透析で血液流量を上げると心負荷が上がるのか!?

公開日: : 最終更新日:2015/07/10 素朴な疑問(透析)

血液透析において
『血流を増やすしても心負荷は変わらない!』
『血流を増やすと心負荷が増大する!』

いろいろな意見があります。

特に看護師の場合は、感覚的に心負荷が増大すると思いこんでいる人が多く、なぜ心負荷が増えるのか、説明を求めても理論的に説明できる人がほとんどいません。

内シャント作製による心負荷

内シャント作製により心負荷が上がるのは確かです。

透析患者は、内シャントを作製した時点で心負荷がかかっています。シャントに流れる血液は、500~1000ml/min程度ですが、これは心拍出量の10~20%に当たります。

心臓から送り出される血液の10~20%が内シャントに流れるので、そのほかの部分に流れる血液が少なくなる為、心臓は多めに血液を送り出さなければなりません。

 

血流量は心負荷に関係するのか!?

透析中の血流量については、個人的には、内シャントから脱血して内シャントに返血する場合、血液流量を上げても心負荷は、変わらないと思います。

仮に、内シャントに血流が700ml/minで流れている患者がいたとします。この患者が透析で血流量200ml/minで設定するとします。

シャント血管から200ml/minで脱血する為、脱血側から中枢側には、残りの500ml/minの血液が流れることになります。そして、返血側から中枢側の内シャントは200ml/minで返血されるので、500ml+200ml=700ml/minの血液流量になります。

穿刺

このように、穿刺部位の中間の血液流量が少なくなるだけで、内シャント自体に流入される血液流量は変わりません。したがって、血液透析での血液流量は心負荷に関係ないと思います。

血液流量を上げても心負荷は変わらないことを証明している文献を見つけました。

[著者]
援腎会すずきクリニック 鈴木 一裕
東京共済病院腎臓内科 神田 英一郎
東京医科大学腎臓内科学 菅野 義彦
『透析時血流量が心拍出量に及ぼす影響』

要約すると、血液流量200ml/min時と血液流量360~400ml/min時での、心拍出量と静脈環流量を比較した実験をしています。心拍出量と下大静脈径に有意差がなかったそうです。

透析の臨床の現場では、『心臓が悪いから血液流量を低めにしよう』『血圧が下がってきたから血流を下げよう』といった、対応をする看護師やDrがいます。

血流量が、心負荷に影響を与えないとすれば単に透析効率を下げているだけで患者の為には何もなっていません。

昔の透析では、ダイアライザの出口に圧力をかけて除水をしていたそうです。その場合では、血液流量を上げて圧力を上げることにより除水量が増えるので、血圧が下がった時に、血液流量を下げると言うのは正解かもしれません。ただ、現在の透析では、透析液側にポンプで引っ張って陰圧をかけることにより除水しているので、血流を下げることに意味がありません。

そうした、昔の人が言っていた教えをそのまま頭に残っている人が、誤った知識を他人に伝えているのかもしれません。現在では、透析血流量が多い程生命予後が良いという論文も発表されています。

血流量 生命予後
「http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2010/p066.pdfより引用」

血流を多くしている施設では、400ml/minで設定している施設もあります。私たちも今現在の患者の血液流量は適正なのか?

もう一度考えてみる必要があるかもしれません。

<2015.7.10追加>

こちらの投稿で紹介させていただいた論文の「透析時血流量が心拍出量に及ぼす影響」の筆頭演者である、援腎会すずきクリニック医院長の鈴木 一裕先生よりコメントを頂いたので紹介させていただきます。

今回の検討では、EFが 50%未満の患者についての検討でも、高血流により心負荷の増大が見られませんでした。
ただし、EFが 20%くらいの高度心機能障害の患者での検討は行っておらず、高度心機能障害患者で高血流により心負荷が無いとは言えません。
有るかもしれません。
それは、高血流により急激な毒素の除去が浸透圧に影響を与え、血圧が下がる可能性もあるからです。
また、A−V間に狭窄がある方の場合、400の脱血は出来るが、実際は200くらいしか流れていないと言う事もあり得ますので、その場合は心負荷になる可能性はあります。
ただ、これらのケースは特殊な場合ですので、一般的には高血流が心負荷を起こすことは無いと思います。
<鈴木一裕先生コメントを引用>

大変貴重なご回答ありがとうございました。

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Comment

  1. 鈴木一裕 より:

    今回の検討では、EFが 50%未満の患者についての検討でも、高血流により心負荷の増大が見られませんでした。
    ただし、EFが 20%くらいの高度心機能障害の患者での検討は行っておらず、高度心機能障害患者で高血流により心負荷が無いとは言えません。
    有るかもしれません。
    それは、高血流により急激な毒素の除去が浸透圧に影響を与え、血圧が下がる可能性もあるからです。
    また、A−V間に狭窄がある方の場合、400の脱血は出来るが、実際は200くらいしか流れていないと言う事もあり得ますので、その場合は心負荷になる可能性はあります。
    ただ、これらのケースは特殊な場合ですので、一般的には高血流が心負荷を起こすことは無いと思います。

    • taka より:

      このたびは、先生自らコメントを頂きまことにありがとうございます。大変うれしく思います。先生のブログも拝見させていただきました。実は、ブログを見て先生の講演会に参加したことがあることを思い出しました。

      話わ変わるのですが、質問させてもらってもよろしいでしょうか?
      『A−V間に狭窄がある方の場合、400の脱血は出来るが、実際は200くらいしか流れていないと言う事もあり得ますので、その場合は心負荷になる可能性はあります』

      というのは、AV間で再循環している状態のことでしょうか?
      内シャントの状態がよくない場合に、脱血ができないほど、高血流量でポンプを回すと、内シャントへの血液の流入量が増えて心負荷が増えて心負荷が増すということですか?

      • てへぺろ より:

        TAKAさんへ

        初コメです。

        T県の透析クリニックでCEをやっている「てへぺろ」と申します。

        『A−V間に狭窄がある方の場合、400の脱血は出来るが、実際は200くらいしか流れていないと言う事もあり得ますので、その場合は心負荷になる可能性はあります』

        の話ですが、再循環のことではないと思います。

        A-V間に高度の狭窄が存在する場合、シャント音は低下し拍動に近い状態になります。この場合上腕動脈の血流量はかなり低下しており、実際のシャント血流量も低下していると考えられますが、いわゆる「どん詰まり」状態ですので、良好な脱血を得られることがあります。ただ、その場合(上腕動脈血流量200に対しQb400)は心負荷が危惧される、、、ということではないでしょうか。

        説明下手でスイマセン、、、、。

        私は以前から理論的にQbは心負荷に影響を与えないと考えていましたが、心機能悪いからQb上げないというDrの意見に対して示せるデータがなかったため、反論できずにいました。今回鈴木先生がお示ししたようなデータをずっと待っていました(自分で研究しようと考えたこともありましたが、クリニックレベルでは難しく断念)

        今まで通例的に行われてきた医療行為を研究によって覆す、いい例だと思います。

        長文、失礼致しました。

        • taka より:

          へぺろさんコメントありがとうございます。

          どん詰まりとは、脱血より中枢側が狭窄している場合の事ですね。確かにその場合では、血流が採れるかもしれません。

          また、良い論文がありましたら紹介させていただきます。

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