透析患者の余命について。

今回は、透析患者の余命について紹介します。余命とは、あと何年生きられるか?という指標です。また、後半には透析をしながらでも長生きするための生活方法や透析方法について紹介します。

透析患者の余命は

透析患者の平均余命について

日本透析医学会の統計調査によると、『透析患者さんの平均余命は、どの年齢においても、同性・同年齢の一般人口平均余命の概ね半分の値を示した。』と記されています。
平均余命とは、あと何年生きることができるかという年数です。

厚生労働省が2013年に発表した日本人の平均寿命は、男性80歳、女性86歳。
平均寿命から、現在の年齢を引いた値が平均余命となります。たとえば、現在30歳の男性の場合は、平均寿命の80歳-30歳=50歳となり、現在30歳の男性の平均余命は、50年ということが分かります。透析患者さんの場合は、余命が半分となるので(80歳-30歳)÷2=25年となります。

一覧表で表すと以下の図のようになります。

透析患者の平均余命(年代別)

平均余命
現在の年齢 日本人男性 透析患者男性 日本人女性 透析患者女性
30歳 50年 25年 56年 28年
40歳 40年 20年 46年 23年
50歳 30年 15年 36年 18年
60歳 20年 10年 26年 13年
70歳 10年 5年 16年 8年

透析患者さんの平均余命は、透析をしていない人と比べると半分になってしまいます。このデータでは、透析患者さんをひとくくりに平均寿命を出していますが、透析の導入疾患によっても余命は変わります。

一般的に、導入疾患が糖尿病の場合は特に厳しいです。

これは、透析を導入された方に対しては、かなり厳しい現実です。では、なぜ透析患者さんは、平均寿命が短くなるのでしょうか?次に、透析患者さんの死因(死亡する原因)について説明します。死因を知り、その対策を行えば平均寿命を延ばすことができます。

透析患者の死因

・死因の順位

・透析患者さんの死因
1位「心疾患(心不全・心筋梗塞)」・・・28%
2位「感染症肺炎敗血症など)」・・・20%
3位「悪性腫瘍」・・9%
4位「脳血管障害」・8%

・日本人全体の死因
1位「悪性腫瘍」・・・30%
2位「心疾患」・・・・16%
3位「脳血管障害」・・10%
4位「感染症」・・・・9%

透析患者さんの死因で1位は、「心疾患」です。心疾患とは、心不全や心筋梗塞などありますが、圧倒的に心不全が多いです。それぞれの疾患についてもう少し詳しく説明します。

・心不全

心不全とは、なんらかの理由により、心臓の働きが落ちて、心臓から全身の臓器に血液を送ることができなくなり、全身に酸素を送れなくなり意識がなくなり死亡してしまうという状況です。

透析患者さんでは、心不全になりやすい理由についてはさまざまあります。腎臓から尿を作って水分を排出することができなくなったり、カリウムの排泄ができなくなるからです。心臓は、ふくらんだり、ちじんだりを繰り返して、ポンプ作用により血液を全身に送り出しています。

透析患者さんでは、水分を過剰に摂取すると、体の中に水分が溜まり、特に心臓や血管内に水分が溜まります。そうなると、心臓がパンパンに膨れ上がり、縮むことができなくなります。それにより血液が全身に送れなくなります。

他には、カリウムを含む食べ物を過剰に摂取することで、高カリウム血症になり、不整脈が出現して心停止する危険性もあります。心不全は、透析患者さんが若くても、ご年配でも同様に発症します。

心不全では、突然死を起こすため透析患者さんでは平均寿命が、ぐっと短くなるわけです。逆に、水分摂取量に注意して生活することで、心不全を起こすリスクを下げることができます。

関連記事:透析患者の心臓の特徴とは?狭心症,心肥大,弁膜症を理解しよう

・感染症

透析患者さんが感染症になりやすい原因は、食事制限が厳しい為、栄養障害になりやすい為です。栄養状態が悪くなると、免疫力が低くなり菌やウイルスによる抵抗力が落ちて肺炎などの感染症になりやすくなります。

・悪性腫瘍

悪性腫瘍とは、癌のことです。透析患者さんでは、腎臓の癌が多いようです。しかし、透析患者さんは定期的に病院に通っていて、定期的に検査をしているので悪性腫瘍の発見が早く見つかることが多いです。

関連記事:透析患者の悪性腫瘍の特徴

・脳血管障害

脳血管障害とは、脳の血管から血液が漏れる「脳出血」と脳に血栓などが詰まり脳細胞が死んでしまう「脳梗塞」に分けられます。脳血管障害についても、非透析者と比較すると発症率が2~3倍と高くなっています。

その理由は、透析患者さんは透析をしていない人と比べると動脈硬化の進行が早い為です。なぜ早いかというと、透析患者さんでは、血液中のCa(カルシウム)やP(リン)が上昇しやすく。これらが、血管などに沈着して血管が硬くなってしまうからです。(二次性副甲状腺機能亢進症)

他にも、体に水分が溜まりやすくなり、水分が溜まると高血圧になり、高血圧も動脈硬化や脳出血発症の危険性を高めます。

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透析患者の余命を伸ばすには?

ここまでは、透析患者の生命予後は、あまり良くないということを書きました。非透析患者の半分の余命と言われています。

しかし、血液透析をしながら長生きをしている患者さんもいます。日本透析医学会の「2015年末の慢性透析患者に関する基礎集計」によると、透析歴が40年以上の患者が617人,35~40年の患者が2098人,30~35年の患者が3917人、そして最長の透析歴は、47年です。

このように透析をしながら長生きをしている患者さんもたくさんいます。ここからは、慢性腎不全になった場合、どのような治療をすれば、どのような生活をすれば長生きできるか(死亡リスクを減らせるか)について紹介します。

 腎移植が最も生命予後が良い

慢性腎不全により腎機能が悪化すると、何らかの腎代替療法(透析など)を行わなければなりません。腎代替療法は、「血液透析、腹膜透析、腎移植」の3つがあります。

この中で最も生命予後が良い(長生きできる)治療は、腎移植です。腎移植患者の 20年後の生存率を比較すると、生体腎移植患者の生存率は、73.7%、献腎移植患者の生存率は、約62.0%(※1)、血液透析患者の生存率は15.4%です。

ただ、腎移植と血液透析でこれほど大きな差がある原因は、腎移植時の平均年齢が若いという要因もあります。 生体腎移植患者の移植時の平均年齢が45歳、献腎移植では、平均年齢が49歳です。透析導入患者の平均年齢は、69.2歳なので差があるのは当たり前です。

そこで平等に比較するために、45歳~50歳の透析患者の平均余命を調べました。その結果、45歳~50歳の透析患者の平均余命は15~17年であり、平均余命は20年以下。おおよその20年生存率は、50%以下であるということが分かりました。

<20年生存率(同年代で比較)>

  • 生体腎移植 73.7%
  • 献腎移植 62.0%
  • 血液透析 50%以下

この結果より、やはり血液透析より腎移植のほうが優れていることが分かります。

ただ、移植はしたいからといって簡単にはできません。腎臓の提供者(ドナー)が必要です。生体腎移植では、6親等以内の血族もしくは、配偶者と3親等以内の婚族と法律で定められています。

実際のところは、親や夫婦での提供が多いようです。提供者がない場合は、献腎移植といって、死体から腎臓を提供してもらう方法があります。

これを受けるには、献腎移植希望登録を行う必要があります。(登録費用30000円、年会費5000円)献腎移植登録から移植までは、平均6530日(約17年)とかなり長期間待たなければなりませんが、比較的若い年齢で透析導入になった場合は、生涯に何度かチャンスが訪れる可能性があります。登録しておいたほうがいいと思います。

透析患者の余命を伸ばす方法

腎移植が最も長生きする方法ですが、誰しもができるわけではありません。そこで血液透析をしながらできるだけ長生きする方法についてもまとめました。

「長生きする透析療法」「長生きする生活習慣」について順番に紹介します。

余命を伸ばすための透析条件

透析効率は、KT/Vで表されます。これは、BUN、体重、透析時間などで計算して求める透析効率を表す指標です。海外の文献では、「KT/Vが高いと逆に死亡率が上がる」というデーターもありました。

ただ、それは海外の透析方法(短時間、高血流量透析)による見かけ上のKT/Vの上昇が原因だと思います。

日本の透析医学会のデーターでは、KT/Vが高いほど死亡リスクが低いことが証明されておりspKT/Vが1.8までは、有意な死亡リスク低下が認められています。

また、短時間高効率透析ではなく、透析時間を延長して透析量を増やすほうが、死亡リスク低下の可能性が高いということも示唆されています。KDOQIガイドラインでは、spKT/Vは最低でも、1.2,目標値は1.4とし、女性など小柄な患者は多めにするようにと推奨しています。

これは、体格が小さいほうが体の大きさに対する臓器の大きさの比重が大きいため不純物などの濃度が上がりやすいということらしいです。

・『透析時間』による余命の影響

透析時間が長い方が、生命予後が良いということは誰もが聞いたことがあると思います。一般的に浸透している、週3回の4時間透析では、実際の腎臓の機能の10%以下だといわれています。透析時間を上げるメリットとしては、透析量(KT/V)の上昇の他、血圧低下予防にもなります。

時間当たりの除水速度が下がることから透析中の血圧管理がしやすくなります。透析中の血圧低下は、脳血流・冠状動脈の血流不足など重篤な影響を与える恐れがあり、死亡リスク上昇の原因となります。それを予防するうえでの、透析時間延長には、複数のメリットがあります。

日本透析医学会 我が国の透析療法の現状(http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2010/p066.pdf)より改変して引用

『除水速度』による余命の影響

除水速度は、少ないほうが循環動態に与える影響が少ないので体に負担が少なくなります。だからと言って食事を十分にとらないで体重増加を減らそうとすると栄養不足による死亡リスクが増えます。

具体的には、12ml/kg/時間以上では死亡リスクが上がるという報告があります。これは、透析時間が4時間の場合、体重増加量が5%程度を超えた場合の除水速度です。

透析医学会の透析調査によると透析での体重減少率が4~5%で最も死亡リスクが少ないとされています。

体重減少率と死亡率

『血液流量』による余命の影響

血液流量を上げるのを拒む患者さんって非常に多いです。血流量を上げると「しんどい、血管が痛くなる」などと訴える患者さんがいます。

ただ、これは思い込みにりそう感じてしまう「ノシーボ効果(プラシーボ効果の逆の意味)」だと思います。こっそり血流量を上げれば絶対に気づかないはずです。

血流量と心負荷は因果関係がないことは、鈴木一裕先生の論文でも紹介されており臨床透析の雑誌にも搭載されました。(参照:血流量を上げると心負荷は増えるのか?

さらに、透析医学会の統計では、血流量が多い患者ほど死亡リスクが少ないと報告されています。

血流量と生命予後

血流量を上げることにより、透析効率が上がり、BUN・リンなど除去効果が上がることが良い影響を与えるんだと思います。特に、近年普及している前希釈オンラインHDFでは血液の希釈により小分子量物質の除去量が低下する恐れがあるので、充分な血液流量を確保することは非常に大切です。

透析方法と余命の関係

HDとHDF患者を比較したデーターでは、死亡リスクについてははっきりしたデータは見つけることができませんでした。オフラインのHDFでは、透析低血圧やアミロイドーシスの患者しか保険適応が認められておらず、単純にHDF患者のほうが状態が悪いから単純に比較できないからです。

アミロイドーシスについては、HDFでのリスクが低いことが証明されています。(参照:透析アミロイドーシスとは

余命を伸ばすための生活習慣

ここからは、透析患者さん自身が余命を伸ばす為に注意してほしいポイントをまとめました。

運動により余命が伸びる

活動量の多い患者のほうが、生命予後がいいことが証明されています。以下のグラフは、歩行が自立している透析患者202例を対象に、加速度計付き歩数計を用いて身体活動量を実測し、身体活動量と死亡リスクを比較したものです。(※2)10年後の生存率は非常に大きな差があることが分かります。

身体活動量と生命予後

 

どのような運動がいいかは、「透析運動療法―健康長寿を実現するために」などが参考になりそうです。

適性な食事

栄養指標としては、血中アルブミン値の値が簡単に確認することができます。アルブミンの値が、3.0g/dlを下回ると顕著に死亡リスクが上がっています。(参照:アルブミン値と生命予後)ちなみにアルブミン値が、CRPの値を下回ることを「死のクロス」と呼び非常に危険な状態です。h

透析間の体重増加量も死亡リスクと大きな関係があります。水分量が増えすぎると心不全・呼吸困難・不整脈など急死する恐れがあります。また、長期的にも心臓に負荷がかかり心拡大により心機能低下も重篤な合併症です。

これらを予防するには透析間の体重増加を抑えることです。具体的には、5%以内に抑えることが望ましいとされます。特に、水分を控えるために塩分を1日5g以下に抑えることが推奨されています。

透析患者の余命まとめ

透析患者さんの余命は、非透析者と比較するとおよそ半分であるという厳しい状況にあります。確かに、透析室で勤務していると毎年たくさんの方が亡くなるように感じます。ただ、透析患者さんの死因で一番多い死因である「心不全」で亡くなる方は、指導を聞かなかったり、水分制限など守れていなかった方が多くいるの感じます。

そういった方は、なんど注意しても守ってもらえません。スタッフ、Drも、おそらくこの方は、ある日突然、心不全でなくなるだろうと思って諦めてしまっている場合もあります。

どんなに厳しく指導してもそれを実行するかどうかを最終的に決めるのは患者さんなので、自分たちにも限界を感じます。

透析室で20年~30年と、長期間透析をされている患者さんもたくさんいます。そういった患者さんは、共通点があります。『自分に厳しく、水分摂取量を適正に守っている。』『元気で長生きしたいという気持ちを強く持っている』などです。

透析導入から、数年は透析患者さんは鬱状態になります。患者さんがなるべく早く、透析をすること受け入れることができて、患者さんの生きがいを見つける手助けをすることが透析室で働く看護師、臨床工学技士の大切な仕事だと思います。

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4 件のコメント

  • 主人 61歳で、昨年4月から透析しています。
    痛風から腎臓が悪くなっていったようです…高血圧です。私の毎日の悩みは、主人の間食です。
    今は、毎日 飴 甘い菓子 、時々大福、最近は諦めて注意しないようにしているのですが、時々ぐわい悪くなって嘔吐しています。この調子では、10年の生存率も減っていきますね! 毎日こんな事考えているとストレスにもなります… チョット聞いていただきたい悩みでした。申し訳ありません。

    • 旦那様の体調が心配な気持ちはよくわかります。多少の間食自体は、特に問題ないともいますが、甘いものを食べているとのどが渇くと思います。透析間の体重増加量はどうでしょうか?
      透析間が1日の場合は、体重の3%以内、透析間が2日の場合は、体重の5%以内が理想とされています。

      また、透析前の採血の結果はどうでしょうか?

      透析間の体重増加量および採血の結果が基準値内に守られていれば、心配ないと思います。

      ときどき嘔吐があるということですが、指示医には相談されていますか?リン吸着剤など、透析患者さんが必要とする薬の中には、消化器に副作用が出る薬があるので、相談されてみてはどうでしょうか?

      食事や飲水に関する患者指導は、我々スタッフもいつも苦労しています。守る人は、初めから熱心に勉強して守ってくれますが、守らない人は、どんなにうるさく指導しても守ってくれません。いっても守らないなら、あきらめるしかないのでしょうかね。つらいですね。

      また、なんでも質問がありましたら私にわかることでしたらなんでも返答しますのでお気軽にコメントください。

  • ありがとうございました。
    主人は無口なほうで、透析のことはほとんど話してくれません! とにかく「自分は、長いこと無い…」とか言って、食べています。
    透析は1日起きですね…
    聞いていただけて、嬉しいです…

  • 小学生から腎臓移植して今18歳の彼氏がいるのですが、あまり長くはないのですか?
    腎臓は10年近くもってますが、そろそろダメみたいです…。
    昼夜逆転で食べる量は少ないのですがコンビニや外食が多いです。

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