医療事故やミス後の指導について
臨床工学技士の臨床の現場で、新人や部下がミスを起した場合は、上司が注意・指導すると思います。このときどのように指導しているでしょうか?
『集中してやれ!』『なんでこんなこともできないのか!』など、罵倒しているだけの人は、指導者として失格です。コーチングといって、本人に原因を考えさせて、改善方法を自分で導き出せるようにしなければなりません。
また、ミスした本人だけに事故やミスの原因があるとは限りません。マニュアルが整っていなかったり、環境が悪かったり、様々な要因がある可能性がある可能性があります。
ミスした本人を攻める暇があれば、次回からミスが起こらないように、ミスが起こった原因を考えて、その対策を考える必要があります。
ミスした本人以外の、要因を調べる方法に、SHEL分析という方法があります。
SHEL分析では、事故やミスなどの原因を『Software(ソフトウェア), Hardware(ハードウェア), Environment(環境), Liveware(人間、関係者の個人的要素)』の4つに対して考えます。
Software (ソフトフェア) |
マニュアル、規則 |
Hardware (ハードウェア) |
医療機器、設備、施設 |
Environment (環境) |
温度、照明など物理的環境 |
Libe ware (人) |
当事者以外の人 |
それでは、実際にSHEL分析をしてみましょう。
以下のような、事故が起こったと仮定します。それに対してSHEL分析をします。
これについて分析していきます。
・Software
まずは、ソフトフェアについてです。ソフトウェアとは、マニュアルや手順書、規則についてです。これらをきっちり守れていたのか?手順書に不備がなかったのかを考えます。
今回の回答の例としては
『毎朝廊下を掃除するはずだが掃除をしていなかった。』
『バナナの皮を廊下に捨ててはいけないという決まりがなかった。』
『バナナの皮に注意して歩くという規則を忘れていた。』
・Hardware
ハードウェアは道具や設備についてです。
回答の例としては
『眼鏡の度数があっていなかったのでバナナの皮が見えなかった。』
『バナナの皮を踏んだら滑ってしまう靴を履いていた。』
・Environment
環境については、
『照明が暗くて、バナナの皮が落ちているのが見えなかった。』
『ゴミ箱がないので、バナナの皮がポイ捨てされていた』
などなど、原因を考えます。
・Live ware
最後は、当事者以外の人々についての原因です。
今回は、バナナの皮を捨てた人が明らかに、事故の原因です。したがって、
『Bさんがバナナの皮を捨てた』
『Cさんがバナナの皮が落ちているのに掃除をしていなかった』
以上のように、それぞれについて事故が起こった原因について考えて記載します。そして、それぞれの原因についての対策を考えます。
項目 | 原因 | 対策 |
ソフトフェア | 廊下の掃除をしていなかった | マニュアルで、毎朝掃除することを決める。 |
ハードウェア | 眼鏡の度数があっていなかったので見えなかった。 | 度数のあった眼鏡を作り直す。 |
環境 | 照明が暗くて、バナナが落ちているのが見えなかった。 | 照明に明るい電球を設置する。 |
本人以外の人 | Bさんがバナナの皮を捨てた。 | バナナの皮をポイ捨てしないように教育する。 ゴミ箱を設置する。 |
上記のように、ミスや事故が発生した場合に、ミスした本人だけを責めるのでなく、周囲の環境に問題がなかったのかについても考えて対策を立てることが、事故を根本的に減らすにはとても大切なことです。