目次
はじめに
透析では、月に2回ほど透析前後で採血します。「充分に透析できていること、適正な食事をとれていること、貧血はないか」などの確認や、合併症の早期発見など様々な目的で行います。
採血の方法はシリンジで血液を吸ってスピッツに必要量分注する方法と真空採血管ホルダーを使った採血方法があります。採血で大切なことは、針刺し事故を起こさないように安全に行うこと、そして、適正な手順で行い正確な検査値を求めることです。
採血方法によって、分注する順番が違ったりちょっとややこしいこともあります。今回は、スピッツを使った採血についての周辺知識と透析での採血方法についても紹介します。
スピッツの色について
スピッツ管はカラフルな色があります。この色によって「何の検査か」ということがJIS規格で決められています。特に透析で良く用いるスピッツ管について紹介します。
スピッツの色と内容 | |
黒 | 凝固:血液凝固についての検査 |
紫 | 血算(CBC):白血球,赤血球,血小板など |
赤 | 血清:生化学(電解質)などの測定 |
灰 | 血糖:血糖,HBA1cなど |
JISではこんな感じで決まってます。施設によっては、違う場合もあります。
スピッツに入れる順番
正しい値を測定するには、スピッツに血液を入れる順番が大切です。理由を考えて覚えると覚えやすいです。
シリンジ採血の場合
- 凝固
- 血算
- 血糖
- 生化学
シリンジで採血する場合は、凝固のスピッツを一番最初に入れます。理由は、シリンジに血液を入れたままにすると血液がどんどん固まってしまい正しい凝固時間を測定できなくなってしまうからです。
凝固系のスピッツには、抗凝固剤などが入っているので速やかに注入して混和させましょう。その他は、凝固しては困る順番に採取します。生化学は凝固してもそれほど問題ないので最後に採ります。
真空管採血の場合
- 生化学
- 凝固
- 血算
- 血糖
- その他
真空管採血では、最初に凝固を入れてはいけません。最初の血液には、穿刺したときの組織や組織液など血液以外の物質が混入します。混入すると血液の凝固が促進されるので正しい凝固時間の測定ができません。
まずは、生化学など組織液が混入しても(凝固しても)それほど影響のないものを採ります。また、長時間駆血すると、細胞内からKなどが血液中に流出する恐れもあるので、生化学を最初に採るのが望ましいです。
凝固のスピッツは、2番目に採ります。長時間駆血していると循環障害の為、乳酸上昇、凝固系の活性化が起こり凝固しやすくなります。
採血方法の基礎知識
遠心分離とは
血清(血漿)を測定するには、遠心分離が必要です。専用の機械で血液を高速回転することで成分の比重の違いで分離されます。上から、血漿⇒血小板、白血球⇒赤血球となります。
[遠心分離の手順]1.静置時間30分以上
2.1200~1700で10分以上
3.外注する場合は、冷蔵庫で保存
クレンチングは禁止
クレンチングとは、採血時にグーパーを繰り返して血液の流れを促進させることです。これをすると、筋肉などからクレアチニンやKが放出されて正しい、検査データが求められなくなります。クレンチングするとカリウム値が最大20mmol/l上昇するという報告があります。
溶血の注意
溶血とは、赤血球が壊れてしまうことです。溶血すると、採血の検査データが変化します。赤血球の中と血漿中の成分比により、採血データは以下の影響を受けます。
・上がる値
K、LD、AST、ALT、ACP、Fe
・下がる値
Na、Cl、Ca、LAP、ALP
溶血させない為には以下の注意が必要です。
・皮膚消毒後は、充分に乾かす。
・シリンジの吸引はゆっくりする。
・23Gより太い針を使用する。
・泡立たないようにゆっくり注入する。
透析後の採血での注意点
透析後の採血は、回路内から採ります。再循環の影響や溶血を起こさない為に以下の手順で行います。(なんかのガイドラインに書いていました。)
- 透析モードを停止させる。
- 血液流量を50ml/minに設定する。
- 1分ほど経過後に、A側ポートより採血する。
まとめ
普段何気なく行っている採血ですが、調べてみると非常に奥が深いと感じました。正しい値を測定するために、溶血と採血手順には注意しましょう。
(参考文献)
http://www.aichi-amt.or.jp/hyojunka/leaflet-pdf/7_230628.pdf