平成24年のオンラインHDFの保険適用により、HDF専用のヘモダイアフィルタが各社から複数販売されています。
各メーカーから、サンプル品を頂きアルブミンの漏出量や除去率を調べましたが、メーカーや、ヘモダイアフィルタの種類によってアルブミンの漏出量やTMPの変化が全く異なります。今回は、現時点で発売されている各社のヘモダイアフィルタのクリアランス、ふるい係数について、一覧でまとめました。また、個人的に使用した感想も紹介したいと思います。
とりあえず、各社で発売されているヘモダイアフィルタは、以下の種類があります。ヘモダイアフィルターの膜面積は複数ありますが、各社で比較しやすいように2.1㎡の膜(ただし、東レ社は2.1㎡の膜がないので2.0㎡)に限定して紹介します。
<各社のヘモダイアフィルタの添付文書による性能一覧>
メーカ | フィルタ | UFR | クリアランス(QB200ml/min,
QD500ml/min,QF0ml/min) |
ふるい係数(QB200ml/min,
QP30ml/min・㎡) |
血液充填量 | 膜素材 | |||||
尿素 | Cr | リン酸 | ビタミンB12 | アルブミン | イヌリン | β2ミMG | |||||
旭化成 | ABH-21P | 82 | 196 | 196 | 188 | 155 | 0.01以下 | 1.13 | 0.81 | 124 | PS |
ABH-21F | 84 | 196 | 190 | 186 | 149 | 0.02以下 | 1.07 | 0.86 | 135 | PS | |
日械装 | GDF-21 | 64 | 194 | 188 | 183 | 150 | 0.03 | 1.00 | 0.87 | 129 | PEPA |
GDF-21M | 64 | 194 | 188 | 183 | 150 | 0.01 | 1.00 | 0.88 | 129 | PEPA | |
東レ | TDF-20 | 54.7 | 196 | 189 | 187 | 155 | 0.011以下 | 1.00 | 0.9 | 130 | PS |
TDF-20H | 54.7 | 196 | 188 | 189 | 157 | 0.015以下 | 1.00 | 0.9 | 130 | PS | |
メーカ | フィルタ | UFR | クリアランス(QB250ml/min,
QD500ml/min,QF0ml/min) |
ふるい係数(QB250ml/min,
QP30ml/min・㎡) |
血液充填量 | 膜素材 | |||||
尿素 | Cr | リン酸 | ビタミンB12 | アルブミン | イヌリン | β2MG | |||||
ニプロ | MFX-21eco | 78 | 249 | 247 | 241 | 213 | 0.01 | 1.15 | 1.04 | 128 | PES |
MFX-21Sco | 82 | 249 | 248 | 245 | 220 | 0.01 | 1.24 | 1.13 | 128 | PES | |
MFX-21Uco | 83 | 250 | 248 | 244 | 222 | 0.01 | 1.09 | 0.91 | 128 | PES | |
FIX-210Seco | 81 | 248 | 245 | 243 | 217 | 0.01 | 1.06 | 0.93 | 125 | TAC |
UFR、クリアランス、ふるい係数の説明
このブログは、看護師や新人MEを対象にしているので回りくどいですが、単位の説明からしますね。
表の左から、順番にヘモダイアフィルタのメーカー名、UFR(ml/mmHg/hr)、クリアランス、ふるい係数、血液充填量、膜の素材を記載しています。
UFR(ml/mmHg/hr)、クリアランス、ふるい係数についての詳細は、別の機会に詳しく解説します。ここでは、簡単に説明します。
以下のようなイメージで覚えてください。
UFR・・・透析膜(中空糸側面)の水の通りやすさ。除水のしやすさ。
クリアランス・・・拡散により小分子物質の除去できる量
ふるい係数・・・限外濾過により中分子物質の除去できる量
やっぱり詳しく書きたくなったので、ながなが書いてしまいました。面倒な人はここは飛ばしてください。
UFRは、透析膜の水の通りやすさです。数値が大きいほど、OHDFでたくさん補液をして、限外濾過をかけても、膜が目詰まりを起こしにくいです。UFRが低いと、膜が目詰まりしやすく、膜が目詰まりするとTMPが上昇します。TMPが上昇すると、体の大切な物質であるアルブミンが除去されやすくなります。ただし、わざとTMPを高くして、中分子物質をたくさん抜くようにする場合もあります。
クリアランスは、小分子物質の除去性能です。基本的にどのメーカの膜も同程度です。ニプロ社のクリアランスが他のメーカーより、著しく高いのは、クリアランスの測定条件が異なるためです。他のメーカーは、QB200ml/minですが、ニプロではQB250ml/minとなっています。まあ、どの膜も小分子物質のクリアランスは、同程度なので説明はこの程度にしときます。
ヘモダイアフィルタの性能を比較するうえで一番重要なのがふるい係数です。ふるい係数は、除水によりその物質が水分と一緒に通過できる割合のことです。
式で表すと、アルブミンのふるい係数=除水(濾過)された液に含まれるアルブミンの濃度÷血液側のアルブミン濃度となります。
各社ヘモダイアフィルタの特徴
それでは、本題に入ります。それぞれの各社のHDFで使用されるヘモダイアフィルタの特徴と使ってみての個人的意見を書きます。ただ、自分の施設は、すべて前希釈HDFで行っているので前希釈での感想となります。
旭化成(ABH-21P、ABH-21F)
まず、表の上から説明します。旭化成は、無難なヘモダイアフィルタと言えます。自動車でいえばトヨタです。万人受けするというか、知識がない人が変な方法で使っても、やばいことにはなりそうにないです。
ABH-21Pは、アルブミンのふるい係数が0.01以下となっています。補液量を時間9L~12Lで前希釈OHDF(オンラインHDF)で使用しましたが、アルブミンの量出量は、1~2g程度と少ないです。
アルブミンの量出量を抑えたOHDFを施行するには、良いと思います。ただ、補液量を多くしすぎると、患者によっては、ぐんぐんTMPが上昇して補液量を下げなければならないことがありました。TMPをうまくコントロールすることにより、中分子物質の除去量をコントロールできる膜だと思います。
ABH‐21Fは、ABH-21Pと比較してアルブミンのふるい係数が0.02と倍になっています。使用していないので何とも言えませんが、こちらは中分子物質を積極的に抜く為のフィルタといえそうです。
日機装(GDF-21,GDF-21M)
日機装のヘモダイアフィルタもサンプルを頂いて、性能調査しました。まずは、アルブミンのふるい係数0.01のGDF-21Mから紹介します。こちらの膜は、前希釈OHDFでは、まったくアルブミンが抜けませんでした。アルブミン値が低い患者さんにOHDFを施行するにはいい膜だと思います。
GDF-21の方は、アルブミンのふるい係数が0.03となっています。市販されているヘモダイアフィルタのなかでふるい係数は最強です。前希釈OHDFで使用してみた感想は、添付文書のふるい係数通りでした。アルブミンの漏出量は、6~8gとかなり漏れ漏れでした。
TMPは、低かったのですがそれでも、ものすごく中分子の除去がされるようです。間違っても、後希釈OHDFで使用してはいけません。
日機装のヘモダイアフィルタは、両極端でぶっ飛んでいるようです。ますます、日機装が好きになりました。
東レ(TDF-20M,TDF‐20H)
東レメディカルのヘモダイアフィルタのアルブミンのふるい係数は、TDF-20Mで0.011、TDF‐20Hで0.015となっています。TDF-20Mは、アルブミンの量出を抑えた膜で、TDF‐20Hが中分子の物質の除去を目指したフィルタのようです。情報がないので情報があったら、追加で報告しますね。
ニプロ(MFX,FIXシリーズ)
今は、ニプロ社のヘモダイアフィルタが1番熱いようです。ニプロ社はヘモダイアフィルタにかなり力を入れているようで、4種類のヘモダイアフィルタが発売されています。
アルブミンのふるい係数は、すべて0.01となっています。学会や論文などを見てみると、前期尺OHDFでのアルブミン量出量及び、α1ミクログロブリンの除去率は、MFX-21Ueco>MFX-21Seco>FIX210Seco>MFX21ecoの順番になっているようです。
また、4時間の全希釈OHDFで補液量48Lにてのアルブミン漏出量は、MFX-21Uecoが5g、MFX-21Secoが2.5g、、FIX210Secoが2.0g、MFX21ecoが1g程でした。
FIX‐210Secoは、中空糸の素材がセルローストリアセテートとちょっと古い膜のように思えますが、膜の構造を非対象構造に改良することによりTMPの上昇がかなり抑えられたり、膜にアルブミンが付着するのを防げるかなりすごい膜のようです。
さらに、MFX-21Mecoというのが発売されたようです。
MFX-21Mecoは、MFX21ecoよりさらに、アルブミンの漏出量の少ない膜のようです。
まとめ
各社から、さまざまなヘモダイアフィルタが発売されています。添付文書の値は、参考程度でやはり実際に使用してデータを採らないと、どのような膜なのか分かりません。各社のヘモダイアフィルタの、実際のβ2MG、α1MGの除去率とアルブミンの漏出量をまとめたものを、また次回に紹介したいと思います。
<追加(2015/5/15)>
すずきクリニックでFIXの性能評価の学会発表のスライドが公開されていたので載せときますね。