血液からの除水とプラズマリフィリングの均等が崩れて、血管内脱水になり血圧が低下します。

糖尿病患者や長期透析患者は自律神経の調整機能に障害を抱えている場合が多く血圧低下が起こりやすいので注意が必要です。

下肢の引き攣りがつらい

引きつりも非常につらいですね。

下肢の引きつり(こむら返り)が起こりやすい人とそうでない人とでは、個人差がありますが、除水量が多いときに発生しやすいと感じます。足以外にも胸などいろんな場所で起こります。

予防法は、体重増加量を少なくして時間当たりの除水速度を下げることです。体重増加量が多いときは、時間延長も効果的です。

投薬としては、透析中や直前に芍薬甘草湯を内服したりもしています。

透析後の倦怠感がつらい

透析後は、だるくて何もできない。透析が終わってからの一日がつらい。という話もよく聞きます。特に、透析中に血圧が下がったときに倦怠感が大きいようです。ただ、透析中は精神的にも、肉体的にも披露するので透析後はぐったりするのが普通かもしれません。

まれに、透析後もぴんぴんしているように見える患者さんもいますがポジティブな人が多いような気がします。気持ちの持ち方も大切なのかもしれません。

溢水による呼吸不全、動悸がつらい

透析間に水分を取りすぎて体液が過剰になると、心臓が膨らみすぎて血液が遅れなくなる(うっ血性心不全)や、肺に水が溜まって呼吸が苦しくなる(肺水腫)を合併します。

総合病院で働いていた時は、溢水による心不全で夜中に緊急搬送されてICUで透析をする。ということを何度も経験しました。人間にとって呼吸ができなくなるというのは最大の恐怖で非常につらいと思います。

たまには、はめを外したくなることもあるかもしれませんが一線を越えてしまってはいけませんね。

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透析で精神的につらい事

長時間の拘束がつらい

透析で最もつらいのが長時間の拘束です。週に3回4時間透析というのがスタンダードな治療法です。中には、5時間、6時間の透析が必要な患者さんもいます。雨の日も、台風の日も、盆正月関係なくいかないといけないというのは大変な心理的プレッシャーです。

『もう来たくない、透析を辞めたい』と相談されることもあります。つらいことを相談できる透析仲間を持つことも大切だと思います。また、気軽に相談できる透析スタッフがいればいいのですが。

透析中が暇だという意見もよく耳にします。最近の透析室は、一人一台のテレビを用意したり、wifiを設置したりして工夫していますがそれでも、4時間をじっと寝ているのはつらいことだと思います。透析しながらできる趣味(読書、DVD鑑賞)などがあればいいですね。

中には座って内職をされている方もいました。

金銭面や仕事がつらい

仕事をしたくてもできないのがつらい。という意見も多いです。透析は、週三回4時間という拘束がある為、今までと同じように常勤で働くのが難しくなるという問題も発生します。体調が悪くなる時もあるし、激しく体を使う仕事は難しくなる場合もあります。

障害者年金の額だけで生活するのは難しいので、お金に対する不安も大きいようです。

周囲の理解がないのがつらい

透析患者の場合、見た目は健常者と変わりがない為、周囲の人から理解されないことが多いです。貧血、高血圧など合併症のせいで体調が悪くても、やる気がないと思われることもあるようです。

また、透析をすることになるのは日頃の生活が悪いから自業自得だ。というような偏見を持っている人もいます。健常な人と一緒に、飲食する場合も、もっと飲めとか食べろとか言われたりなど苦労が多いです。

生活の監視がつらい

飲水量や、食事内容について家族や、医療スタッフに口うるさく指導されるのもストレスになります。上から目線で話している医療スタッフを見かけることもありますが、言い方は注意しなければならないと思います。

透析を一生続けなければならないということがつらい

一生治らないという腎臓病を抱えて、透析を辞めると死んでしまう。という死と隣り合わせの生活をするのは想像を絶するプレッシャーがあります。透析スタッフでも、このような慢性腎疾患患者の心理(サイコネフロロジー)について習熟している医療従事者も少ないです。

精神的な負担をどのように緩和させるかが大きな課題となります。

水分、食事制限がつらい

人間の三大欲求の一つである食事が制限されるのは大変つらいです。年配の人と話していると、歳をとってからの楽しみは食事くらいしかない。という話をよく聞きます。それが自由にできないというのは、ストレスになるでしょう。

ただ、透析食でも付けに工夫をすれば美味し料理を作ることができます。透析患者の料理レシピなどの本を購入していろんな料理にチャレンジするといいです。

合併症、病気による不安がつらい

不眠症、痒み、不眠症、高血圧、抑うつ、アミロイドーシス、狭心症など透析による合併症や、糖尿病、高血圧など透析の原因となった原疾患など多くの合併症を抱えることになります。

透析患者は、心不全、ガン、脳血管障害、感染症などの発症率も非透析者と比較すると数倍以上のリスクがあります。それにより統計的な平均余命(寿命)が短いというのも落胆させる理由になるのかもしれません。

透析仲間の死がつらい

同じ透析室で治療を受ける患者の死は、非常につらいです。特に仲のいい患者同士だと戦友のような友情が芽生えることもあるそうです。つらい状況を戦う仲間がなくなるのはつらいですね。

透析でのつらい状況を乗り越えるには

透析患者の心理

透析導入時からの患者心理は以下のような経過をたどります。

ショック⇒否認⇒怒り⇒抑うつ⇒受容⇒希望

透析患者さんのブログなどを拝見していると、受容までに5年程度かかったというのが多いようです。個人的な経験でも5年程度透析をしている人は淡々としているようにも見えます。ただ、中には死ぬまで『怒り、抑うつ』状態の方も見られます。

できるだけ、早く透析治療を受容した生活してもらいたいと思いますがなかなか難しいですね。

抑うつを乗り越えるためには

透析を受容するには、周囲のサポートや理解も大切ですが一番大切なのは本人の考えです。「抑うつのまま死を迎えるのか、開き直って残された時間を充実させて過ごすのか」選択するのは自分自身です。

同じような経験をしているひとも多くいますので、透析患者さんが書いた書籍をよんだり、認知行動療法などを実施してできるだけ前向きになれるようになればいいなと思います。

以下にオススメの本を紹介します。認知行動療法は私も実践したことがありますが、根本的な抑うつ解消や予防に効果的です。