小児透析の方法まとめ

はじめに

我が国で、小児末期腎不全患者に初めて透析療法が施行されたのが1965年。それから半世紀経過しました。小児透析が始まった当初は、とにかく延命することが目的でした。

現在では、延命は当たり前で健常者と同様に心身共に成長できるように治療することが目的となっています。今回は、小児に対する腎代替療法について紹介します。

小児透析の現状

小児末期腎不全患者の症例数

我が国で小児透析患者の発生数は、100万人に3人と、世界でも最も少ないです。幼少期より学校での検尿が実施されていることにより糸球体腎炎がの早期発見・早期治療が可能だからです。

2009年末の調査によると新規導入患者のうち15歳未満の小児は、0.091%ほどと小児の末期腎不全患者は非常に少ないです。

小児末期腎不全の原疾患

小児の末期腎不全の原疾患の原因は、約500種類ほどあり多様です。その中でも、頻度の多い原疾患感は以下になります。

低・異形成腎,巣状分節性糸球体硬化症
先天性ネフローゼ症候群,ネフロンろう
逆流性腎症,アルポート症候群
急速進行性腎炎症候群,閉塞性尿路疾患
デニス・ドラッシュ症候群,多発性のう胞腎
新生児期ショック,急性心不全
溶血性尿毒症症候群,ネフローゼ症候群など
(血液浄化療法ハンドブックより引用)

原疾患で頻度の多い順に、羅列しています。

小児末期腎不全の原疾患として、圧倒的に多いのが低・異形成腎。先天的に腎臓や尿路に障害がある疾患で、原疾患の約1/3を占めています。その次に多いのが、巣状分節性糸球体硬化症。糸球体に分節状の硬化を認められる疾患です。この2つが小児末期腎不全の原疾患の半分を占めます。成人の原疾患とは大きく異なります。

小児末期腎不全の腎代替療法

小児の場合、最も多い腎代替療法は、PDで約85%を占めています。残りは、血液透析(HD)、先行的腎移植(PKE:preemptive kidney transplantation)が半々くらいです。

小児用の血液透析機器の開発により体重が3kg程度から血液透析が可能となっています。また、腎移植は、体重7~8kg程度必要と言われています。

PD(腹膜透析)

小児の多くがPDを選択するには以下の理由があります。

  • バスキュラーアクセスが不要
  • 循環動態に対する影響が少ない
  • HDに比べて食事制限がゆるやか
  • 在宅医療で通園や通学が容易

(血液浄化療法ハンドブックより引用)

最も大きな理由は、食事制限がゆるやかで充分なエネルギーを得られやすいという点です。腹膜透析は、カリウムの制限がない。塩分制限量もHDよりもゆるい。ということで乳幼児のミルクを中心としたミネラル、水分量の多い食事に対して、HDよりPDが有効です。

特に、乳幼児の成長には十分なエネルギー摂取が非常に重要です。腹膜透析では、透析液の浸透圧を保つために、グルコースを添加している為、そこからのエネルギー吸収も見込むことができます。

さらに、PDの中でもAPDを行っている患者さんが多数です。通常のPDでは、1日に4回ほど透析液を手動で交換して24時間継続的に透析をします。

APD(自動腹膜透析)は、機械を用いて自動で透析液を交換する方法であり透析液交換の手間を減らすことができます。

APDは昼間に透析液を貯留させるCCPDと昼間の貯留を行わないNPDに別けられます。具体的な治療方法については、小児PD研究会の小児PD治療マニュアルを参照ください。

先行的腎移植(PKE)

先行的腎移植というのは、末期腎不全になった場合にPDやHDなどの透析療法を施行する前に、腎移植を施行方法です。小児以外の大人でも行われています。

PKEでは、血液透析を導入してから腎移植をする場合と比較して、移植腎の生着率がよく患者生命予後も優れていると報告されています。

<小児先行的腎移植(PEKT)の長所>

  1. 腹膜透析カテーテル挿入などのアクセス手術やアクセス関連合併症の回避
  2. 透析にかかわる時間的拘束がない
  3. 食事・水分制限がない
  4. 腎不全に伴う合併症(成長障害や心血管系障害など)の回避
  5. 移植腎生着率の向上
  6. 生命予後改善の可能性

(北米小児腎移植研究のデータより引用)

小児末期不全患者において最も優れた腎代替方法としては、PKEです。ただ、腎移植が可能な体格としては、体重7~8kg程度必要です。そのため、新生児ではPKEはできません。

移植可能な体格まで育つ間は、他の腎代替療法を行うことになります。また、難治性ネフローゼ症候群(再発しやすい)、下部尿路に障害(下部尿路再建術が必要)がある場合なども腎移植が困難です。

親族などからの、腎臓の提供が難しい場合は献腎移植になります。献腎移植は、死体腎を移植する方法です。献腎移植の優先度は、小児では優遇され透析歴が5年の時点で約半数は腎移植しています。大人よりは献腎移植の可能性が高いです。

小児の場合、腎移植後も課題が多くあります。腎臓移植後は、拒絶反応を防ぐためにステロイドを使用することがありますが、ステロイドは成長ホルモンの分泌を抑制するので成長期には減量や使用停止が必要となります。そのため、成人と比較すると拒絶反応を防ぐための管理方法が難しいです。

 

血液透析

血液透析用の機器の開発により、新生児(体重3㎏)程度からでも血液透析療法が可能となっています。(参照:体外循環による新生児急性血液浄化療法ガイドライン

小児では、ブラッドアクセスの第一選択は長期留置カテーテルです。血管が細いため、内シャントの作成が困難であり穿刺の苦痛も成人以上に大きく精神発達に影響が良くない。カテーテル挿入部位としては、内頸、外頸、腋窩、鎖骨下、大腿静脈が可能。腋窩、鎖骨下は閉塞した場合に、将来内シャント作成時に静脈高血圧などの原因になります。また、大腿静脈も腎移植時に使用するため避けたほうが無難です。

小児血液透析を実施する場合の注意点としては、プライミングボリューム(PV)があります。小児は、血液量も少ないため大人用の回路で脱血すると失血性ショックを起こしていしまいます。

PVの目安としては循環血液量の10%以内。血液透析用の機器で、難しい場合(体重が10kg未満)はCHDFを選択します。旭化成の持続的血液浄化器では、膜平米0.1m2(プライミングボリューム12ml)からあります。

それでもPVが10%以内にすることが難しい場合は、あらかじめ回路内を5%アルブミン溶液や赤血球濃厚液で満たしておきます。この場合は、返血時は、回路内の血液は体内に戻しません。透析時間・透析頻度は、成人以上に長くする必要があります。小児、乳幼児ではミルクを摂取するため水分増加量が多くなります。

その他の条件については、以下の表にまとめました。

小児HD条件
ブラッドアクセス 長期留置カテーテル(内頸)
膜サイズ 体表面積の50~75%
血液流量 3~4ml/min/kg
透析液流量 QBの2倍ほど
総除水量 体重の5~7%
除水速度 10~12ml/kg/hr
抗凝固剤 ヘパリン
初回20~50U/kg,持続10~25U/kg/h
出血傾向がある場合は
メシルサンナファモスタット
0.1~1.0㎎/kg/h
ダイアライザ出口のACTが200秒前後になるように調整

(血液浄化療法ハンドブック 改定第6版 P257より作成)

その他の注意点としては、小児の場合は、ちょっとした過除水などによる身体的影響が大きいため、体重ベッド、BV計などで透析中も体重を確認しながら施行することが望ましいです。

装置からの液漏れや、調整ミスにより数キロ以上過除水をしてしまった経験があります。体格の大きな大人だったため、容態の変化が少なかったですが体重の小さな小児であれば非常に危険でした。

 

小児末期腎不全患者の合併症

被嚢性腹膜硬化症(EPS)

CAPDの合併症で一番怖いのが被嚢性腹膜硬化症(EPS)です。EPSは、腹膜透析を長期間行うことで腹膜が硬化して腸に癒着、腸閉塞を繰り返す疾患です。

特にEPSによりイレウスになった場合は予後不良です。長期間CAPDをしている場合は、除水不全やPETによる腹膜機能を検査してEPSが悪化する前に腹膜透析を中止しなければなりません。

参照:小児PD研究会-硬化性被嚢性腹膜炎(SEP) 予防のためのPDの中止基準

溢水

乳幼児はミルクや離乳食などからによる栄養補給になる為、透析間の水分上昇率が増加しがちになります。血圧、心胸比、心エコー、hANP、BNPなどを参考に適正なDWに設定することが大切です。

腎性骨異栄養症

腎性骨異栄養症は、腎不全によるリンやPTHの異常により、骨代謝が促進されて骨がもろくなる症状です。小児の腎性骨異栄養症では、成長障害にも直接関与するため特に管理が大切です。高リン血漿の訂正や活性型ビタミンDなどの投与で血清PやPTHを適正に保つようにします。

成長障害

内分泌異常、尿毒症、腎性貧血、アシドーシス、骨ミネラル異常、栄養不良、アミノ酸代謝異常など小児腎不全患者は、多様な原因で成長が障害されます。

成長障害は、直接生命にかかわりませんが極端な低身長は劣等感やQOLの低下につながります。それぞれの症状を訂正し、rHuGH(遺伝子組み換えヒト成長ホルモン)を投与して成長障害を防がなければなりません。

小児慢性腎不全患者の死因

小児慢性腎不全患者の死因で多い合併症は、「心不全、肺水腫、腹膜炎、敗血症、脳血管障害、肺炎」です。PDのカテーテルでは小児の皮下組織は薄くて脆弱であり成人と比較するとリークや感染が起こりやすいです。また、心不全、肺水腫など成人でも多い合併症も同様に注意が必要です。

最後に

小児の慢性腎不全は非常に少なく、さらに腎代替療法としてはPDが選択されます。その為、透析室で勤務していても小児に対して血液透析を行うことはめったに経験しないことだと思います。ただ、もしもの為に基本的なことを知っておけば急に小児透析をしなければならなくなった時にも冷静に対処できると思います。

(参考文献・引用)
血液浄化療法ハンドブック 2017

スポンサードリンク