トレミキシン(PMX)によるエンドトキシン吸着の効果について

今回は、敗血症などの治療に用いられるトレミキシン(PMX)によるエンドトキシン吸着療法について紹介します。PMXは急性血液浄化の治療ではとてもよく使用されており効果も証明されています。

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PMXの基本知識

トレミキシン(PMX)とは

トレミキシンは、エンドトキシン吸着を目的とした、血液浄化療法に用いられる血液浄化器です。主に、腹腔内感染症による敗血症性ショックに対して行われます。

血液浄化療法の種類としては、血液をそのまま吸着器に流す、血液吸着(DHP:direct hemop perfusion)です。ちなみにトレミキシンは製品名で、トレミキシンを用いて行う血液浄化療法をPMXと呼んだりします。

吸着に用いられる素材は、ポリミキシンBが固定化されたポリスチレン誘導体繊維によります。東レが販売しています。

トレミキシン(メーカーHP)

エンドトキシンとは

エンドトキシンとは、グラム陰性桿菌の外膜に存在するリポポリサッカライド(LPS)です。特に、LPSの一部であるリピドAに毒性があります。

エンドトキシンが血液中に侵入すると、発熱や血圧低下等のショックを引き起こ、重症化すると敗血症・多臓器不全を発症させます。ちなみに、敗血症は細菌などに対する免疫反応が過剰となり高サイトカイン血症をきたす病態です。

 

PMXの吸着の原理

PMXでは、ポリスチレン系不溶性不織布に、ポリミキシンBを科学的に固定しています。この、ポリミキシンBにエンドトキシンのリピドAがくっつくことにより、エンドトキシンを中和して、エンドトキシンの毒素を弱めることができます。

吸着の原理は、ポリミキシンBの直鎖とリピドAの脂肪酸との疎水結合及び、ポリミキシンB分子中のアミノ酸の陽性荷電とリピドA部分のリン酸イオンの陰性電化による静電結合と考えられています。
PMX構造
(東レメディカル株式会社 トレミキシンカタログから引用)

PMXの保険適応

(医科診療報酬点数表2012 より抜粋)
エンドトキシン選択除去用吸着式血液浄化法は、次のアからウのいずれにも該当する患者に対して行った場合に算定する。
ア)エンドトキシン血症であるもの又はグラム陰性菌感染症が疑われるもの
イ)次の(イ)~(ニ)のうち2項目以上を同時に満たすもの
(イ)体温が38度以上又は36度未満
(ロ)心拍数が90回/分以上
(ハ)呼吸数が20回/分以上又はPaCO2が32㎜Hg未満
(ニ)白血球数が12,000/㎜3以上若しくは4,000/㎜3未満又は桿状核好中球が10%以上
ウ)昇圧剤を必要とする敗血症性ショックであるもの(肝障害が重症化したもの(総ビリルビン10㎎/dL以上かつヘパプラスチンテスト40%以下であるもの)を除く。)

 

手技量・償還価格

手技量 2000点(平成30年)
材料(償還)価格 35万6千円(平成30年時)

プライミングは、回路が単純で簡単です。吸着式血液浄化法の手技量は、2000点となっています。材料価格もかなり高額ですね。

PMXの実際

PMXのプライミング

充填されれている液が、pH2の強酸の為、生理食塩水をたくさん流して洗浄する必要があります。膜サイズにより、洗浄に使う生理食塩水の量は異なります。PMX-20Rでは、4L生食、PMX-5Rでは、2L生食、PMX-1Rでは、500ml生食で洗浄します。

その後、抗凝固剤を添加した、生食で洗浄します。具体的には、500ml生食にナファモスタットメシレート20mgを添加した液または、500ml生食にへパリン2000単位添加した液で洗浄します。

PMXの治療条件

血流 抗凝固剤 時間
pmx-01R 8~12ml/min フサン30~40mg/h
または
へパリン
初回40~60単位/kg
持続40~60単位/kg
2時間
pmx-05R 20~40ml/min
pmx-20R 80~120ml/min

通常の大人の場合は、pmx-20Rを使用します。ETの吸着は2時間が限度ですが、それ以上実施すると他の炎症性物質を吸着できるという報告があります。

外科手術後に、施行することが多いので抗凝固剤はフサンを使われることが多いです。

PMXの使用の注意

麻酔薬、筋弛緩薬、アミノグリコシド系抗生物質と併用すると、神経筋遮断作用(クラーレ作用)により、呼吸抑制の可能性があります。

また、トレミキシンはエンドトキシン以外にも血小板も吸着します。血小板数についても、確認しておく必要があります。

PMXの効果

以下の効果が報告されています。

  • 平均血圧の上昇
  • 昇圧薬使用量の減少
  • 肺酸素化能の改善
  • 生命予後の改善

重症敗血症患者に、トレミキシン施行例と非施行例を比較した場合、28日後の生存率は、トレミキシン施行例の方が優位に高いことが報告されています。

ただ、海外の文献によっては生存率に効果がなかった。という報告もちらほら見られます。PMXのメーカーパンフレットにも臨床効果について搭載されていますのでご参照ください。

トレミキシン(パンフレット)

 

個人的感想

透析施設がある病院で勤務している場合、腸穿孔の発症時にPMXを施行することが多いです。腸穿孔とは、腸に穴があいてしまう病態です。腸に穴があくと、その穴から便と一緒に菌がおなかの中に入ってしまい血液中に混入してしまいます。

したがって腸穿孔を起こすと、高い確率で敗血症になるため、腸穿孔を起こしたら、敗血症にならなくても予防も含めて、腸穿孔治療の外科手術後にPMXを行なったります。

PMXが効果的に聞いた場合は、治療後すぐに血圧が上昇して安定することが多いように感じます。治療時間の目安は、2時間とされていますが、長時間することにより、エンドトキシン以外の他の炎症性物質の吸着ができて治療効果が上がるという報告もされており、7時間、8時間と、長時間施行するケースもあります。

そのほかの方法としては、CHDFとPMX(トレミキシン)による血液吸着を同時に行う方法もあります。CHDFのフィルターの手前にPMXを直列に接続することにより、CHDFとPMXを同時にすることができます。同時にするための、チューブも市販されています。

敗血症の治療には、他にはセプザイリスによる(DHP)または、CHDFも行われています。セプザイリスについては、こちらにまとめていますので、是非参考にしてください→セプザイリスについて

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